音楽的にとっても"リア充"なアニメ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」
7月に放送を開始したアニメ作品の中でも、音楽好きとして一番気になった作品が「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」。
非モテな女の娘…"喪女"の日常を描いたコメディー作品である本作だけれど、その音楽は非常に豪華かつユニークなものに仕上がっている。そんなわけで、今回のエントリでは「わたモテ」を彩る音楽についてのアレやコレやを!
■「わたモテ」のBGMを手掛けるは…Sadesper Record!
「わたモテ」のBGMを手掛けているのは、COALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKIさんと元Melt-BananaのWATCHMAN氏によるテクノ・ユニット、Sadesper Record。■今期の新作アニメで、最も注目すべき作品は「はなまる幼稚園」! BGM的な意味で!!
このユニット…特に、NARASAKIさんについては、以前に拙BLOGでもエントリを書かせていただいたことがあるのだけれど、NARASAKIさんは、シューゲイザー、エレクトロニカからハードコア・パンク、デスメタルまで幅広い音楽性を持ったミュージシャンであり、その活躍は多岐に渡る。アニメ関係の仕事で言えば、「わたモテ」と同じくSadesper Record名義で音楽を手掛けた「はなまる幼稚園」でも多様な音楽ジャンルを融合させ、"アニメ音楽"として再構成をしてみせたNARASAKIさん。その音楽的手腕は、「わたモテ」でも存分に発揮されることだろう。エピソードが進むに連れて、次々に画面に登場するであるスコアやサントラのリリースが今から楽しみである。
そんなNARASAKIさんがクリエイトするアニメ音楽のおもしろさを早くも感じさせてくれたのが、「わたモテ」第一話のアバン。ここで流れたアンビエントなエレクトロニカ…主人公の少女の内面と"喪女"というネットスラングの特異性に比例して大いに"揺らぎ"を見せる音…の存在は、劇伴としての導入部であると同時に、"Sadesper Record"という音楽ユニットがクリエイトする音楽のユニークさをアニメファンに伝える素晴らしいプレゼンテーションにもなっていたように思う。
2011年には、ライヴ活動を再開させ、同年に放映をされたテレビアニメ「輪るピングドラム」のED曲「DEAR FUTURE」で、久々の新作音源をリリースしたCOALTAR OF THE DEEPERS。以降もマイペースに続いているディーパーズの活動と並行をして、アニメ関連の仕事を中心に旺盛な創作意欲を見せるNARASAKIさんの音楽活動は、まさに"リア充"の時期にあると言えるだろう。ライヴハウスとアニメーション。その豊穣な音楽性と同じく、NARASAKIさんのフィールドはどこまでもフリーダムなのだ。
■そして、オープニング曲は…キバオブアキバ!
また、本作における音楽面でのユニークさと言えば、OP曲である「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」にも注目をしておきたい。この曲を作曲し、鈴木このみさんのバックで演奏を行なっているのは京都の"オタイリッシュデスポップバンド"キバオブアキバ。打ち込みやキーボードのポップなメロディーでデコレーションを施したメタルコア、スクリーモ調の曲に、アキバ系の歌詞を乗せてシャウトする…という独特のサウンドスタイルでラウドミュージックシーンで異彩を放っているバンドだ。<キバオブアキバ / Animation With You>
音楽の概要だけを書いてしまえば、"イロモノ"と捉えられがちなキバオブアキバではあるけれど、アンダーグラウンドなライヴハウスを中心に活動を行い、海外のメタル系のバンドの来日公演でサポートアクトをこなすなど、ラウド系のバンドとしてはかなりの"本格派"でもある。
ラウドロック系の情報サイト、フリーマガジンである「激ロック」にピックアップをされ、メタル、パンクファンの間ではそのビザールなバンド名が強いインパクトを放っていたキバオブアキバ。オタク的な事象をロック・ミュージックで表現をしているものの、私の知る限り、近年のアニメ界隈でも取り上げられることの多いニコニコ動画での音楽シーンとは異なるスタンスで…ライヴハウス、インディーズシーンで活動を行なってきたバンドであり、「わたモテ」での起用には非常に驚きを感じた。「わたモテ」…侮る無かれである。
また、キバオブアキバのようなバンドの音がアニメで使われるようになったというトピックもおもしろい。あらゆる音楽ジャンルを包括し、日々、進化をしているアニメ音楽ではあるけれど、メタルコアやスクリーモのメロディーとビートが、アニソン歌手とコラボレーションをして、深夜アニメで流れる時代になったのだ。COALTAR OF THE DEEPERSのファンだった高校時代、まさかその中心人物がアニメにこんなに深く関わることになるなんて夢にも思わなかったのだけれども、キバオブアキバのラウドミュージックが深夜アニメで流れるというニュースには、それと同様のサプライズとチャーミングさがある。これも一つの巡り合わせ。音楽のおもしろさの一つの体現と言えるだろう。
■まとめ
COALTAR OF THE DEEPERS、WATCHMAN、キバオブアキバ…"非リア充"のどうしょうもない日々を描いた「わたモテ」ではあるけれど、劇中の閉塞感とは正反対にその音楽的な要素は非常に多彩で豊かだ。音楽面でも非常に要注目な作品。<「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」公式トレイラー>
ちなみに、「わたモテ」のED曲、「どう考えても私は悪くない」で編曲を行なっているのは、クラムボンのミト氏。この辺りの人選も、音楽好きには堪らない名前が並ぶ。「わたモテ」の圧倒的なまでの音楽の"リア充"具合。侮れません。