アニメの音楽は何故、ヘヴィメタルと繋がり続けてきたか? その歴史を振り返りながら考える(文字数、一万字超で)






アニメを観ていると、その音楽に"ヘヴィメタル"というシーンと文化圏に属しているバンド、アーティストの楽曲や、ヘヴィメタル的なニュアンスを強く持つ、影響を感じさせる楽曲を耳にすることが多い。


果たして、それは何故であるか……という理由を考える際に、"アニメ"(もしくは、もっと広義でのゲームやコミック等も含むカルチャー全般)と"ヘヴィメタル"、この2つがクロスオーヴァーを起こしてきた事例をまとめ、その歴史を紐解いていくことは、その答えを導き出す為の有効なアプローチの一つである様に思う。


そこで、今回のエントリでは、"アニメから考える鋼鉄音楽史"もしくは"ヘヴィメタルから考察するアニメ音楽"という論点でもって、その両者の関係性を探っていきたいと思う。


俯瞰的な歴史の集約、再考を目的としているものの、そもそも80年代を起点とした日本のヘヴィメタルシーンの成り立ちをリアルタイムで体感しておらず、また、若輩者である自分の力では正確な総括が叶わず、事実誤認を含んでいる可能性があることを最初に断っておきたい。


また、当エントリは、各ジャンル、各時代をカヴァーすることを前提として書いている為、ところによってはそもそも自身が所属をしていなかったシーン、興味の無いジャンルについても言及を行っている。結果、やや考察の内容が薄い、真にそのジャンルなり時代なりに情熱と愛着を持っているファン層には言及が物足りない部分もあるだろう。自分の力が及ばず、抜け落ちているトピックもあるに違いない。それらに関しても、当エントリにアクセスをしていただいた方々に対して、最初に謝罪をしておきたいし、それでも自分なりにヘヴィメタルとアニメに対する熱意と探求心を形にした論考……ということで、何卒、ご容赦をお願い出来ればと思う。


それでは、アニメとヘヴィメタルにまつわる話をアレやコレやと。




■80年代の"ジャパメタ"とアニメソング

ヘヴィメタル・ミュージックとアニメの接点……というと、先ずはその原点の一つとしてこのバンドと作品が挙げられるのではないだろうか?


EARTHSHAKER / DON'T LOOK BACK>



EARTHSHAKERによる超音戦士ボーグマン主題歌「DON'T LOOK BACK」。80年代前半に音楽シーンに巻き起こった日本人によるヘヴィメタルバンドのムーヴメント……所謂"ジャパメタ"を代表するバンドであるEARTHSHAKERが88年にリリースをしたこの曲は、ヘヴィメタル、引いてはバンドサウンドがテレビアニメのオープニング曲として流れた初期の代表例であり、同時にジャパメタ勢の商業的成功の著名な例の一つであると言えるだろう。


余談だが、EARTHSHAKERのヴォーカリストである西田昌史氏は、バンド活動と平行をして後にビーイングのプロデューサー業も兼任。90年代半ば頃からアニメ作品とのタイアップで猛威を振るった"ビーイング系"にも関わっているというのはなかなかに興味深いポイントだ。


いずれにせよ、ジャパメタが……日本のヘヴィメタルが、その初期から"アニメソング"というカルチャーとの接点があったというのは注目をしておくべきである。


また、EARTHSHAKER以前に日本のHR/HMがアニメとクロスオーヴァーを行った例としては、影山ヒロノブ氏の存在が挙げられる。





元々は、ハードロックバンド、LAZYのヴォーカリストだった影山氏はバンド解散後にソロ歌手へと転向。84年に『超時空騎団サザンクロス』の主題歌「STAR DUST MEMORY」でアニソン歌手としての"再デビュー"を果たすと、その後も「電撃戦隊チェンジマン」「光戦隊マスクマン」といった特撮戦隊ヒーローの主題歌、そして、『DRAGON BALL』のオープニング曲である「CHA-LA HEAD-CHA-LA」といったアニソン、特撮ソング史に残る名曲、ヒット曲を連発し、アニソン歌手として不動の地位を築き上げる。


