『Hi☆sCoool! セハガール』のおもしろさとサプライズ、菅原そうた監督とB-DASH






自分がライターとして参加をさせていただいている『ウレぴあ総研』様に、新しい記事をアップしていただきました。


■【漫画】HUNTER×HUNTER、ベルセルク、新ゲノム…あの人気作の“最新刊”がなかなか出ない理由


自分が大好きな作品であるにゃんこい!』をピックアップしつつ、漫画についてのアレやコレやを書いております。4年半ぶりにリリースをされた『にゃんこい!』の最新刊、ホントのホントにファンとしては嬉しい限り。掲載メディアである『comicメテオ』でも物語が再び動き出しましたし、何というか『にゃんこい!』ファンとして、こんなに喜ばしいことはないです……!


拙BLOGにお越しをいただきました皆々様におかれましては、お時間がございましたら、ウレぴあ総研での記事もご覧になっていただけると、非常に嬉しいです。更に、『にゃんこい!』最新刊をお買い上げいただいたりなんかしたらもっと嬉しいです。"俺の嫁"こと、住吉加奈子さんもきっと喜ぶと思います。『にゃんこい!』第6巻、何卒、よろしくお願いをいたします!


話は変わって、冬から始まったアニメの新番組。2014年のラストクールがスタートして、早くも一ヶ月が経過をしました。新番組の中で、地味にツボにハマったのが『Hi☆sCoool! セハガール』。ゲーム会社、SEGAコンシューマーゲーム機を擬人化した女の娘達が登場をするメディアミックス企画のテレビアニメ版で、ANIMAXにて絶賛放映中。ANIMAXが観れない我が家では、ニコニコ動画の配信で視聴をしています。そして、これが大変におもしろい…! ということで、今回のエントリでは、本作についてアレやコレやと書いてみたいと思います。




セガのヒストリーとリソースをフル活用したギャグがおもしろい!

『Hi☆sCoool! セハガール』は、セハガガ学園に入学をしたセガサターンドリームキャストメガドライブという三人の女の娘が、卒業に必要な単位を獲得する為にセガの名作ゲームの中に入り込んで、様々な課題に挑むというコメディアニメ。





SEGAの公式製作による"オフィシャルな二次創作""公式の同人"とでも呼ぶべき作風が特徴で、セガの長大なヒストリーと豊潤なリソース……というか数々の"ネタ"を使ってのフリーダムでカオスなギャグが持ち味の作品です。


例えば、第1話と第2話のバーチャファイター回では、ドリームキャスト達がバーチャの世界に入り込んで、ファイター達と戦う……という課題にチャレンジをするのですが、アキラやウルフやラウといったキャラクターは勿論のこと、バーチャには一切関係ない他のゲームキャラクターがいきなり出てきたりします。





ダイナマイト刑事のブルーノ警部補とか。


アンマリ書くとネタバレになるのでなんですが、このバーチャ回、"あのキャラ"の登場には、メチャクチャ笑いました。ちゃんと声優さんも一緒でしたし、アレはズルい! こんな感じで、セガの歴史と作品をおもしろおかしく再構築し、ギャグにしてみせる『Hi☆sCoool! セハガール』。何故か、ゴールデンアックスが必要以上に推されていたりと、かつてのセガファンも現役バリバリのセガ信者も笑えること必至な作品です。短時間で気軽に視聴を出来るのも良いですね。




■飛び道具だけじゃなく、キチンとセガの歴史を消化しているのが良い!

