音楽に対して己の加齢と感性の衰えをヒシヒシと感じたアニメソング3選






非常に主観的な目線とテーマのもと、今回のエントリではアニメの音楽についてアレやコレやと!




■もう、すっかり音楽ファンとしてもオッサンになり……

近頃、己の加齢を感じることが多い


とはいえ、元々虚弱体質故に、肉体の衰えというのを自覚することはほとんど無い(肉体の激しく疲労や体力の消耗を伴う運動をそもそも行わないので、自覚の仕様が無いのでR)し、髪の毛はまだ黒々としている(但し、陰毛には白髪がチラホラと……)、何より、性欲と勃起力はまだまだ健在だ。寧ろ、健在だというよりも凄い。先日、同世代の同僚とエロ話をしていたのだが、自身の自慰の頻度を伝えたところ、相手はちょっと引いていた。未だに、巨乳モノのAVなんぞを観た日には、己の股間に鎮座する男根は板垣恵介先生が描くところの格闘家の筋肉の如くバッキバキとなる。すなわち、ジャック・ハンマーと化す。密かに、自身のJr.のことを"ビスケット・オリバ"と呼んでいるくらいだ。お陰で、嫁さんも大喜びである。



<板垣恵介範馬刃牙』第6巻 (秋田書店) P.16>


そんなわけで、幸いにも肉体的な加齢に対しては今のところほぼ無自覚(でも、確実に迫ってきてはいるんだろうな……)で済んでいるものの、それでも自身の衰えを感じるシチュエーションは日常生活においてままある。


それは、主に感性の衰えに対して……である。


特に、音楽を聴いている時に、その切ないエモーションを感じることが多い。ズバリ言って、現在進行形の音楽シーンや流行り廃りに全く付いていけていないのだ。


昔は、『ロッキンオンジャパン』誌の表紙に登場をしているバンドやアーティストの名前なんて、すべからく知っていて当然であった(例え、興味はなくとも最悪、名前や大まかな音楽性なんかは"知って"はいた)が、今はもう誰が誰やら分からない……なんて事も多い。Web上のニュースサイトや動画サイトの普及によって、音楽そのものにアクセスすることは昔よりも遥かに容易になっているハズなのに、矛盾する様だが音楽知識そのものは停滞を自分の中で始めている。


……ハードコアパンクとかスラッシュメタルなら、今もガンガンシーンを追い続けているのだが、所謂"J-POP"とか"J-ROCK"関係が特にヤバイ。"アカイコウエン"……? 押井守監督の紅い眼鏡ならば、テーマ曲を新日本プロレスレッドブル軍団が入場時に使っていたからよく知っているが、赤い公園の音楽となるとちょっとよく分からない。万事がこんな調子である。


故に、いきなり知らない音楽ムーヴメントから新しいアーティストが登場をしたり、しかも、そのアーティストがアニメ作品の主題歌に起用をされたりする。こっちは、アニメは現在進行形でバリバリ観ている(つもり)ので、そこでいきなり新しい音楽に出くわすことも多い。というわけで、自身の音楽体験において、こういった良い意味でも悪い意味でも大きな驚きのあった……物凄く砕けた言い方をすれば「あ〜俺、この辺の音楽に全然ついていけてないわ……俺、年食ったわ……」と"オッサン化"を痛感した楽曲を3曲挙げてみたいと思う。




■『RD 潜脳調査室』の「Wanderland」

9mm Parabellum Bullet / Wanderland>



で、一曲目がRD 潜脳調査室のコレ。……これも、もう何年か前のアニメ作品(でも、名作だ!)で、今思い返せば、この辺りからアンテナが鈍化していったんだな……という侘びしさをシンミリと感じさせてくれる楽曲。


当時、9mm Parabellum Bulletの名前を知ってはいたが、このバンドの曲がアニメの主題歌になっているのを聴いた時は本当に驚いた。というのも、キューミリは、「日本のオルタナティヴ・ロックの新星」みたいなイメージで捉えていたので、そんなバンドがまさかアニメに関わるなんて……という非常に新鮮な驚きがあったのだ。