影山氏がソロミュージシャンとしてのキャリアを重ねる一方で、残るLAZYのメンバーである高崎晃氏と樋口宗孝さん(故人)は、後期LAZYのハードロック、ヘヴィメタル志向を更に突き詰めるべく新バンド、LOUDNESSを結成。数多くのヘヴィメタルアルバムをリリースし、全米デビューを果たすなど、ジャパニーズ・メタルのトップランナーとして日本の音楽シーンを走り続けることとなった。


LOUDNESS / The Sun Will Rise Again>



また、元LAZYメンバーでソロアーティストになった影山氏、LOUDONESS結成組の高崎氏と樋口さんと残るもう一人のメンバー……キーボードの井上俊次氏は、LAZY解散後に株式会社ランティスを設立。数多のアニソン、声優ソングをリリースするメジャーレーベルの創始者が、"メタル"カルチャーの出身というのは、ヘヴィメタルとアニメとの関わりを考える上で留意しておくべき点だろう。




X JAPANの躍進とビジュアル系バンドによるアニメ番組への楽曲提供

他にも、ジャパメタブームの時期にデビューをしたバンドがアニメ作品やアニソンとの関わりを持った例としては、『聖闘士星矢』のオープニング曲であるMAKE-UPの「ペガサス幻想」(こちらのリリースは、EARTHSHAKERの「DON'T LOOK BACK」よりも早い86年のリリース)等が挙げられる。


そのジャパメタムーブメントの中から登場をしたバンドの中で最もメジャーなアーティストとなり、また、アニメ作品との関わりを持つヘヴィメタルバンドとして、このバンドの存在も見逃せない。ずばり、X JAPANだ。





後の所謂"ビジュアル系"のバンドに多大な影響を与えたX JAPANだが、個人的に強く印象に残っているのは、りんたろう監督による劇場版『X』の主題歌に起用をされた「Forever Love」で、この曲が流れている『X』のテレビCMや映画の特報は、作品自体の終末的なイメージも相まって強烈に脳裏に残っている。CLAMP原作のアニメに合わせてヘヴィメタルバンドのバラードが流れる……という映像は、自身が今回のエントリの様な"ヘヴィメタル"と"アニメ"を結びつけて考察を行うアティチュードの一つの原体験になっているのではないかと思う。


X JAPAN / Rusty Nail(Anime Ver.)>



バラエティー番組に出演をする等、お茶の間にヘヴィメタルのイメージ(曲解、誤解を多分に生み出してしまったとはいえ)を届けたバンドとも呼ばれるX JAPANだが、世代的には『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』よりも、『X』でこのバンドの存在を知った為に、アニメ作品との繋がりを投影してしまう。現に、最近youtubeにオフィシャルアカウントからアップをされた「Rusty Nail」のPVのアナザーヴァージョンでは、90年代らしいアニメーションを使った映像を残しているし、X JAPANが設立をしたインディーズレーベル、エクスタシーレコードから作品をリリースした、或いは、このバンドから影響を受けた後続のビジュアル系バンドがアニメ作品の主題歌に曲が使用される……という90年代の半ばぐらいから現在に至るまでのアニソン界のトレンド、その流れの原点にもなっていると考えることも出来る。





例えば、GLAYの初期のシングル曲である「RAIN」や「真夏の扉」は、テレビアニメ『ヤマトタケル』の主題歌に起用をされていたし、PIERROTの『神風怪盗ジャンヌ』、PENICILLINの『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』、SIAM SHADEによる『るろうに剣心』といったビジュアル系バンドによるアニメ作品のタイアップ曲の数々、『バジリスク甲賀忍法帖〜』で本格派のヘヴィメタルサウンドをアニメファンに知らしめた陰陽座、そして『快感フレーズ』という"ビジュアル系"という文化圏そのものをテーマにしたアニメ作品、或いは、L'Arc〜en〜CielやT.M.Revolutionの様にJ-POPとアニソンを華麗に行き来するバンド、アーティストによるアニメ作品とのミクスチャー現象の"元祖"として、Xをその歴史にレイアウトすることも可能ではないかと。


筆者は、ビジュアル系バンドに対する専門的な知識が無いために、ここでは深い指摘や考察は行えないものの、ジャパメタがやがてビジュアル系へと変遷を遂げていく……という日本の特異なヘヴィメタル・ヒストリー、また、そこから派生をしたビジュアル系バンドが(インディーズブーム等で、その時々による多少の影響を受けながらも)、他ジャンルの音楽に比べてもアニメというカルチャーと近い距離にあるという事実も含めて、X JAPANの存在意義はとてつもなく大きいと思うのだ。




