昨年のエロ漫画を大きく振り返って〜2009年度、私的成年コミックベスト10〜

tunderealrovski2010-01-11

 
遅ればせながら昨年のエロ漫画のベスト10を書き記しておこうと思います。
昨年買ったエロ漫画の中から、特に印象に残った作品を10冊挙げさせていただきます。
 
 

工藤洋「パイ×クラ」(ティーアイネット


 
自分とってのオールタイム・フェイヴァリットな作家さんである工藤洋先生の最新作。
デビュー作である「SURVIVAL GIRL」から更にグレードアップした、こだわりのおっぱい描写とパワフルで可愛い女の娘の姿が楽しめる全おっぱい好きは必読の一冊です。
もう、この方の描かれる「性」に対する肯定的で朗らかな明るさと、そこから生まれる誠実さが大好きです!
昨年は、主戦場としているティーアイネット「BUSTER COMIC」に加えて、双葉社の「メンズヤング」の増刊号メンズヤングスペシャル雷」への登場、「COMIC RUSH」での一般作品デビューと、活躍の場を広げられたことで新作をコンスタントに読めたのもファンとして嬉しかったですね。
エネルギッシュなエロとおっぱいが躍動するティーアイネットでの諸作品に加えて、「メンズヤング雷」での若者の恋愛感情を丁寧に描いた作品も印象深かったです。これらも作品、いつの日か単行本化希望!
 
 

■くりから「ぱい☆ずり」(キルタイムコミュニケーション


 
昨年は、有馬侭先生、シャチカマボコ先生、フエタキシ先生、大友卓二先生、乃良紳二先生…と素晴らしい巨乳漫画家さんの単行本デビューが続いたわけなんですが、そんな中から一冊選んだのがコレです。
タイトルから完全におっぱい特化型のエロ漫画。キルタイムらしいファンタジックなモチーフを用いながらも、徹底的に巨乳にこだわり抜いたために、最早セックス描写すらない短編がチラホラ混在している様が非常に清々しい。
本自体のヴォリュームの少なさがやや弱点ではありますが、それを補って余りある、おっぱい描写の突き抜け具合が面白い作品でした。
 
 

山田ショウジ「Sweet TRAP」(ヒット出版)


 
井上よしひさ先生や、ゴージャス宝田先生、岡田コウ先生といったエロ漫画の中でストーリーを「読ませる」作家さんが多いヒット出版の「COMIC阿口云掲載陣の中で、徹底的にエロの実用性に特化した作風で、逆に確かな個性を発揮されている作者さんの二冊目。
時代性にアジャストした萌え絵柄に、丸いおっぱいとお尻が強調されたグラマーなヒロイン陣の肉体が躍動する作品群に加えて、ロリ漫画に片足突っ込んだ「コミックino」掲載作品一遍も加えた短編集。
とにかく、エロに積極的なお姉さんから、ロリっ娘まで様々なタイプの女の娘を、あっけらかんと明るくエッチに描くことができる器用さと、作品を矢継ぎ早に送り出せる描画の早さが魅力的。背景や台詞回しにハートマークを多用することによって生まれる独特の多幸感も気持ち良いです。
 
 

田倉まひろ「たくらまかん動物園」(ヒット出版)


 
モンスターやロボットなど異形の存在であるビザールなヒロイン像を、独特のオフビートなギャグを絡めながら描くことに定評がある田倉まひろ先生。2冊目の単行本である本作も、そうした魅力的なヒロインと田倉ワールドがチアフルに展開されているのですが、やはり白眉は連作である「カスタムゾンビちゃん」
これを初めて読んだ時は、ロメロ版のオリジナル「DAWN OF THE DEAD」とルシオ・フルチの「サンゲリア」とエドガー・ライトの「ショーン・オブ・ザ・デッド」を敬愛して止まないイチゾンビ映画ファンとして、「あぁ、遂に、この時代が来たか」と涙、涙。全ソンビファンは必読の作品でしょう。
「ゾンビ」というキャラ設定を活かしたムチャクチャ…かつ痛みや暗さが全く感じさせないという不思議なセンスによるエッチ描写はユニークというよりも最早「奇想」の領域。この特異な作家性は、素晴らしいです。
 