自分が学生の頃に聴いていた日本のオルタナティヴ・ロックバンド、つまりは、ナンバーガール、例えば、COWPERS、fOUL、或いは、eastern youth……といったバンド群が日本のロックシーンで活動をしていた頃というのは、こうしたオルタナティヴ・ロックは文字通り"オルタナティヴ"な存在であり、まさか、アニメ作品の主題歌にピックアップをされるなんて想像が出来なかった。


この「Wanderland」以前にも、アニメとオルタナの融解点としてASIAN KUNG-FU GENERATIONという先達はいたが、アジカンの場合は、前述のオルタナ系バンドが"J-POP"として商業的な大成功とシーンに定着をする為に唯一欠けていた(というか、音楽的なアティチュードとして、そもそも志向をしていなかった)「ポップなメロディー」と「明快な楽曲構成」を有していたバンドだ。アジカンの「ループ&ループ」をCM曲で聴いた時もそれはそれでビックリしたが、そういう曲を書けるバンドだからこそ、アジカンが『NARUTO -ナルト-』や『鋼の錬金術師』の主題歌にチョイスをされたところで然程、意外性は無かったし、ある種の必然性すら感じたものだ。


ところが、9mm Parabellum Bulletの場合は自分の中で違った。ああいう複雑な構成の曲、歌謡曲的なポップな響きとは明らかにニュアンスの異なるヴォーカルや歪みまくったギターで構築された曲……がアニメで流れた瞬間の驚愕というのは、自分の中で特筆すべきものがあった。


実に"オルタナ"らしい楽曲が、何の衒いもなくアニメの主題歌として流れてくるのだ。「あ〜オルタナって変わったのね〜!」と驚いた。そして、どうもこの辺りから自分は日本のオルタナ、インディー系のロックにどんどん追いつけなくなっていったようだ。


この『RD 潜脳調査室』を始め、日テレの深夜アニメはロックやメタル等、"攻めた"チョイスによるタイアップの楽曲をいくつかリリースをしたけれど、『蒼天航路』でOGRE YOU ASSHOLEが流れようが、『ONE OUTS』でメタルコア系の楽曲がオープニングを飾ろうが、この時ほどは驚かなかったし、そういうロックとアニメのクロスオーヴァーが進んで、ナンバーガール向井秀徳さんが『スペース☆ダンディ』で、ギターの田渕さんがLAMAとして『エウレカセブンAO』に登場をしようと(90年台後半〜に活躍をしていたオルタナ系のバンドが、時を経てアニメに関わる様になったのだなぁ……と、こちらも感慨深いけれど)、このRD 潜脳調査室』のインパクトというのは段違いだった。


そして、自分が聴いてきた"オルタナ"と現在進行形の"オルタナ"は、明らかにニュアンスの異なるものになっていて、自分は時代に置いてけぼりになりつつあるのだな、と妙な寂しさを覚えたものだ。




■『ぎんぎつね』の「tiny lamp

次は、グッと最近の曲になってぎんぎつねの「tiny lamp」。神様が見える少女を主人公に、時にはちょっぴり切なくも、ハートフルで優しい青春模様を描いた『ぎんぎつね』だけれども、この主題歌にも本当に驚かされた。


オープニング曲「tiny lamp」を歌うはfhana(正確な表記は、三文字目の"a"の上にアクセント)。この人達の楽曲は、先に有頂天家族のエンディング曲である「ケセラセラ」で耳にしていた。しかしながら、その時は、女性ヴォーカリストの歌声が前面に立った楽曲構成と"fhana"という柔らかな響きから、バンドとは思わず女性アニソンヴォーカリストの名前だと思い込んでいた。……一番最初は、LisaさんとかZAQさんみたいな女性ソロアーティストの固有名詞による芸名だと思っていたのだよ、fhana…失礼かつ恥ずかしながら。


しかしながら、この「tiny lamp」という楽曲に対して大きな驚きを覚えたのは、そんな自分の間抜けな勘違いが原因じゃない。『ぎんぎつね』を観た時、先ず、この曲が流れてくる。ノリの良いバンドサウンドで、ギターはエモコアっぽい。かなり、自分好みのサウンドだ。疾走感と瑞々しい感性が同居した良い曲で『ぎんぎつね』のイメージにもピッタリだ。そう思いながら、オープニングを観終わった後だ。この「tiny lamp」のシングルCDのCMが始まった。


へ〜fhanaって、実はバンドだったんだ。ヴォーカルがいて、ギターがいて、キーボードがいて……ん? んん〜!? あ、アレ? ドラムとベースがいない!!


