テレビアニメに声優としてゲスト出演するタレントさんに対して思うこと

 
少し前の話題になるのですが、フレッシュプリキュア!の第27話「夏だ!祭りだ!オードリー!!」にて、人気お笑いコンビのオードリーが声優としてゲスト出演をしプリキュアとの共演を果たすというエピソードが放送されました。
 

 
私は「フレッシュプリキュア!」もオードリーも好きなのですが、この情報を一番最初に知った時には流石に不安を感じずにはいられませんでした。
正直、ドキドキしながら放送当日を迎えたのですが、アニメキャラになったオードリーの二人がプリキュアと力を合わせて悪と戦うというファンタジー過ぎる展開が意外にも(?)噛み合っていて、タイトル通り「お祭り」として見る分にはなかなかに楽しめるエピソードだったと思います。
 
ただ、ちょっぴり残念だったのは、オードリーの(というか、主に春日の)持ち味であるキャラクターの濃さが、アニメ化に際して萎縮してしまっていたことです。
動きや顔の表情が伝わる舞台やバラエティー番組とは違ってアニメは観る人に声しか伝わらない上に、声の抑揚や調子の付け方も舞台での演技とは異なるため、本職の声優さん以外のタレントさんがアニメの声優をやると何だかフラットになってしまいがちな気がします。
 

このキャラクターの濃さが、アニメでは伝わらない…。
 
フレッシュプリキュア!」におけるオードリーの場合も然りで、それっていうのは演技力云々というよりは、舞台とアニメという表現の場の違いに依るトコロが大きいではないかと思うのです。
では、アニメ作品においてタレントさんが輝くには何が必要なのか? 安易な、コラボレーションやタイアップで終わらすことなく、タレントさんの起用をアニメに活かすにはどうすればいいのか?
個人的には、それはアニメに映える「個性的でおもしろい声」ではないかと思うのです。
例えば、松竹芸能アメリカザリガニさんや、吉本興業はりけ〜んずさんといったお笑い芸人さんのような。
 
 

■「アメリカザリガニ・柳原」と「獣の奏者エリン


 
凄まじく甲高いキンキン声を持つツッコミの柳原さんと、対照的に「ヌメッ」とした声質で飄々とボケを繰り出す平井さんによる漫才コンビアメリカザリガニアメザリの漫才のおもしろさは、ネタの完成度とテンポの良いボケとツッコミの応酬に加えて、それらを引き立てる両者の個性的な声質の対比も大きなポイントだと思います。
 
■アメリカザリガニ - 漫才 / アニメソング
 
柳原さんの声の高さをフルに活かした、このアニメソングのネタなんかは、正にこのコンビにしかできない漫才ですよね。
 
そして、この声が声優業を行う際にも非常に大きな武器となっているのです。
大のアニメオタク、ゲームオタクでもあるアメザリのお二人は、いくつかのアニメやテレビゲームに声優として出演をしているのですが、どれも非常に使いどころを分かったキャスティングがなされているように思います。
例えば、夏目友人帳では、お二人で「さんと」と「みくり」という妖怪の役でゲストを出演をされているのですが、柳原さんはせっかちで忙しい性格の妖怪、平井さんはノンビリしていて鈍い妖怪…という風に、それぞれの声質に合った声とキャラクターを活かせる役どころを演じられています。
 
特に、柳原さんの甲高い声はアニメとの相性が良いらしく、現在NHKで放送中の獣の奏者エリンでは、コミカルな役どころの「モック」役でレギュラー出演を果たしており、なんとあの藤原啓治さんの相方役を務めています。
 

柳原さんとモック。
 
で、この「モック」というキャラクターの劇中でのオトボケぶりと、柳原さんの声が非常に合っているんですよね。演技力や表現力云々を語る前に、その声質がキャラクターに適合しているという説得力。柳原さん以外に、このキャラクターに合う声はないだろうという強い必然性があるように思うのです。
 
 

■「はりけ〜んず・前田」と「おねがいマイメロディ


 
吉本のオタク系芸人といえば、元祖はこの人たちじゃないか? というくらい、漫才コンビとしてパーマネントな活動とアニメ愛を続けられている、はりけ〜んずさんの場合も同じことが言えると思います。
 
ゲゲゲの鬼太郎では、お二人で漫才師役を演じられていましたが、はりけ〜んずさんといえば、やっぱりボケ役の前田さんが演じられたおねがいマイメロディの「バク」ですよね。
 

ボケ役の前田さんが演じた、「おねがいマイメロディ」の名物キャラクター。バク。
 
ここでも、前田さんのあの凄まじいダミ声がアニメ映え、その声がバクの哀愁に満ちた憎めない敵役というキャラクター造詣に大きく貢献をしていたわけです。
 
アメリカザリガニも、はりけ〜んずも大のアニメ好な芸人さんで、お笑いの人たちの中でも「おたく」の側な人たちです。アニメ好きが高じて声優さんとの交流を持つなど、他のタレントさんに比べてアニメや声優という仕事を理解し熱心に取り組んでいる故に、アニメでのお仕事が上手くいっているのかもしれません。
ただ、そこでも大きな武器になっているのは、やはりその特徴的な「声」です。
アメザリはりけ〜んずの前田さんは、本家の声優さんの演技力に負けないくらいの個性的な声を持っており、お笑いとアニメ声優の演技の仕方の違いとか、タレント云々とかが気にならなくなるくらい、その声がキャラクターやアニメという表現媒体そのものに対して非常にマッチしているように思うのです。
 
 

■まとめ

この他にも例えば、活動弁士である山崎バニラさんや、元ロリータ18号エナポゥのように、本職の声優さん以外のタレントさんやミュージシャンがアニメに出演をする際に、アニメファンに大きな印象を残し、また見ている側に違和感を感じさせないのは、やはり声質に非常に特徴がある人たちであるように思うのです。
いずれもかなり極端な例ですが、本職の声優さん以外のタレントさんがアニメに出演をする場合、声にこのくらいのインパクトと個性がないとアニメという表現媒体に馴染むのは難しいのではないかなというのが、個人的な感想です。
 
二枚目の俳優さんが自身の容姿そのままに、アニメでカッコ良い役を演じられるかというとそうではない。テレビや舞台でおもしろいネタができるお笑い芸人さんが、アニメでおもしろい役ドコロをそのまま演じられるかというとそうでもない。アニメ作品におけるタレントさんとの安易なタイアップやコラボは、出演した側も損をするし、作品のテンポを悪くしてしまうこともあります。ただ、アニメの特性上、個性的な声を持っているタレントさんの場合は、その声によって強い必然性と説得力を持つことができるように思うのです。
 
私にとって、例として名前を挙げたタレントさんたちのアニメでの活躍は、「タレントとアニメ」「タレントと声優」の理想的な形です。
タレントを声優として起用する際に、知名度や時流の人気によって出演者を選ぶのではなく、声優に大切な「声」を第一に考えて人選をすること。それっていうのが、こういう企画において、おもしろいモノを作る一番大事な条件だと思うのですが、どうでしょうか?