「ご注文はうさぎですか?」のファンタジー






最近になってアニメ版のご注文はうさぎですか?を現在放送分まで一気観をしたんですが、これが非常におもしろくてですね。


何がどうおもしろいって、個人的に一番ツボを突かれたのが、本作が所謂"きらら系"の"日常系"コメディでありながら、そのフォーマットから微妙にズレている点。そのズレ方というのが、何だか新鮮で気持ちが良い。そんなこんなで、今回のエントリではちょっとその辺りについてアレやコレやと書いてみたいと思います。




■"きらら""萌え四コマ"原作アニメに対する個人的なイメージ

日常系のコメディ作品において、ストーリー構成の基本となるフォーマットってあると思うんです。自分がイメージするそれというのは、「女の娘達が物語の主役で」、「学園生活が舞台のメインとなっていて」、「ライトな"百合"的な要素があって」、「全13話前後のエピソード数のそれぞれに季節が割り振られていて1クールの放送期間の間にゆっくりと一年が巡り」、「その中で様々な学校行事が描かれる」…というもの。


あくまで、自分の中での最大公約数的なイメージ像ですので、その定義付け自体にはほとんど意味はありませんし、それが正確な立像を結びえるかというと全くそんなことはないんですが、そういう印象がある。そして、そこから「ご注文はうさぎですか?」はちょっとズレている気がするんです。


先ず、舞台のメインが学校じゃなくて、喫茶店な点。これは物語を構成する上で凄く大きくて、ストーリーの中での描写のほとんどが主人公であるチノ達が過ごす日常や日々のお仕事に集約をされている。たまに、学校生活の様子なんかが描かれることもありますが、あくまでアクセント的なもので、ストーリーの主軸になるのはやっぱり喫茶店を巡るアレコレで。


この学園日常モノや部活モノではない舞台設定というのが、自分には凄く新鮮に感じらまして、それが「ご注文はうさぎですか?」に惹かれたきっかけになったんですが、そういう視点で観てみるとこのアニメって本当に不思議な作品だとも思うんですね。




■"ファンタジー"として観てみる「ごちうさ

例えば、舞台となる街の無国籍さ。物語の登場人物達は皆、漢字の姓と名を持っていますが、では「ご注文はうさぎですか?」という物語の舞台が日本かというとその辺りは凄く曖昧に描かれていて、彼女達が暮らす「木組みの家と石畳の街」は、ヨーロッパ的な風景が続く街並みとなっています。


そんな"欧風"な作品の雰囲気は、音楽的な面にも顕著に影響を与えていて、ストリングスを多用した劇中音楽の数々は、やはりヨーロッパ的な雰囲気をメロディーに携えていますし、ED曲のぽっぴんジャンプ♪では打ち込みによるバグパイプ調の旋律も。だから、英国的な世界観なんですよね、この作品の舞台って。日本と英国のまさに"和洋折衷"な世界観になっていて、そういう良い意味でアブストラクトな世界観だから、日本の四季の様な緩急の付いた季節の描写も本作ではほとんど見られない。


そういう意味でいったら、やっぱり「ご注文はうさぎですか?」って、凄くファンタジックなお話だと思うんです。日常系の作品ではあるんだけど、登場人物達は皆、ファンタジーの世界に生きていて、そこで幸福なストーリーが綴られていく…という。


…まぁ、そもそもウサギが喋っている時点で物凄いファンタジーなお話なんですけど…。


勿論、「きらら」系列誌の連載作品にも非常に作風の幅はあって、それこそファンタジーな世界観やキャラクターを描く漫画作品があることも理解はしていましたが、無意識的にやはり「きらら」発の四コマ原作アニメというとひだまりスケッチ」「けいおん!」「ゆゆ式…といった作品のイメージが強くて、故に、そうした学園ものや部活ものからちょっと離れた物語をファンタジックな景色の中で描いてく「ご注文はうさぎですか?」は、自分の中で小さな驚きを感じた作品でした。


いいですね、こういうちょっと意外性のある"日常系"アニメ。スタンダードがあるようで実は存在をしない、そんな芳文社系萌え四コマ作品の強みみたいなものが感じられますよね「ご注文はうさぎですか?」。