<fhana / tiny lamp



これも、非常に驚いた瞬間だ。fhanaは、(少なくとも楽曲のCMを観る限り)ベースとドラムというバンドサウンドのリズム、低音を担うパートの代わりに打ち込みを使用しており、本来ならドラマーかベーシストがいるべきポジションにはサンプラーを操るメンバーがいるのだ。


カルチャーショックである。


NEW WAVEが好きなので、打ち込みによる低音パートや変則的なバンド編成には一切偏見がない自分ではあるが、fhanaのメンバー構成には驚かされた。また、こういうテクノロジーに溢れる音作りを行っていながらも、このバンドが奏でる音というのは、"バンドサウンド"としかいい様がない人間味に溢れた音なのだ。しかも、詳しく調べてみれば、このfhanaは同人音楽のシーン出身だという。サプライズのダブルパンチ。何もかも、驚くべきトピックばかりだ。


"同人音楽"という全く自分の知らないシーンから、こういうグッドメロディーとリズムを持った曲を書くバンドが出てきた事実(続く、『僕らはみんな河合荘』主題歌の「いつかの、いくつかのきみとのせかい」も本当に素晴らしい曲だった……)、トリッキーな編成を全く感じさせない(つまりは、打ち込みでも低音に安っぽさや無機質さが皆無な)バンドサウンド、機材の進化……これも、自分のアンテナの綻びと感性の老朽を反省させられた瞬間だった。「あ、俺、ダメだ。完全に遅れてる……」である。


そういう意味でも、fhanaは本当に凄いバンドだなと強く思う。もっとも、自分は古い人間なので、同じアニソン系の主題歌を手掛けるバンドでもnano.RIPEみたいなオーソドックスな編成のバンドを観ると何だかホッとしてしまうのだけれども……。




■『いなり、こんこん、恋いろは。』の「今日に恋色」

<May'n / 今日に恋色(1cho.ver)>



最後の三曲目は、今年リリースをされたコレ。この曲を初めて聴いた時の驚きと新鮮な感動というのは、以下のエントリで書いた通りだ。


■「いなり、こんこん、恋いろは。」で生まれて初めて"初音ミク的な音"にシビれる


自分がアニメソングのトレンドで一番ついていけてないジャンル、全く知らないシーンが、初音ミクの様なボーカロイドを使用したネット発の音楽。とはいえ、自身の音楽嗜好との間に乖離も感じていたし、そんな自分が初音ミクを使って楽曲を作っている様な音楽クリエイターと接点を持つことも無いのだろうな……と感じていた。ところが、kz氏がクリエイトしたこの楽曲には、一発でノックアウトをされてしまった。いなり、こんこん、恋いろは。というアニメ自体も素晴らしい作品だったが、その情感を盛り上げてくれたのがオープニングのこの曲。思わぬところから飛んできたサッカーパンチである。


常々、ボーカロイド関連の楽曲についていくことが出来ず、己の老いを自覚していた自分ではあるが……こういった驚きならば、ジャンルなんて一切関係なしにいつでも大歓迎だ。




■まとめ

"老い"とか"衰え"なんて、(非常に主観的な問題で)ネガティヴなキーワードに楽曲を3つ選んでみたが、これらの楽曲は自身の感性の衰えを強烈に自覚させられると同時に、非常に鮮度の高い驚きを与えてくれた楽曲でもある。つまりは、それだけインパクトの強かった楽曲、新鮮な刺激を与えてくれた楽曲、驚きを与えてくれた楽曲、グレートな3曲。


この歳になると、音楽に対しても色々な固定観念が出来てきて、頭の中も凝り固まって、これはダメだとか、あれは分からないとか、弱音半分、愚痴半分で零したくもなるのだけれど、これらの楽曲はそういったハードルをアッサリと跳び越え、心に響いてきた楽曲だ。


なかなか大変な時もありますが、それでも、こういう驚きがあったりするから、自分は音楽を聴くのを止められないのではないかな、とシンミリと思う次第。