また、この作品で素晴らしいのが、セガをギャグにしてただ茶化すだけではなく、キチンとゲームの内容やキャラクターを消化し、同社のチャレンジ精神や作品達に敬意を持った上で、敢えて破壊的なギャグに仕立て上げている様に感じられるところ。






例えば、主人公達が入学をしたセハガガ学園の校舎には、セガの象徴的キャラクターの一人であるソニック・ザ・ヘッジホッグや、ファンタジーゾーンのオパオパ、『ナイツ』といったモニュメントが飾られ、ハングオンの筐体が置いてある。まさに、セガファンにとっての夢空間が広がっています。


これなんて、かつて、ゲームギアを両親に買ってもらって『ぷよぷよ』にドはまりした結果、大量の電池とACアダプター使用による膨大な電力消費で家計を圧迫したり(エアコンと電子レンジとゲームギアを同時使用する度に、ブレイカーが落ちてました)、学生の頃にスーファミを卒業し次世代機を購入する際に、敢えてプレイステーションを"蹴って"セガサターンを購入したり、ゲームセンターでも"レゲー"として『ファンタジーゾーン』や『ワンダーボーイ』辺りにコインを注ぎ込んでいた自分みたいなかつてのセガユーザーには"グッ"ときてしまうわけなんです。


この辺りのゲーマーにとっての懐かしさとおかしみを同時に刺激してくる感じは、昨年放送をされた深夜ドラマ『ノーコン・キッド 〜ぼくらのゲーム史〜』にも通ずるものがあるな、と思います。ゲームファンなら、カオティックなギャグに笑って、懐かしのあのキャラのトンデもない場面での起用にお腹を抱え、ゲームやハードの"あるあるネタ"に共感し、そして、ノスタルジーを感じることも出来る『Hi☆sCoool! セハガール』。素晴らしいです。




■『Hi☆sCoool! セハガール』を作った菅原そうた監督とは……

そんな『Hi☆sCoool! セハガール』ですが、これだけおもしろいと製作者さんの情報も気になってくるところ。で、調べてみたんですが、ここでも個人的に大きなサプライズが。


『Hi☆sCoool! セハガール』の監督は、CGクリエイターの菅原そうたさん。gdgd妖精sで、これまた破壊的なギャグ描写を連発し、一部のアニメファンに熱狂的に支持されている……という情報は知っていたのですが、『gdgd妖精s』を観ていなかった自分にとっては、セハガールがこの方の3DCGコメディアニメ初体験。フラッシュアニメの『僕の妹は「大阪おかん」』は観ていたんですが、成程、こういうノリが『gdgd妖精s』ファンにウケていたのか、と一人納得。


そんな菅原そうた監督ですが、調べてみたら、何とこの方がパンクバンド、B-DASHのメンバーであるGONGONさんの弟さんで、かつて『SPA!』で連載をされていたカオティックでパンキッシュなギャグ漫画『みんなのトニオちゃん』の作者さんであることが発覚をしました。これなんて、セガサターン世代であると同時に、B-DASHも牽引をしていた2000年代前半のインディーズブーム直撃世代の自分にとっては、物凄い驚きです。




■インディーズブームとB-DASH、そして菅原そうた監督

かつて、セガサターンの"脳天直撃"な洗礼を受け『バーチャロン』や『バーチャコップ』やSNK格ゲーの移植版(拡張ROMを付けて遊ぶヤツ)をバリバリ遊んでいたり、サターンの情報誌に掲載をされているギャルゲー(『同級生2』とか『EVE burst error』とかね!)の紹介ページを見てムラムラしていたアラサー世代のゲームファン。そんなジェネレーションの方で、音楽が好きな方ならば漏れ無く通過したであろう、90年代後半〜2000年代前半のインディーズブーム、パンクブーム。


それまでの「パンク、ハードコア=怖い、暴力的」という固定観念を覆し、カジュアルなファッションで、メロコアスカコアといったキャッチーなリズムとメロディーを持った若者向けのニュースタイルなパンクサウンドは瞬く間に日本の音楽シーンを席巻し、数多くのバンドが登場をしました。