■"バンドブーム"時代のヘヴィメタルバンド

X JAPANのメジャーシーンでの大ブレイクから時代はやや前後するものの、80年代初期から中期にかけて勃興をしたジャパメタムーヴメントは、80年代終盤から巻き起こる所謂"バンドブーム"に取って代わられることになる。ここから飛び出したバンド群がアニメの主題歌にタイアップをされる(『らんま1/2』におけるKUSU KUSUの「地球オーケストラ」、FLYING KIDSによる『逮捕しちゃうぞ』の「僕であるために」など)現象も発生。以降、ヘヴィメタルは日本のメジャーな音楽シーンから一旦、フェードアウトをすることとなる。


そうした中で"ヘヴィメタル"の影響を強く感じさせるバンドもこうしたブームの中から数多く登場をしている。例えば、大槻ケンヂ氏率いる筋肉少女帯BLACK SABBATH直系のドゥーム的なハードロックをブチかまし、遂にはオジー・オズボーン主催のフェス"OZZ FEST"にも出演を果たした人間椅子、KISSの様な白塗りメイクとド派手衣装に身を包み、オカルトや猟奇的な世界観を日本人的なコメディ感覚でコミカルに味付けをした聖飢魔II等は、バンドブーム期におけるメジャーどころのヘヴィメタルの代表格と言えるだろう。





中でも、筋肉少女帯は大槻氏のサブカル嗜好も込みで、各ジャンル、カルチャーに大きな影響を残している。元々は、ザ・スターリンやJAGATRA等のアンダーグラウンドなパンクバンドの系譜にあった筋肉少女帯だが、NWOBHMを愛聴するスーパーギタリスト橘高文彦氏の加入によって、その音楽性は急速にヘヴィメタル化を果たす。正統派のハードロックからスラッシュメタル、流行の兆しを見せていたミクスチャーメタル等を取り込み、そこに大槻氏の歌詞世界を載せることで、唯一無二のオリジナリティーを得ることに成功。


バンドブームの隆盛の煽りをモロに受けながら紆余曲折の活動を続け、活動停止、メンバーによる別プロジェクトの始動、そしてそれらを乗り越えての活動再開……と、現在に至るまで不屈の活動を続ける筋肉少女帯だが、このバンドがアニメや漫画等のカルチャーに与えた影響力の大きさは言わずもがなである。


筋肉少女帯 / ゾロ目>



筋肉少女帯というバンド自体も90年代にはアニメ作品やテレビゲームのCMソングに曲がピックアップをされている(SFC版『ストリートファイターIIターボ』の「1,000,000人の少女」やテレビアニメ『EAT-MAN』の「小さな恋のメロディ」等)し、大槻氏の"オタク"的なイメージもあり、そういった文化圏と非常に距離感が近しいイメージがあったものの、どちらかというと筋肉少女帯の場合はその歌詞や活動コンセプトが、後のアニメ界や漫画家界におけるクリエイターや作品に与えた影響の方が大きいと言えるだろう。





"筋少"の影響下にある有名な作品をいくつか列挙するだけでも、新世紀エヴァンゲリオン(ヒロインである綾波レイのキャラクターデザインに筋少の楽曲『何処へでも行ける切手』が元ネタに)、滝本竜彦氏の諸作品、Leafのアダルトゲーム『雫』(大槻氏の小説『新興宗教オモイデ教』を参考にしている点が多い)等、ジャンルを問わず枚挙にいとまがない。バンドブームが世に輩出をしたバンド群の中でも、筋少はアニメとの関わりを考える上でマイルストーン足りえる重要なバンドだと言えるだろう。




ANIMETALの大ブレイクとヘヴィメタルの停滞期

バンドブーム以降、日本のバンドサウンドは所謂"ビートパンク"やポップス寄りのメロディー、リズムが中心となり、ヘヴィメタルのハードな音は衰退をしていった。そうした中でビッグヒットを飛ばしたバンドが、ANTHEM坂本英三さかもとえいぞう)氏によるANIMETALである。





アニメソングや特撮ソングをメロディアスなスピードメタル調のヘヴィメタル・ナンバーにアレンジをし歌唱する、というこのコンセプト重視のプロジェクト的なバンドは、その発想力のユニークさと高度な演奏テクニックでヘヴィメタルファン以外のリスナー層にもアプローチを出来る程の大ヒット企画となった。


