博多大吉さんのインタビューから、自分の好きなものを人にオススメする方法を考える

 

 
今年に入ってから、「自分の好きなものを知らない人に、如何にしてオススメするか」っていうことについて色々と考えているんですね。
 
というのが、私はプロレスの大ファンなんですけど、初めてプロレスを観に行く人と一緒に生観戦に行く機会があったりしまして、そこで愛好家同士のコミュニケーションじゃなくて、その輪の外にいる人たちに向けて、自分がオススメしたいもののポイントや楽しみ方をどう伝えるか? ってことについて目線がいくようになったんです。
 
そんな中で週刊プロレスを読み返していたら、ちょっと面白い記事を再発見しました。
 

<「週刊プロレスvol.1514」 ベースボールマガジン社刊>
 
2010年の3月に発行をされた1514号…この号は、テレビ朝日の人気トーク番組アメトーークで行われたプロレス特集の好評を受けて、プロレスの大ファンであるお笑い芸人さんへの取材や、ギャグ色の強い企画を全面に押し出した異色のバックナンバー。で、ここに掲載をされている博多大吉さんのインタビューが、「好きなものの人へのススメ方」を考える上で、かなり心に響いたんですよ! ちょっと引用しつつアレやコレやと書いてみたいと思います!
 
 

■「ベタなヤツばっかり」でも「わかったうえでやる」



 
このインタビューは、博多大吉さんと女子プロレスラー栗原あゆみ選手の対談という形で収録されているのですが、大吉さんのプロレス愛が熱過ぎて"対談"というよりは、ほとんど大吉さんの単独インタビューのような形に仕上がっています。
博多大吉さんは、皆さんご存知の通り吉本興業所属で博多出身のお笑いコンビ博多華丸・大吉のツッコミ担当。そんな大吉さんは、インディー団体からメジャー団体まで幅広く愛する熱狂的なプロレスファン。なかなか一般層にまでその魅力が届かないプロレス界の現状と自身のプロレスを愛する気持ちから、こんな言葉も飛び出しています。
 

大吉「ボク、たまに眠れない日があるんです。どうしたらいいのか。たとえばNOAHどうしようと思って、寝られないんです。」
 
栗原「すごいです(笑)。」
 
大吉「ネタ考えろっていうんですけどね(笑)。いい選手めっちゃいるじゃないですか。栗原さんを含めて。なんかもっとみんなうまいことやればいいのにって。」

 
プロレスのことを考えると夜も眠れなくなってしまうくらい愛して止まない大吉さん。当然、プロレスに関する知識もその愛情に比例して相当な量を持っていらっしゃるんですが、テレビの中でそのディープな知識を披露している姿はほとんど見掛けません。で、その知識量と情熱に驚いたインタビュアーに対して、大吉さんはこんな言葉を返しています。
 

‐でも、まさか大吉さんがこんなにプロレス好きだとは…。番組だとそこまで分からないので。
 
大吉「葛藤はありますよ、こっちとしても。一般の人にどれだけ伝えられるかなので。ドラフト会議以外にもプロレス芸人とかやらせてもらってますけど、こっちに言わせればベタなヤツばっかり。猪木さんのマイクであったり、橋本真也さんのあのシーンであったり。もうわかってますという声もあると思います。」

 
確かに、テレビのプロレス特集で流れる名・珍場面というのは、ファンにとっては見慣れた定番のシーン、お決まりのシーンばかりです。
 

 
ただ、大吉さん達"芸人"が相手をしているのは、テレビを前にしているプロレスを知らない、プロレスファンじゃない大多数の視聴者。ですから、大吉さんはこう続けます。
 

大吉「そういうのから提示しないと一般の方がついてこられないっていうのを、週プロの読者の方とかにはわかってほしいですけどね。読者の方は「アイツらぬるいな」とか「オレのほうがもっと知ってる」とかあると思うんですけど、十分わかった上でやってるんで」

 
好きなものへ愛が深まれば深まるほど、強ければ強まるほど、その知識や相手に話したいことはディープになっていきます。でも、それだと相手に伝わらないんですよね。その魅力なり、楽しむポイントなりが。だから、ベーシックな情報だとか、基礎知識、分かりやすく楽しめる部分を一番最初に伝えなければならない。それは決して、「ぬるい」わけではなくて、好きだからこそ大事にしなきゃいけない一番大切なポイント。
 
コレって予備知識がない人に向けて対象をオススメする時に、一番重要なことだと思うんですけど、熱心なファンほど忘れがちだと思うんです。自分も、「好き!」っていう気持ちの部分だけで突っ走ってしまって、相手を置いてけぼりにしちゃう時がままある。
相手に対して、「自分はこれだけ知っている!」「こんなディープな見方があるんだよ!」こういう風に言いたくなることあると思います。でも、そこはグッと飲み込んで、先ず一番最初にライトなポイントを明確に相手に伝えて、対象に対してのハードルを下げるのが大事ってことですよね。入り口を入りやすくして、相手に取っ掛かりを作ってあげる。ガイドを作る。
 
 

■「元気玉を作るしかない」


 
そして、相手に「自分の好きなもの」を伝える為に、もう一つ大事なのが、やっぱりハートの部分なんじゃないかな、と。大吉さんは、今回のインタビューの締めにこんな言葉を残されています。
 

‐では、最後に本誌読者にメッセージをお願いします。
 
大吉「原点に戻るということですね。1・4ドームもこの前行かせてもらったんですけど、斜に構えているんですよね、全員が。いつからオマエらはそんなに偉そうになったんだと。ボクも含め、もっと純粋に楽しんだ方がいいんじゃないかと思います。自分が見なくなったら終わりなんだぐらいの気持ちでプロレスを応援して欲しいですね(笑)。ボクたちが最後の砦だぞっていう。ファンの力を集結するしか、元気玉を作るしかないと思っているんで。」

 
これも先ほどピックアップをさせてもらった部分と同じく、本当に基本的なポイントなんですけど、やっぱり凄く大事で、そして忘れがちになっている部分。
自分が好きなものを相手にオススメをして興味を持ってもらうには、やっぱり自分が対象を愛する気持ちを持っていなければならない。恥ずかしがって、斜に構えることなんてないんですよね。「好き!」なら、自分の気持ちになって「好き!」と伝えればいい。
 
だから、2つ必要だと思うんですよ。相手に対して対象を分かり易くレクチャーする方法を考えたり、チョイスしたりする冷静な部分と、何よりも対象を愛して止まない熱い部分。この2つがあれば、自分の好きなものを相手にオススメする際に、ちょっとでもいいガイドができるようになるんじゃないかと思うんですよね。
 
 

■まとめ

今回、雑誌のバックナンバーを漁っていて、偶然発見をした博多大吉さんのインタビュー。"ファン"がそうでない人に向かい合う時の基本中の基本ともいうべき心構えが書いてあって、私なんか読んでいて目から鱗でした。今後は、ここで書いたようなことを念頭に置いて、自分の好きなものを相手にオススメできればな〜なんて思います。