「にゃんこい!」におけるコメディの構造と、豊富なリアクション芸の描写について

 

 
テレビアニメにゃんこい!」が、おもしろくてしょうがないです。
 
物語の中心に「女の娘」と「猫」という非常に魅力的過ぎる二つのモチーフを配置している時点で、何とも「ズルいな〜」という感じなのですが、可愛い女の娘と猫が作り出すハッピーな空気がまんまとツボに入ってしまい、毎回楽しんで観ています。
特に、田中敦子さんの声がハマり過ぎ&貫禄あり過ぎのニャムサスさんと、元マンバギャルの住吉加奈子さんがお気に入りのキャラクターですね。
 
とはいえ、勿論「にゃんこい!」の魅力は可愛い女の娘と猫だけではありません。
女の娘や猫たちに翻弄され続ける主人公、潤平の愛すべき振り回されっぷり。そして、作品全体のコメディ感を大いに盛り立てる古典的かつ派手な演出を使ったリアクション描写の数々も本作の大きな魅力になっているように思うのです。
 
今回のエントリでは、その辺りについて自分が思うところを、ちょっと書いてみたいと思います。
 
 

■「にゃんこい!」におけるコメディの構造

にゃんこい!」は、主人公の潤平がフトしたきっかけで神罰を受け、猫の言葉が分かるようになってしまったことから始まるドタバタを描いたコメディ作品なわけですが、そこで目を引くのが「猫」をきっかけにして主人公が非日常へと巻き込まれていくという物語の構成です。
 
にゃんこい!」のように、アニメや漫画などで男性主人公が可愛い女の娘に囲まれているコメディ作品は沢山ありますが、そうした作品の多くは、女の娘との出会いをきっかけにして主人公の日常が瓦解しコメディへとなだれ込んでいくという構成を用いているようにいます。
対して、「にゃんこい!」では、主人公の日常は猫との出会いによって崩壊をしてしまいます。主人公は、猫の神様の怒りをかって呪われてしまい、猫アレルギーなのにも関わらず困っている猫たちのために奔走するハメになってしまう。
 
この物語の骨格を追い掛けるだけだったら、極端な話「にゃんこい!」は女の娘が登場しなくても話が成立する作品ですらあるように思うのです。現に、アニメ版の第一話では主人公と猫たちの間のみで話がドンドン進んでいき、Aパートではメインヒロインである水野楓の登場シーンは僅か30秒ほどしかありません。
 
一見するとモダンなハーレムラブコメに見える「にゃんこい!」ですが、実は物語の構造としてはもっとオーソドックスでオールドスクールなコメディ作品であるように私には感じられます。
 

 
そうしたシンプルなコメディの構造の中で笑いどころになっているのが、主人公の物の見事な巻き込まれっぷりだと思うのです。物語の中で主人公である潤平は徹底的に受身のツッコミ役であり、猫たちの様々なトラブルに、或いはヒロインたちとの騒動に巻き込まれては、ひたすら振り回され続けます。
そして、そんな潤平のユーモラスな振り回され感を盛り上げているのが、劇中での「リアクション芸」とでもいうべき、主人公のリアクションの数々です。
 
 

■豊富なリアクション芸の数々について

にゃんこい!」の第1話と第2話を見ていて特に目についたのが、潤平の「吹き出す」描写です。
 

 
驚いた時やギャグに対して、潤平は口に含んでいた飲み物や唾液(?)を豪快に吹き出して、感情表現とリアクションを行います。
この「吹き出す」という行為は、コメディ映画やテレビのバラエティー番組なんかでも御馴染みの非常に「ベタ」なリアクションの方法論だと言えます。というか、ベタ過ぎて近年では余りテレビでは目にする機会がなくなった表現です。
そんな「ベタ」なリアクションを、「にゃんこい!」は堂々と、しかも大々的に取り上げ何度も反復をさせています。
 
この「吹き出す」表現だけに止まらず、「にゃんこい!」における潤平のリアクションの数々は、とにかく派手で目を引きます。
 
例えば、白眼を向いてのデフォルメ化や、
 

 
身体が燃え尽きて、真っ白になるという演出、
 

 
背景にガラスのようにヒビが入って砕け散ったり、擬音で感情表現を行ったりします。
 

 
これらは、コメディ漫画やアニメ作品において、非常に基本的な演出の方法論なわけですが、「にゃんこい!」におけるそれらのリアクション芸の数々は、実にセンスよく配置されおり、作品内のドタバタ感、スラップスティックなコメディ感覚を高めるのに大きく貢献をしています。
また、背景にヒビを入れたり、グネグネと動かしたり…といったデジタル作画の強みを活かした、動きのある背景描写も、こうした派手な演出に一役買っているように思うのです。
 
勿論、こうした派手なリアクションの演出が行われているのは、主人公である潤平だけではありません。
ヒロインや他のキャラクターにも同様の演出を用いて感情表現やリアクションが行われており、とにかくユーモラスでかしましい作品の雰囲気を観る側に伝えてくれます。
 

 
こうした豊富なリアクションの数々を観ているだけでも、非常に楽しく、飽きることがないです。
 
 

■まとめ

可愛らしい女の娘と猫たちが目立つ「にゃんこい!」ですが、その本来の魅力は案外にシンプルなコメディアニメとしての構造と、愛すべき巻き込まれ型主人公としての潤平の好漢っぷり(また、声を演じてらっしゃる浅沼晋太郎さんのハマリ具合が素晴らしい!)、そして基本に忠実でベタながらも派手なリアクション描写と演出をセンス良く、思いっきりやる潔さにあると思います。
 
コメディとして、本当によくできているアニメ作品だと思うんですよね〜。
 
 

■おまけ


 
ニコニコ動画とか、初号機暴走とか、第1話では押さえ気味だったオタク系のネタが第2話ではちょいちょい顔を出していて、如何にも川口敬一郎監督の仕事だよな〜と再確認。
 
あと、次回予告前の「今日のにゃんコマ」。
 

 
「こんな○○はイヤだ!」って、最早大喜利なんかの定型文になっているんで元ネタ云々を言うのは意味がないことかもしれませんが、自分の世代にとってはやっぱり天才・たけしの元気が出るテレビ!!なわけで、この辺でもバラエティー感覚やお笑いの要素を強く意識して、コメディを作っていっているのかな〜なんて思いました。
 
 
 
<関連エントリ>
■アニメ版「にゃんこい!」における、ふり幅の大きなBGMのおもしろさ