「白銀の意思 アルジェヴォルン」のジレンマ






今月から放送をスタートした新アニメ白銀の意思 アルジェヴォルン。物語のファイアースターターとなる第1話、第2話を観た限りでは、ミリタリーテイストの強い"硬派"なSFロボットアニメという印象を受けました。


まだまだストーリーは始まったばかりですし、この先、どういった方向に話が進んでいくのかは未知数なのですが、FRONT MISSIONシリーズを思わせるこれまた硬質なロボットのデザインや登場人物たちのキャラクター性は、かなり自分のツボでして、個人的にもこれからが凄く楽しみなロボットアニメです。


自分が住んでいる地域ですと、本作が放送をされる木曜日は銀河機攻隊 マジェスティックプリンスの再放送も行われていまして、おもしろいロボットアニメが続けて観れるのも嬉しい限り。


ところで、この「白銀の意思 アルジェヴォルン」、様々な意味で非常に冒険的な作品だと思うんです。今回のエントリでは、その辺りについてちょっとアレやコレやと書いてみたいと思います。




■「白銀の意思 アルジェヴォルン」のロボ描写の丁寧さ

この「白銀の意思 アルジェヴォルン」で大きな特徴となっているのが、劇中に登場をするロボット…"トレイルクリーガー"の描き方だと思います。現在放映分の第2話迄を観た限りでは、トレイルクリーガーは、その性能は決して万能とは言えない、機動性も装甲の強度も決して高くはない存在という描き方をなされている印象を受けました。そして、それが主人公機であるアルジェヴォルンの高いスペックを際立てる…という演出がなされています。


■『アルジェヴォルン』の主人公機描写に見る渋さについて(マンガ☆ライフ)


その辺りのロボットの性能差を演出する描き方については、上記の「マンガ☆ライフ」さんのBLOGでも言及をされています。そして、主人公機を"立てる"為の丁寧な描写の数々は本作のドラマ性と世界観の確立させることに成功をしている様に感じました。


白銀の意思 アルジェヴォルン」は、こうした緻密な描写が魅力の一つと言える作品になるかもしれません。少なくとも第1話と第2話においては、「もしも、戦場に自立歩行を出来る兵器があったら?」という"if"を突き詰め、それがフィクションに一種のリアリズムを与えていた様に思うのです。


つまり、ロボット型の兵器に対する万能感の欠如アルジェヴォルン以外の量産機は、機動性に乏しく、バランスも悪い為に操縦に慣れていないパイロットではしばしば操縦不可能な状態に陥ってしまうし、スピードも出ないので敵機に囲まれるとボコボコにされてしまう、また、守備力も決して高くないので銃器や戦車の様な兵器でも十分に迎撃が可能…などなど。もしも、ロボットを兵器として戦争に使用をしたならば? というSFを現実世界のミリタリー的世界観に落とし込んだ「アルジェヴォルン」のシークエンスの数々。


それが、例えば前述をした主人公機の高い性能を描くことに大きく貢献をしていますし、アニメ自体の脚本や演出の丁寧なイメージにも繋がっています。




■「アルジェヴォルン」が抱えるジレンマ

一方で、これらの描写は、本作においてマイナスに働いてしまうという側面もあると思うのです。それは、つまり「何故、そこまで性能の低い機体を戦場で使い続けるのか?」という矛盾。


アルジェヴォルン」が、リアルなミリタリー描写とロボットSFアニメのバランスに細心の注意を払い、ロボット兵器を万能ではない、欠点だらけの存在である"リアルロボット"として描けば描くほど、もどかしいことに"リアル"からは離れていってしまう。丁寧だからこそ、逆に綻びが生まれてしまう。これは、「白銀の意思 アルジェヴォルン」というアニメが持つジレンマなのではないかと思います。


本作の世界観としては、気象兵器の暴走によって航空兵器が使用できないというストーリーの大前提があって、それ故に地上兵器のトレイルクリーガーが進化を遂げた…という物語になっている様ですが、そのトレイルクリーガーの性能が高くない為に、戦車や装甲車ではダメなのか? 自立歩行をする兵器を使うメリットは? という疑問がどうしても出てきてしまう。


勿論、物語はまだまだ始まったばかりなので、この辺の疑問符に最適解を与えてくれるシーンや、それらに対する理由付けがこれから劇中で描かれる可能性は十分にあります。また、トレイルクリーガーを使っているからこその戦術的な優位性なんかについても言及があるかもしれません。そして、自分なんかはそこに期待もしています。


ただ、序盤のストーリー展開を観ていたところ、上記の様な疑問から「アルジェヴォルン」というロボットアニメに対して、歯がゆさというかじれったさみたいなものを感じたのも事実です。丁寧にロボットを描いているからこそ、生まれてくる矛盾に、ロボットアニメの難しさが際立ってしまう。だからこそ、本作はとても応援をしたくなる作品でもあると思うのです。


そういう意味でも「白銀の意思 アルジェヴォルン」は、凄く意欲的で挑戦的な作品なのではないかと思っています。そして、現時点でこの様な無粋なツッコミを入れている自分みたいな視聴者を物語が終わる頃にはグウの音も出ない位に情感を揺さぶらせてくれる…そんなアニメになることを祈っています。