手をとりあって - 「いなり、こんこん、恋いろは。」の手の描き方について

 

 
現在放映中のアニメいなり、こんこん、恋いろは。。全10話というボリューム故に、もっと沢山のエピソードを観てみたい、もっとゆっくりと物語を味わいたい…という贅沢な欲望を抑えることは出来ませんが、本作のハイテンポながらも丁寧な作劇は非常に好み。そんな中でも、劇中でちょっと気になった演出術があったので今回のエントリでは、その辺りについてちょっとだけアレやコレやと書いてみたいと思います。
 
 

■「いなり、こんこん、恋いろは。」の印象的な手の描き方

いなり、こんこん、恋いろは。」を観ていて目を惹くのが、手による芝居の多さ。手を使って感情表現やキャラクター同士の関係性を描く場面が多い様に思うのです。
 

 
中でも、特徴的なのが手の触れ合いで登場人物の親密さを描く描写。上記の画像は、第4話のお祭り回で、待ち合わせをしていた、いなりと墨染さんが落ち合うシーンですが、この如何にも中学生女子っぽい手の接し方なんかは、キャラクター性と二人の関係性を描く上で非常に効果的だったように思います。
 


 
他にも、うか様がいなりの留守中に、いなりの兄である燈日とその距離を縮める場面でも手の描写が非常に印象深く使われていました。手を繋ぐことで、うか様と燈日の心の距離を近付けさせると共に、燈日の身体の成長も表現。更には、回想シーンでも二人の手を繋がせて、今と過去を"繋ぐ"。本作での手を使った心理描写、或いは物語性の描き方は、本当に緻密で丁寧だな、と思います。
 

 
思えば、アニメの導入部でもあるオープニング映像で、いなりとうか様が触れ合うシーンでも真っ先に両者の手がコンタクトをする。人間と神様。この世と神界。その両者を繋ぐきっかけとして、物語の始まりでも象徴的に描かれる手。「いなり、こんこん、恋いろは。」における"手"の使い方、描き方にはやはり独特のエモーションが宿っています。
 
 

■墨染さんの"手"

そうした視点で本作に注目をしてみると、物語の主要キャラクターの一人である墨染さんなんかは特に"手"による芝居やキャラクター性の表現が特徴的なキャラクターであるように思うのです。
 

 
主人公であるいなりの顔を大きく崩すことも厭わない、豊かな表情の数々や大きな感情表現とは対照的に、不安やコンプレックスを自身の内面に隠し続けていた墨染さん。顔を使っての感情表現、芝居が少ない代わりに画面で描かれることが多かったのが手を使った細やかな仕草。長年抱えていた感情が爆発をしてしまい、遂に涙を流すシーンでも顔を覆った手の描き方がとても印象的でした。
 
また、容姿端麗で同世代の女子ならば思わず羨んでしまうような大人びた風貌やファッションセンスを持ちながらも、その内面は繊細で…という彼女の本質を象徴するかのような美しくもか細い指の描き方にも注目をしておきたい。まさに、手がキャラクター性そのものを物語っているんですよね。
 
キャラクター同士の親密な関係を描く時、或いは、その内面を描く時。「いなり、こんこん、恋いろは。」の中で印象的に使われるキャラクターの手。この先も、このポイントには注目をして観ていきたいですね、個人的に。
 
Queen / 手を取り合って>