アニメとメタルという両者を結びつけるキーパーソンとして、坂本英三氏も決して外すことが出来ないミュージシャンだ。ジャパメタオリジナル世代であり、同時に、ソロミュージシャンとしてもアニメ作品との親和性の高い活動を行い続け、その二つのカルチャーにおいて重要なクリエイター、表現者であり続けている。


しかしながら、バンドブームに沸いた平成初期から、ANIMETAL大ブレイクの90年代半ば〜後半は前述の様に、日本の音楽市場においてヘヴィメタルは不遇の時代を迎えており、この時期のアニメソングのヒストリーを見返してみても、ビートの強いポップス系のバンドやビジュアル系バンドによる楽曲の起用が目立つ印象を受ける。勿論、インディーズシーンやアンダーグラウンドな鋼鉄音楽シーンに目を向けてみれば、ジャパメタ期より長い活動を続けるOUTRAGEやUNITED、JURASSIC JADEの様なジャパニーズ・スラッシュメタルオリジネーター勢、S.O.BやHELLCHILDの様なハードコア、デスメタルのバンド、ヨーロッパのブラックメタルから強い影響を受けたAbigail、後続のビジュアル系にも繋がるDOOMといったメタルバンドが存在をしていたが、それらのバンドは、もっと硬派な音楽的嗜好、ハードコアな活動方針を打ち出しており、オタク的な文化圏との接点は皆無であった。





そうした中で、特筆すべきバンドがcocobatであろう。ハードコアパンクスラッシュメタルの要素を色濃く受け継いだサウンドが特徴のcocobatだが、中心人物であるベーシストのTAKE-SHITはプロレスや格闘技、アニメや漫画といったサブカルチャーをこよなく愛する人物であり、アルバム以外のマテリアルとしてもアクションフィギュアを発売する等、ディープな創作活動を続けていた。また、TAKE-SHITは、ANIMETALの作品にもプレイヤーとして参加をしており、"オタク"文化圏との距離も近い人物だ。90年代後半の格闘技界における修斗人気やユースカルチャーにおける裏原系ファッションのブーム……に乗り、ユニークなコラボ企画を次々に打ち出したcocobatは、ヘヴィメタルがその求心力を弱めていた時代において孤軍奮闘をしていたバンドであり、オタク的な文化圏ともニアな関係にあったバンドであると言える。




■インディーズブームと新しいヘヴィメタルサウンドの誕生

そのcocobatも中心となり、90年代の後半から00年代の序盤にかけて、空前のインディーズブームが勃興をする。そのムーヴメントの主軸は、メロコアスカコア、ミクスチャーロックといったパンク系サウンドだったが、この大きな渦の中からもアニメ作品に繋がるメタル系のバンドが世に出てくることとなった。


メロコアバンド、NICOTINE主催のSkyRecordからデビューを果たし、後に日テレ系深夜アニメの主題歌を担当しメジャーアーティストの仲間入りを果たしたマキシマムザホルモンだ。とはいえ、マキシマムザホルモンは、KornLimp Bizkitの様なアメリカのラップメタルRed Hot Chili Peppersを代表とするミクスチャー系のバンド、PANTERAといったモダンヘヴィネス勢等、米国のヘヴィメタル・ミュージックに寄ったサウンドを鳴らすバンドであり、ここまでで名前を挙げてきたジャパメタのヒストリーの系譜にあるバンドとはやや趣を異にする。しかしながら、メタリックでラウドなサウンドをアニメ作品と結びつけた功績は大きいだろう。


そして、こうした新しいタイプのメタルサウンドでいえば、メタルコアスクリーモ的なサウンドオタク文化をミックスさせたキバオブアキバの様なユニークなバンドも登場をしている点にも、今後は注目をしていくべきである。現に、この辺のバンドとアニメの融合は、現在進行形で次々に起こっている。


また、00年代におけるオタク界隈におけるヘヴィメタルとして、ゲームミュージックを無視することは出来ない。StratovariusSonata Arctica、Rhapsody、Labyrinthの様な叙情的かつ派手なメロディーを技巧派かつスピード感に溢れる演奏で繰り広げる"メロディックスピードメタル"のブームも重なり、当時のアーケードゲームやPCの美少女ゲームでも、こうしたサウンドに影響を受けた音楽が作られた。





アークシステムワークス(当初は、サミー)のGUILTY GEARシリーズは、そうしたゲームの代表格と言えるだろう。劇中では、常に速く、激しいメタルサウンドが流れ続け、キャラクター名やキーワードの多くがヘヴィメタルバンドのそれから取られている。


■改めて声を大にして言いたい! 『GUILTY GEAR』はヘヴィメタル!!