 

青木幹治「さよなら、おっぱい」(コアマガジン


 
こちらも昨年単行本デビュー組である青木幹治先生。自分は「さよなら」っていう日本語に含まれているエモーショナルな語感が大好きで、BLOGのタイトルにも使っていたりするんですが、単行本のタイトルが「さよなら、おっぱい」ですよ。こんな切な過ぎる響きを持ったエロ漫画ありますか!?
フェチズム溢れるコスプレ要素を絡めながら、高校〜大学〜そして、大学卒業後の未来に至る迄の、あるカップルの愛の変遷を描いた「節子さん」シリーズや、性に対してセンシティヴなお年頃の男女の姿を描いた短編作の数々も素晴らしいのですが、やはり目を引くのは「貧乳」「巨乳」に限らず「おっぱい」に対してコンプレックスを持っているヒロインの姿が描かれる「お姉ちゃんの手を取って」や「ぺたり」といった作品群。
タイトルからして溢れまくっているエモーションの通り、おっぱいにまつわる繊細な男女の心の機微が見事に表現をされており、読み手のハートを鷲掴みにしてくれます。
 
 

戦国くん「PRETTY COOL」(茜新社


 
「好きな相手に自分の裸を透視させてしまう」という不思議な超能力を持ったヒロイン薬袋さんと、彼女と恋に落ちた各務くんの恋の行方と成長を描く長編作。
男性主人公である各務くんの徹底した一人称視点とモノローグの効果的な使用、そして「超能力」という飛び道具的な劇中設定に託して、恋愛の不安や困難、そしてそれらを乗り越えた後の圧倒的な多幸感が見事に描かれています。
以前は、成年漫画の世界でも「必ず死人が出るような」ファンタジー作を中心に描いていた作者が、突如世に放った異色のラブコメ。従来との作品との乖離は、RADIOHEAD「OK Computer」と「Kid.A」との間にある距離感にすら匹敵しますが、凄まじい完成度を誇る作品に仕上がっています。劇中に散りばめられた映画ネタ(「ブレードランナー」ネタ)の数々も楽しかった。
戦国くん先生は、この後COMIC TENMAで本作の番外編「ぷりくる」を描いた後、現在もラブコメ作品「はうりんぐ」を連載中。こちらもオススメです。
 
 

弐駆緒「凛と都古のも〜っと! 胸キュンDIARY」(オークス


 
読者からの投稿によってシチュエーションやヒロインを決定し、ストーリーを展開させていく…という連載方法で「COMIC XO」の長寿作となった「凛と都古」シリーズの最終巻。
その特殊な作劇と連載方法ゆえ、キャラデザは初期から比べると完全に異なってしまっているし、ストーリーも破綻してしまっているので、正直グロテスクといえばグロテスクな単行本ではあるのですが、それ故にその異形性が目を惹きます。
何より、中途で休載を挟みながらも4年間もの長期に渡って続いたという事実、そしてエロ漫画誌だからこそ許されたであろうその存在意義を考えた時に、やはり本作は2009年を代表するエロ漫画として選出をする価値があるように思います。
「実験」と称して、果てしなくフリーキーなエロ描写が繰り広げられる広輪凪先生の「エロきゅん・実験室」と並んで、昨年のエロ漫画界における「COMIC XO」の特異な立ち位置を象徴する作品。
 
 

大孛輝はな「もっと&er Girls」(茜新社


 
大孛輝はな(本当は、「大孛輝*はな」と名前の間に「*」が入るのが正しいペンネームなのですが、ここでは「はてなキーワード」の表記に合わせていただきます)先生の二冊目の作品集です。
巨乳好きである自分に取って、どうしてもロリ漫画は目が届かなかったり、購入が後に後になってしまいがちなのですが、それでも「絵が圧倒的に上手い(=雨がっぱ少女群先生)」「ギャグがおもしろい(=ガビョ布先生)」「趣味である音楽ネタが作品に入っている(=鬼束直先生、東山翔先生)」といった、何かしらの強烈なフックがあると例え性的な嗜好との間にズレがあっても大いに求心力を持ちえます。
このエロの好みだけでなく、その他の部分でも楽しむことができる、というのが自分がエロ漫画が好きな理由の一つでもあるのですが、そういう意味ではこの大孛輝はな先生が描く少女漫画的世界というのは、私の心を惹きつけて止みません。
実は、これ実費で購入したものではなく、最初は読者プレゼントで当選したものだったのですが、余りにも良かったのでその後自分でキチンと一冊、あと前作も購入をさせていただきました。
 
