「さんかれあ」の元ネタ「サンゲリア」について語ってみたいオブ・ザ・デッド

 

<はっとりみつるさんかれあ」第一巻 (講談社) P.134>
 
アニメ版の放送も始まった、はっとりみつる先生の"Rom Zom Com"(ロマンス、ゾンビ、コメディ)な漫画さんかれあ
この作品、登場するキャラクターの名前に有名なゾンビ映画のタイトルやキーワードが散りばめられているんですけど、それらをまとめたテキストってアリそうでないな〜と思ったんで、今回のエントリでは「さんかれあ」と「ゾンビ映画」についてアレやコレやと書いてみたいと思いますオブ・ザ・デッド。
 
 

■「さんかれあ」と「サンゲリア



 
単行本第一巻のインターバルで、作者のはっとり先生ご自身が「『さんかれあ』という題名は、実在するゾンビ映画をもじってます。それは『サンゲリア』〜」と綴られているように、タイトル及びヒロインであるゾンビっ娘の名前「散華礼弥」はイタリアのゾンビホラー映画サンゲリアから取られているようです。
 
フロム・イタリアーのゾンビーノなこの映画。ショッキングかつ不条理なホラー描写と残虐なスプラッターシーンの連続で、とてつもないインパクトを観る者に与える作品です。特に、腐臭がブシューッと匂い立つかのようなグロテスクなゾンビの造形は秀逸!
 

 
えらいグロテスクなコンビーフみたいなネクロマンティックなゾンビーズ。こんなんが、30年以上の時と日伊の国境を経て、ラブコメ漫画の元ネタになったりするんだからおもしろいものです。
 

この映画を撮ったのは、ルシオ・フルチというイタリア人監督。「さんかれあ」の主人公、降谷千紘も名前のイニシャルを繋げれば「フルチ」。ゾンビになってしまった少女とゾンビを愛する少年。「さんかれあ」の主人公二人組、ゾンビで運命共同体となるゾンビのコンビのルーツにあるのはマカロニ・ホラーだった。
 
ちょっとおもしろいのが、この「サンゲリア」という映画は、アメリカでゾンビ映画の代表的な作品として知られるホラー映画の金字塔、ジョージ・A・ロメロDAWN OF THE DEADのヒットを受けて作られたフォロワー的な作品…悪く言ってしまえば、パクリ映画、二番煎じの作品だというところです。
 
 

■「サンゲリア」のトリビアをアレやコレやと!

イタリア及び、米国以外の諸外国で公開された際に、「ZOMBIE」と改題された「DAWN OF THE DEAD」は大ヒットを記録。それを受けて、ルシオ・フルチというクリエイターは「ZOMBIE2」というタイトルを勝手に付け、更にオリジナルの「ZOMBIE」に足りなかったエロ要素なんかまで注入しちゃって映画を一本撮っちゃった。コレが日本に入ってきた際にネーミングされた邦題が「サンゲリア」。「さんかれあ」のイメージとは180度趣を異にしていますが、このように色々と業が深い映画なんですよ、「サンゲリア」って…。
 
話はちょっと横道に逸れますが、この商魂逞しいというか、オマージュ精神に溢れるというか…なルシオ・フルチの「サンゲリア」。そのスピリッツが最も色濃く出ているのが、このシーンだと思いますね。
 

 
海中でのゾンビと鮫の格闘シーン!
 
フルチ映画のゾンビは、人だけじゃなく鮫も襲う! しかも、この時のゾンビ、微妙に動きがいいです。シャープに絡み付き、シャークに噛み付く。とても、死人とは思えない!!
 

 
何で、こんな不条理過ぎるシーン撮ったの!? と思われるかもしれませんが、理由は簡単。この映画の公開前にスピルバーグの「ジョーズ」(と「ジョーズ2」)が世界的にヒットしていたからです。鮫が出てくりゃ観客が喜ぶだろというサービス精神(?)によって生まれた、この不思議なシークエンス。ゾンビも鮫も相手に噛み付きまくる。
 

 
結果、鮫はその身体にゾンビの歯型を刻み込まれ、ゾンビは鮫に片腕を持っていかれて、試合終了のゴングがカンカン鳴る。こりゃ、スピルバーグが観たらカンカンになる。ここまで痛々しい"痛み分け"もそうそうないでしょうね。
 
とはいえ、フルチの凄いところは、こうしたイージーな映画製作のアイデアを作品内に持ち込みつつも、それ以上の迫力と凄味、革新性でもってオリジナリティー溢れるホラー、スプラッターシーンをクリエイトし続けたところです。顔面を酸で溶かしたりだとか、内臓を口から吐かせたりとか、何千、何万匹という蛆虫を降らせたりだとか…顔面を溶かす硫酸、そんな映画を量産。この「サンゲリア」に続いて日本で劇場公開された地獄の門」「ビヨンド」といった作品は、マカロニホラーの傑作として、今もなおホラー映画ファンのリスペクトを受け続けています。
 
最後に、もう一つ「サンゲリア」関連のトリビアなんですが、この映画の中でヒロインを演じているティサ・ファローという女優さんは、アメリカの大女優であるミア・ファローの妹さんです。巨匠、ロマン・ポランスキーが製作した文芸ホラー映画ローズマリーの赤ちゃんで主人公を好演し名声を得たミア・ファロー
対して、妹のティサ・ファローはグロいホラー映画に出て、その後も余りパッとしない女優人生を送るわけで…同じくホラー映画に出ておきながら、しかも、姉妹でこの差!
 
だから、やっぱり…業が深い映画なんですよ「サンゲリア」って。
 
 

■まとめ

本当は、「さんかれあ」の元ネタになっているゾンビ映画をアレやコレやと紹介をしてみたかったのですが、「サンゲリア」の時点で語りたいことが多すぎました…。
なのに、ここらで今回は一先ず一区切り! 他の作品については、次回触れてみたいと思います! 「サンゲリア」は偉大!!
 


 
 
 
<関連エントリ>
■「さんかれあ」と「これゾン」二期も始まることだし、ゾンビ映画について簡単にまとめておきたいオブ・ザ・デッド
 
<関連URL>
■さんかれあ1話について語る(半熟ゆでたまご様)
■さんかれあ 2話「散華礼弥の父がキチってた。蘭子のお風呂シーンも必見」(失われた何か様)