先ほど、"硬派"なヘヴィメタルバンドとしてその名前を挙げたOUTRAGEのヴォーカリストである橋本直がシリーズの最新作である『GUILTY GEAR -Xrd-』で主題歌を手掛けた(ただし、OUTRAGEとしてではなく、橋本直樹名義で、あくまで個人での参加)ことは、ヘヴィメタルとアニメやゲームの文化圏における音楽との関係性を考える上で、大きな"事件"と言えるだろう。


橋本直樹 / Big Blast Sonic>



アーケード、コンシューマ期におけるヘヴィメタル的なゲームミュージックの筆頭が『GUILTY GEAR』ならば、PCゲーム、美少女ゲームにおけるその旗手がニトロプラスの諸作品である。「You're the Only…」のヒット曲で知られる小野正利氏をヴォーカリストに据え、ヘヴィメタル的なアティチュードに満ちた曲をリリース。これで、"ヘヴィメタル・ヴォーカリスト"へと転向を果たした小野氏は日本のメロディックスピードメタルバンド、Galneryusに加入。そのGalneryusは、楽曲が『HUNTER×HUNTER』や『曇天に笑う』といったアニメ作品に起用をされているし、Galneryusの様なメロディアスなメタルバンドの躍進例として、ガールズメタルのCyntiaによる『聖闘士星矢Ω』の「閃光ストリングス」といった楽曲も挙げられる。また、エロゲー文化圏でいえば、電気式華憐音楽集団やそれらの影響を受けて派生をした同人メタルというムーブメントも登場をしている様だ。


この様に、90年代終盤に一大ムーブメントとなったラップメタルやニューメタル、メタルコアといっった新世代のメタルサウンドや、メロスピ系のバンドによるアニメ、ゲームとの異種交配は今後も活発に行われていくと思われる。




■何故、アニメ音楽はヘヴィメタルに引きつけられるのか?

かなり、駆け足になってしまったが、アニメとヘヴィメタル、その両者を結び付てきた音楽トピックを時代毎に振り返ってみた。更に、こうした各トピックやムーヴメントに加えて、ハードロック的な音楽志向を強く打ち出したGRANRODEO新谷良子さんや喜多村英梨さんといったヘヴィメタルテイスト溢れる楽曲をリリースした女性声優の様に、声優側からのヘヴィメタルへのアプローチもある。


喜多村英梨 / 証×炎 -SHOEN->



そこで気になるのが、何故、日本ではこうもヘヴィメタルとアニメが密接に繋がっているかという点である。


個人的な主観による見解だが、やはり第一に"ジャパメタ"というムーブメントの存在が非常に大きかったと言えるだろう。ブームの最盛期におけるリアルタイムでの活動だけでなく、そこで活躍をしていたミュージシャンがプロデューサーやレコード会社の重役、或いは作曲家となり、アニメやゲームの楽曲に関わる……という事例は、アニメにまつわる様々な局面で目にすることが出来る。最近、実写ドラマの放送もスタートした『地獄先生ぬ〜べ〜』のアニメ版で名曲「バリバリ最強No.1」を残したFEEL SO BADは、その初期のプロデュースをEARTHSHAKERの西田氏が手掛けている……といった鋼鉄トリビアに溢れた例はいくつもあるし、新谷良子さんやGRANRODEOHR/HM路線も、そうした声優アーティストが所属しているランティスはLAZYの元メンバーが代表を務めているという事実は如何にもおもしろい。また、元々はジャパメタシーンに属していて、そこから作曲家兼プレイヤーとなり、『プリキュア』シリーズでメタリックなメロディーとリズムを世に広めた高梨康治氏の様なミュージシャンもいる。