 

パルコ長嶋「ふたなリッチ!ぷれみあむ」(一水社


 
BLOGに載せる際に修正を施してしまったために、表紙からは何が何だか分からなくなってしまっていますが、タイトル通り男性器の生えた女性、つまりふたなりをヒロインに据えた単行本です。
理由も何もなく、ふたなりの女性が当たり前にいる(そして、そうした女性が他の女性とセックスをするのも当たり前になっている)世界で繰り広げられる痴態を描いた作品集で、その世界観もユニークでおもしろい部分ではあるのですが、個人的に興味深く思うのが、この単行本の作者であるパルコ長嶋先生が女性作家であり、同人や商業誌で数多くのBL作品や、やおい作品を描いているというトピックだったりします。
この作品の中で描かれる「ふたなり」の描写は、男性視点からの一方的な快楽加速装置としての存在意義とはやや異なった印象を受けます。
作者さんの漫画家としての出自や作家性と同様に、どこか不思議な感じのするエロ漫画。読むたびに、不思議な「性」というものについて考えさせられてしまう一冊です。
 
 

まよねーず。「少女型性処理用肉便器」(ティーアイネット


 
東京三世社での活動後、工藤洋先生と同じく「BUSTER COMIC」で連載をされていた漫画家さんのテーアイネット一発目。
まよねーず。(「伊豆まよね」名義でも活動中)先生の描く、女性が徹底的に「モノ」として扱われる作品世界に圧倒されます。
自分は成年漫画は少し変わっていたり、ちょっと特殊な引きがあるような作品が好きだったりするのですが、このエントリで用いてきたような「ビザール」「オフビート」「フリーキー」「特異」「異色」「異形」「不思議」…といった形容詞を使いきっても未だ捉えることができない、刺激的な個性がある作品です。
シュールかつハードな設定の中、独自の倫理観や職業意識で暴力的な性に携わる女性の姿と、反対に徹底的に無機質で空虚な世界、そしてそこに存在する男性性の姿は、この作者さんしか描き切れない類のものでしょう。
世の「擬人化ブーム」ですらも、自身の作風に取り込んで見る者に強烈な印象を残す短編「みんな生きてるんだ」が特にお気に入りです。
一般的には陵辱色の強いと思われている「BUSTER COMIC」ではありますが、まよねーず。先生のような個性派作家や、工藤洋先生のように明るくチアフルな世界観を持つ漫画家さん、また、少女漫画的なセンチメンタルを「BUSTER COMIC」に持ち込んだ異例の新人作家、オカムラケースケ先生など、おもしろい漫画家さんが沢山いらっしゃるのでエロ漫画好きは一読をオススメいたしますよ。
 
 

■まとめ

私の2009年度ベスト10は、こんな感じです。年末年始の体調不良のため、若干エントリ作成が遅れてしまいましたが、昨年も多様な作品と出会うことができ、イチエロ漫画好きとして非常に幸せでした。
今年も、また色々とおもしろい作品に出会えれば良いな〜と思っております。取り合えず、おっぱい好きとしては今年出版が予定されている、アスヒロ先生と井硲六郎先生の初単行本が楽しみですね。
 
最後に、番外編としてベスト10には入りきれませんでしたが印象に残った作品を二つ。
 

 
きあい猫先生の「ベスト・オブ・きあい猫と、奇械田零士朗先生の「とある見習い魔法少年の日常」の二冊です。
それぞれ、再発本、ショタ色の強い成年漫画ということでベスト10の選考からは外しましたが、どちらもとてもおもしろかったです。特に前者は、マニアックな性描写を用いた過去作をアーカイヴ的にサルベージしたという意味において、非常に意味のある再発であったと思っています。
こういったちょっと特殊な性嗜好も表現できるエロ漫画という世界が、やっぱり私は大好きですね。
 
 
 
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