「波打際のむろみさん」主題歌「七つの海よりキミの海」を読み解く

 

 
いよいよ、放送が始まりましたね! テレビアニメ波打際のむろみさん!!
 
本作は個人的に物凄く思い入れがある作品でして、テレビ放映の前から一人で盛り上がっていたんですが、そんな膨らみまくった期待にもシッカリと応えてくれるおもしろさ!
このアニメについて色々と語りたいことはあるんですが、今回のエントリでは一先ず主題歌の「七つの海よりキミの海」についてアレやコレやと書いてみたいと思います!
 
 

■超強烈なアニメソング「七つの海よりキミの海」


 
アニメに先駆けて、イベントなどで公開をされていた「七つの海よりキミの海」。「波打際のむろみさん」の主題歌であり、「むろみさん」に声優として参加もされている上坂すみれさんのデビュー曲でもあるこの曲ですが、販売フォーマットのインフォメーション等は早くから公開をされていたものの、どういうわけだか作曲者と作詞者のクレジットはなかなか表に出てきませんでした。
 
上坂すみれさんが大ファンであるという戸川純さんを意識したであろう打ち込みのメロディーに、スカっぽい裏打ちのツービート、そして一転してサビ前のBメロではデスメタルのようなヘヴィーなギターリフが轟き…というポップでキュートでありながらも、どこか"毒"のようなものを感じさせるアヴァン・ポップなこのナンバー。
 
"アイドル声優"さんのデビュー曲だと高を括っていては怪我をする。初聴した時のインパクトたるや、例えるならばDEVOXTC…それこそ戸川純率いるヤプーズのような、ポップながらもアヴァンギャルドに捻くれたテクノポップバンドによる名曲の数々を聴いた時の衝撃に匹敵しました。カラフルでありながらも鋭い感性を併せ持ったアニメソング。その歌詞の如く、大変だ、大変だ、もう一回言うぞ、大変だ! と言いたくなるほどの超個性派な楽曲ですよね。
 
どなたがクリエイトをされた楽曲なのか、ずっと気になって仕方がなかったのですが、作曲に神前暁さん、作詞に畑亜貴さんのお名前をOPで確認し、激しく納得。このお二方といえば、「もってけ!セーラーふく」や「涼宮ハルヒの憂鬱」挿入歌の「恋のミクル伝説」などを手掛けた黄金タッグですからね、そりゃ、斬新かつインパクト大な楽曲ができあがるというものです。
 
 

■楽曲に溢れる神前さん"らしさ"

畑亜貴さんのペンによるリリックもそうなんですが、クリエイターさんの名前を知ったところで、"グッ"と曲の輪郭とサウンドの特徴もハッキリとしてきます。作曲者が神前さん…というのを意識して聴いてみると、この「七つの海よりキミの海」も神前イズム溢れる楽曲だな、などとウンウンと首肯をしたくなる。
 
アニメやゲームの世界で、様々な楽曲をクリエイトをされている神前さんですが、その音楽性の特徴の一つになっているのが金管楽器の存在。神前さんは、元はといえばトランペッター。この「七つの海よりキミの海」でも、ラッパ吹きらしいトランペットのファンファーレが楽曲を上手くデコレートしている。その高揚感を更に盛り上げるスカパンク的なビートに関しても、「WORKING!!」OP曲の「SOMEONE ELSE」やアイドルマスターの楽曲群…といったアニメ、ゲーム音楽の世界にアジャストをさせた優れたスカコアナンバーを作り上げてきた神前さんらしい楽曲構成だな、と思うんです。
 
 

■楽曲に溢れる上坂すみれさん"らしさ"


 
勿論、そんな神前サウンドに合わせて、歌い手である上坂すみれさんの個性も本作からは強く感じられます。ソ連ゴスロリ…といった強烈なトピックの数々が先ずは目を引く上坂さんですが、ファンならばその豊かな音楽的語彙の数々にも注目をしておきたいところ。
で、「七つの海よりキミの海」が創られる時に、そういった上坂さんのキャラクターというのもメロディーにも大きく寄与をしていたのだと思うんです。
 
先日、「むろみさん」の舞台である福岡市で行われたイベントで、司会者であるキングレコードのスタッフさんが仰られていたのですが、この曲は上坂さんが愛して止まないバンド、ミュージシャンのエッセンスを盛り込んだ楽曲だそうなんです。その時に、司会者さんの口から出ていた具体的なバンド名が戸川純ゲルニカ筋肉少女帯
テクノポップ感溢れる打ち込みの音とアヴァンな構成はゲルニカ。メタリックなギターのルーツは、橘高文彦さんがバンド内での存在感を増し、急激にメタル濃度が上昇し始めた頃の…「月光蟲」をリリースした辺りの筋少といったところでしょうか?
 
イベントの動画なんかで、あの曲のフルレングスを聴いた方ならご存知でしょうが、後半では上坂さんの愛するソ連民謡のメロディーも顔を出してくる。要は、上坂さんの大好きなもの全部入りなんですよね、あの曲って。作り手さんの音楽的センスと上坂さんのキャラクター、そして自身が愛するものに対する情熱が奇跡的なバランスでミクスチャーをされた楽曲「七つの海よりキミの海」。今月末のCDリリースが今から楽しみな曲です。
 
 
 
<関連エントリ>
■「もってけ!セーラーふく」は、最高のミクスチャーロックだった
 
<関連URL>
■上坂すみれ、“乙女*ムジカ”初ゲストに大槻ケンヂが登場(BARKS)