インディーズブームを通過して聴く「ラブライブ!」挿入歌「ススメ→トゥモロウ」

 

 
テレビアニメラブライブ!を観ての感想でアレやコレやとエントリを更新!
 
かなり音楽寄りの視点から観た「ラブライブ!」第一話挿入歌のススメ→トゥモロウについてです。
 
 

■"スカコア"感溢れる「ススメ→トゥモロウ

第一話のオープニングとエンディングにレイアウトをされてた挿入歌「ススメ→トゥモロウ」。劇中でも、物語のスタート地点とハイライトで使用をするという、ある種のスペシャル感に満ちた扱いというか、印象的な使われ方をしていました。
 
<「ラブライブ!」挿入歌 / ススメ→トゥモロウ>

 
女性ヴォーカルのシットリした歌い出しから一転、ホーン・セクションのパワフルかつ軽快な音で幕を開ける「ススメ→トゥモロウ」は、音楽のジャンルでいうとスカコアメロコアからの強い影響を受けた曲であると言えるでしょう。スカコアメロコア調のアイドルソング、ポップソングですよね。私が、一聴した瞬間の印象は「あ、POTSHOTだ!」でした。
 


 
90年台後半のインディーズブーム、パンクブームを牽引したスカコアバンド、POTSHOT。彼らのシングル曲「To That Light」なんて、ホーンの使い方とか構成が「ススメ→トゥモロウ」によく似ていますよね。恐らく、あの曲の元祖というかルーツは、この辺りの音になるのかな、と。
 
そして、私が、「ススメ→トゥモロウ」という曲を聴いて驚いたのは、アイドルもののアニメソングで、こうしたスカコアメロコアの影響を受けた曲が極々自然に登場をしたことだったりします。
 
また、これ以前にも、例えば堀江由衣さんがスカコアのバンドと共演をした名曲「スクランブル」や、神前暁さんによる「WORKING!!」主題歌「SOMEONE ELSE」といったアニメ、声優さんによるスカコア調のナンバーが存在をしていましたし、「ラブライブ!」と同じくアイドル歌謡だとモーニング娘。の「まじですかスカ!」という優れたポップナンバーも誕生をしています。
 
<モーニング娘。 / まじですかスカ!>

 
こうした楽曲を聴いて強く思うのが、日本のポップ・ミュージック・シーンにこうしたスカコアメロコアのメロディーやリズム、手法が完全に定着をしたのだなぁ、という感慨です。
 
 

■音楽のあり方を大きく変えたインディーズ・ブーム

前述のPOTOSHOTのようなスカコアメロコアバンドによって、日本のインディーズ・シーンで大ブームが起こったのが、90年台後半〜2000年台の初頭。最初は、イギリスのSNUFFLEATHERFACEといった哀愁のあるメロディーに激しいサウンドを融合させたバンドや、NOFXBad Religionのようなアメリカ西海岸のメロディアスなパンクバンド群、或いは、FISHBONEOperation Ivy(日本でも大ヒットをしたRANCIDの前身バンド)のような多種多様な音楽性を組み合わせたミクスチャー感覚溢れるバンド…達に影響をされた日本の若手バンドが活動を開始。それらが、徐々に人気と知名度を得、やがて、爆発的なインディーズ・ブームを巻き起こすことになります。
 
カジュアルな服装に、英語の歌詞、そして、激しくもメロディアスでポップな親しみやすいメロディー…それまでの、"パンク""ハードコア"のスタイルとは全く異なるバンド達(その前にも、こうした新しいパンクのスタイルを体現していたNukey PikesやBEYONDSのような東京のアンダーグラウンドシーンのバンド、先駆者的な存在もいたのはいたのですが)による活動は、確実に日本の音楽のあり方を変えたと思います。
 
AGAINST 90年代パンク/ミクスチャー共闘篇 ([テキスト])

AGAINST 90年代パンク/ミクスチャー共闘篇 ([テキスト])

 
近年では、当時のシーンを振り返ったこのようなムックも発売をされています。当時のインディーズ・ブームの当事者達によるインタビューを集めた一種の回顧本。これは、物凄くおもしろかったので、興味がある方には是非とも読んでいただきたいと思います。
 
あのブームの熱狂から早くも10年以上が経過をしようとしています。今、振り返ってみればあの巨大なムーブメントは一体何だったのか? という気持ちもありますし、パンク、ロックの精神性やライフスタイル、ファッションを変化させた当時のブームについては賛否両論あると思います。
 
しかしながら、当時のバンド群のユニークで新しい音楽性がこの国の音楽をより豊かなものにしてくれたこと。これは紛れも無い事実だと思います。ポップ・ミュージックやアニメソング。こうした音楽の表現の幅を広げてくれたのは、確実に、あのインディーズ・ブームだったのではないかな、と。
 
そんなことを「アイドル」ものの「アニソング」の挿入歌で、凄くナチュラルにスカコアの影響を受けたメロディーとビートが流れてくる…そんな"今"の音楽を聴きながら強く感じるのです。
 
TRIBUTE TO POTSHOT

TRIBUTE TO POTSHOT

 
ちなみに、余談ですが…。
 
今年に入って、こんなん出たんですって。POTSHOTのトリビュートアルバム。今や、POTSHOTが若手のバンドにトリビュートされる時代になっている訳ですよ。…マジかよ…。そりゃ、自分も年を食うはずだわ…(溜息)。