音楽的にも新しくなったプリキュア - 「ドキドキ!プリキュア」を彩る音楽について
プリキュアシリーズの最新作「ドキドキ!プリキュア」。個人的に従来のシリーズと大きく変わったと感じたポイントが、その音楽でした。
今回のエントリでは、「ドキドキ!プリキュア」の音楽についてアレやコレやと!
■高取ヒデアキさんと高梨康治さん、そしてプリキュア
「ドキドキ!プリキュア」を観て、最も驚いたのがOPとEDの作曲者のクレジットに高取ヒデアキさんのお名前が見当たらなかったこと。そして、BGMが高梨康治さんから高木洋さんへのバトンタッチがあったこと…でした。高取ヒデアキさんと高梨康治さん。「フレッシュプリキュア!」からプリキュアに入った人間としては、このお二方のお名前は常にクレジットをされていて当たり前。プリキュアの音楽といえば、このお二方。そんな存在であったので、高取さんと高梨さんが参加をしていないプリキュアというのは、その後のシリーズを観るきっかけを作ってくれた「フレッシュプリキュア!」への思い入れも込みで、個人的にはやや寂しさを感じる…というのが現時点での正直な感想ではあります。
高取さんの明るくてパワフルなサウンドで彩られるプリキュアシリーズのOPやED、そして、総合格闘技イベント「PRIDE」のテーマ曲の作曲者としても知られる高梨さんのダイナミックな劇伴は、「フレッシュ」以降のシリーズには欠かせないものになっていたように思うのです。
<高梨康治 / PRIDE Main Theme>
高梨さんのあのド迫力の低音にメタリックかつ勇壮なメロディーを乗せたBGMは、「フレッシュ」以降のシリーズの一つの顔と言えるでしょう。メインのファン層である女の子が大好きなオシャレアイテムを使って変身し、フリフリの服を着たキュートな…でも、世界の平和を脅かす悪者との戦いでは飛び切り肉体派の戦いを見せる…そんな"可愛くて、でも強い"プリキュアというヒロインに、高梨さんの劇伴は物凄くマッチをしていたし、一つの世界観を創りだしていた。
そして、そんな高梨サウンドに対して、OPやEDで思いっきりポップなメロディーを書いていたのが、高取ヒデアキさん。ホーンセクションを多用したゴージャスなサウンドでデコレーションをされるのは、明るくて華やかな"女の娘"としてのプリキュアの姿。これまた、「フレッシュ」から取り入れられたCGキャラクターによる"ダンス"という要素も含めて…高取さんが作り出す音楽も、やはり「プリキュア」のイメージを形作ったと思うのです。
さて、そんな高取さんと高梨さんのいない新しいプリキュア、「ドキドキ!プリキュア」。いみじくも、音楽面で高取さんと高梨さんがプリキュアを全面的にバックアップし始めた「フレッシュプリキュア!」がキャラクターデザインをそれまでのシリーズから一新し、新しい流れを作ったように、本作もまた新しいプリキュア、新機軸のプリキュアを作ろうとしているように感じられます。
■「ドキドキ!プリキュア」の新しい音楽
先ずは、BGM。これまでの高梨サウンドに比べると、高木洋さんが作り出す劇伴は鍵盤とストリングスを中心にしたオーケストレーションによるサウンドで、非常に落ち着いた、シックな印象を受けます。第一話での戦闘シーンで流れたBGMも、高梨さんによるヘビーなサウンドと較べると、ぐっと落ち着いていて軽やかな印象が。これまでのヘビー…でありながらも、時にエモーショナルなメロディーも織り込んでくる、まさに硬軟織り交ぜた…な高梨サウンドとはハッキリと質感を異にしており、これは新しいプリキュアを感じさせる音だな、と。また、OPとEDに関していえば、やはり注目すべきはED曲の「この空の向こう」ということになるでしょう。Perfumeの振り付けを担当したMIKIKOさんによるダンスとピコピコしたテクノポップサウンドが話題になっていますが、ここは作曲者のクレジットにもチェックを入れておきたいところ。「この空の向こう」の作曲者であるDr.Usuiさんはテクノポップバンド、MOTOCOMPOの元メンバー。
MOTOCOMPOは、90年代終盤のインディーズシーンで巻き起こったニューウェーヴ・ミュージック、テクノポップ・サウンドのリバイバル・ムーヴメント、"ニューウェーブ・オブ・ニューウェーブ "(この言葉、最早完全なる死語ですね…)をPOLYSICSらと共に牽引したバンドで、つまりは、Perfumeのブレイク以前からテクノポップ・ミュージックをクリエイトし続けていたミュージシャン、生粋のテクノポップの作り手によって「この空の向こう」は作られているということになります。
そして、Dr.UsuiさんによるテクノポップなプリキュアEDというのも…やはり、高木さんのBGMと同じく、プリキュアファン…それこそ、女の子から所謂"大きなお友達"まで…に、新鮮な響きを与えてくれているように思うです。これらの音を聴くに、あぁ、「ドキドキ!プリキュア」は、やっぱり音楽的にも"新しいプリキュア"なのだな、と強く感じさせられるんですね。
■高取さん、高梨さん…本当にありがとうございました!
OPやED、そしてBGMといった音楽面でも、これまでのシリーズとは異なる大きな変化を見せた「ドキドキ!プリキュア」。音楽面でも、非常に語り甲斐のある、そして、"これから"のネクストフェーズに大きく期待を持たせてくれるプリキュアだな、と思います。そして、高取ヒデアキさんと高梨康治さん…このお二方が作り上げられたプリキュアの音楽的な世界観には、何度も興奮をさせられたし、泣かされました。今まで、本当にありがとうございました! とイチプリキュアファンとしては、感謝の言葉を書き記しておきたいところ。
もしかしたら、これから「ドキドキ!プリキュア」でも、キャラソン等でこのお二人のお名前を見掛けることになるかもしれませんが、高取さんと高梨さんのプリキュアシリーズへの貢献というのは、物凄く大きかったと思うんです。はい。やっぱり、このお二人がいないプリキュアに、センチメンタルな感傷を感じてしまったりもするんですが…それでも、音楽的に一つの転換期を迎えた新しいプリキュアを、これからも応援していきたいな、なんて思うんですね。
繰り返しになってしまいますが、高取さん、高梨さん…本当にありがとうございました!