当時活躍をしていたバンドが、今ではアニメや声優さんの音楽を作ったり……と、オタクカルチャーとのクロスオーヴァーも最近では各地で起こっていまして、拙BLOGでも度々ピックアップをしているのですが、そんなインディーズブームの中で人気バンドの一つだったのが菅原そうたさんの実兄、GONGON(当時のステージネームは、YUTA)がVo.&Gt.を務めるB-DASH。現在進行形で、今でもパーマネントな活動を続けているバンドですが、このバンドの最大の特徴が、リズム感重視のメチャクチャで適当な歌詞だと思います。


B-DASH / 恋するPOW>



今では、この手の作詞スタイルだとマキシマムザホルモンが有名ですが、インディーのパンクシーンでこのスタイルを一番最初にやったのは、やっぱりこのバンドだと思います。♪パッチのリフォ〜ム、アスパラのリフォ〜ム、明日蹴りのリフォーにWalkフォーな家〜。




■3D CGを駆使していたB-DASH、そして、『Hi☆sCoool! セハガール』

当時、深夜に放送をされていた人気音楽番組『HANG-OUT』に登場をして、その人気が爆発をしたB-DASH。『HANG-OUT』がプッシュをしていた(……というか、実質、番組の提供会社だった)インディーズレーベルであるLimited Recordsに所属をし、当時のインディーズブームの盛り上がりに大きく貢献をしました。そんなB-DASHの音楽的な特徴が、前述のムチャクチャな歌詞に加えて、CDのジャケットやプロモーションビデオ、グッズにCGを使用していたことです。


B-DASH / 雑草くん>



当時のインディーズブームの渦中にいたメロコアスカコア系のバンドの多くが、パッケージや映像といった音楽以外でバンドのイメージを形作るデザイン面において、まだまだ洗練をされておらず、CDのジャケットはイラストや写真、PVはライヴ映像のコラージュ……といったケースがほとんどだったのに対して、B-DASH(と、THE MAD CAPSULE MARKETS)はCGをフル活用していて、非常に新鮮な作品を生み出していました。そして、そのCGを作っていたのが、GONGONさんの弟さんである菅原そうたさん。B-DASHのCDジャケットに登場をしていた猿の様なCGキャラクター、トニオ、ジャイ太、スネ郎を漫画やアニメで展開し……という活動は、当時のパンクバンドとしては斬新だったと思います。


『HANG-OUT』でB-DASH特集があった際には、SOTAさんもカメラの前に登場をし、兄弟で共演……なんて、場面もありました。それにしても、『HANG-OUT』懐かしい……今、音楽的評価もメチャクチャ高くて、ロックフェスなんかでも大人気のバンドであるthe band apartも、この番組出身だったりしますからね。


菅原そうたさんが描かれた『SPA!』連載漫画の『みんなのトニオちゃん』の単行本(ちなみに、今作収録のエピソードの一つが、後にWeb上で『五億年ボタン』としてカルトな人気が出たりしたそうです)も当時、読んではいたんですが、そこで描かれていた、汚いものとか危ないものが一杯出てくる過激でグロテスクなギャグと、『大阪おかん』や『Hi☆sCoool! セハガール』の可愛らしいキャラクターデザインが自分の中で全く結び付かなくて、今日の今日まで『gdgd妖精s』の菅原そうた監督が、あの"SOTA"さんだとは思いませんでした……。まさか、B-DASHのあのCGキャラクターを作っていたクリエイターさんの作品だったとは……。これも、本作きっかけで知った大きなサプライズ。




■最後に

サターン脳天直撃世代、インディーズブーム直撃世代としては、色々と心に引っ掛かるショートCGアニメ『Hi☆sCoool! セハガール』。セガB-DASHが、こんなところで繋がるとは……と、学生の頃にサターンユーザーで『HANG-OUT』ファンだった自分は大変に驚きました。色々な面で注目作は『Hi☆sCoool! セハガール』。ゲームファンにも、かつてのパンクキッズにもレコメンドをしたくなる作品です。


<Hi☆sCoool! セハガール / セハガガガンバッちゃう!!>