<FEEL SO BAD / バリバリ最強No.1>



そして、日本のハードロック界がその歴史の初期に影山ヒロノブという不世出のアニソンミュージシャンを輩出したことや坂本英三によるANIMETALの大ヒットといったトピックも非常に大きなターニングポイントとなっているのは間違いない。


また、ヘヴィメタルがそもそも、"オタク"的な文化圏の上に成り立っており、そうした音楽を好んでいたファン層が、やがてアニメや漫画、ゲーム関係の製作者となり……というクリエイターレベルでのクロスオーヴァーの積み重ねも非常に影響力が大きいと考えられる。例えば、永野護氏や萩原一至氏、『GUILTY GEAR』や『BLAZBLUE』を送り出した石渡太輔氏の様なヘヴィメタル愛に溢れ、各分野で重要な役割を担うクリエイターの存在は決して見逃せないし、筋少や聖飢魔IIがそうしたクリエイターに与えた刺激は相当に強烈だったハズだ。


■30歳前後のヘヴィメタルファンに影響を与えたであろうアニメ、漫画作品


最後に、ヘヴィメタル特有の激しくも叙情的でドラマティックなサウンドが、アニメのドラマ性に強くフィットをしたことも挙げられるだろう。他の音楽ジャンルとは、また異なるニュアンスでアニメ作品と密接な結びつきを持ったこと……についても指摘をしておきたいと思う。


アニメ作品においてシークエンスを盛り上げるのに、ヘヴィメタルのメタリックで扇情的なサウンドは、その役割を担うのに非常に有効である。また、ゲームの場合もそれは同じで、ヘヴィメタルのメロディーとリズムは、劇的な効果をゲーム内に与える。そう考えてみれば、日本におけるメロディックスピードメタルのブーム以降、鋼鉄音楽とアニメのクロスオーヴァー現象がより活発化したことについてもある程度の説明が出来るし、若手のメロスピ系バンドがアニメなんかとのカルチャーと良好な関係性を築けているのにも納得がいく。


その歴史において、要所要所でのヘヴィメタルとアニメ音楽は化学反応を起こし、また、アニメやゲームといった表現分野は、ヘヴィメタルのドラマティックなメロディーを求めた。そして、ヘヴィメタルファンのクリエイターの存在。これらの要素が、両者との間に強い結合を招き、そして、幸福な関係性を築き上げてきた原因となったのではないかと私は考える。




■まとめ

自分なりの考えとリサーチによって、ヘヴィメタルとアニメ音楽の関係性、歴史を集約、考察を試みてみた今回のエントリ。冒頭にも書いた様に、抜けや間違いを多々含んでいるのではないかと戦々恐々としているのだが、この二つを結び付けて考察を行っているテキストがWeb上でなかなか見つからなかった為、不肖ながらこの度筆を取った次第である。


勿論、ヘヴィメタルの本場である欧米でも、例えば、アニメ映画の『HEAVY METAL』やMTVの『ビーバス・アンド・バットヘッド』の様に、ヘヴィメタルが劇中で流れるアニメ作品は存在をしている。


しかしながら、こうした作品と日本におけるヘヴィメタルテイスト、スピリットに溢れた作品は大きく異なる。少なくとも、日曜の朝に放送をされている女児向けアニメでヘヴィメタル的なBGMが流れたり、美少女キャラクターが登場をするアニメ作品の主題歌をヘヴィメタルバンドが手掛けたり、果ては"萌えメタル"なんてサブジャンル(それが決して巨大なムーヴメントではなく、極々局地的なものであったとしても)を生み出してしまう日本のヘヴィメタルシーンは、やはりユニークだし、音楽ファンなら色々と考察をしてみるのもおもしろいと思う。


最後に、これからのヘヴィメタルとアニメに関しての予想だが、文中でも書いた様に、メタルコアやニューメタルの様なラウドなサウンドメロディックスピードメタル調の扇情的なサウンド、この二つは今後もアニメとのクロスオーヴァーが進み、数多くの楽曲がリリースされるのではないかと考える。また、GRANRODEOの商業的成功は、今後の声優ソングにおいても重要な指針となるハズだ。J-POPとは、また異なる音楽シーンにおいて、ヘヴィメタルはシッカリと根付いている。


個人的には、これからのヒストリーにもヘヴィメタルファン、アニメファン、その二つの目線でもっておおいに注目をしていきたいところだ。Stay Heavy Metal\m/