アニメに出てくるジャガイモの皮剥きシーンについて考えてみる

 

 
ハピネスチャージプリキュア!第6話「リボンの優しさ!! 料理って愛情なんです!!」を観ていて、ちょっと気になったトピックがあったので、アレやコレやと。
 
 

■「ハピネスチャージプリキュア!」のジャガイモ

「リボンの優しさ!! 料理って愛情なんです!!」は、キュアプリンセスこと白雪ひめと彼女のお世話係であるリボンを主役に据えたエピソード。リボンが作った料理にわがまま放題な難癖を付けたひめがリボンと大喧嘩。そんな二人が仲直りをするまでが話の本筋なのだけれど、その過程で非常に大きなストーリー上の役割を担っているのが、ひめのクラスメイトであるゆうゆうのお弁当屋さん「大森ごはん」だ。空腹の余り、ゆうゆうに助けを求める姫。優しいゆうゆうは、ひめにお店のお弁当をご馳走し、ひめも恩返しに「大森ごはん」でお手伝いをしようとする。
 

 
そんなひめに与えられた仕事というのが、大量のジャガイモの皮剥き。地味で単調な作業にウンザリするひめに、ゆうゆうは「料理において地味で大変な下ごしらえこそが大事であること」「そんな大変な作業をやってくれる作り手の気持を考えること」といった料理を作る、食べる上で最も大事な心掛けについて諭す。リボンの自分に対する愛情に、ようやく気付くひめ。そこに現れたナマケルダ達を退け、無事にひめとリボンは仲直り…というお話で、「プリキュア」のメイン視聴者である子どもたちへのメッセージ性に溢れた非常に良いエピソードだったように思う。いい歳こいたオッサンの自分だけれど、こういう食べ物にまつわる"いー話"は大好きだ。
 
ところで、そういったエピソードの本筋とは別に自分が気になったのが、ジャガイモの存在。この話では、"地味で単調な仕事"としてジャガイモの皮剥きが描かれる。思えば、アニメや映画なんかで描かれるジャガイモの皮剥きという作業は、こうした"地味に辛い仕事""下っ端の仕事"の仕事として描写されることが多い気がする。
 
 

■アニメで描かれるジャガイモの皮剥きは地味で辛い作業?


 
直近の例でいえば、世界征服〜謀略のズヴィズダー〜の第3話「煙に巻いて去りぬ」の冒頭で、組織のヒエラルキーの最下層にいる明日汰とヤスの調理シーンでジャガイモの皮剥きが描かれていた。このシーンでは、派手で豪快な悪事に憧れるも、所詮は組織の中でペーペーの平戦闘員に過ぎないヤスの"理想"と"現実"の強烈なギャップとして、野菜の皮剥きをするシーンが登場をする。"下働き"の象徴としての根菜の下ごしらえ、大量の野菜を前にしての地味〜で単調な作業は、ヤスが生きる現実そのもののメタファーでもあるのだろう。
 
また、アニメ作品におけるジャガイモの皮剥きで印象的なシーンといえば、ストライクウィッチーズ2の第4話「かたい、はやい、ものすご〜い」でのそれも挙げておきたい。
 

 
このエピソードでは、軍規規範を犯したバルクホルンへの処罰としてジャガイモの皮剥きが命じられる…というシークエンスが存在をする。もはや、調理ではなく"罰"である。自分は経験がないのだけれど、大量のジャガイモの皮剥きというのは、そんなに大変なものなのだろうか?
 
この様に、"大変な作業""辛い仕事"として描かれることの多いジャガイモの皮剥き。では、何故、そうした場面でこの作業がチョイスされるのかを少し考えてみたい。
 
先ず、見た目や作業の地味さに加えて、まな板を使わずに済み、調理中の音がほとんどしないというのが大きなポイントなのだろう。「ハピネスチャージプリキュア!」や「世界征服〜謀略のズヴィズダー〜」を観れば分かるように、ジャガイモの皮剥きのシーンでは、作業をする二人の会話劇でストーリーが展開をしていく。こういうシーンでは、キャベツの千切りやトマトの湯剥き…といった音や大きなアクションが派生する作業よりも、野菜の皮剥きのように静かな動きの方が作劇を行いやすい。地味で単調だからこそ、会話劇が活きてくる
 
もう一つは、この根菜の皮剥きというのがほとんどテクニックを有しない…誰でも簡単に出来る作業というのもアニメ作品にジャガイモがよく登場をする理由の一つになっているのではないかと思う。前述の「ハピネスチャージプリキュア!」のエピソードで、料理にケチをつけて家を飛び出したひめ。そんな彼女でも直ぐにお手伝いが出来る"調理"。それがジャガイモの皮剥き。意外にも作劇において色々と便利なアクションなのだなと妙な感心をしてしまう。
 
 

■「天空の城ラピュタ」のジャガイモの皮剥き

そして、アニメ作品におけるジャガイモの皮剥きといえば、この作品のこのシーンも決して忘れることができない。宮崎駿監督の天空の城ラピュタで、海賊のドーラ一家の男衆がシータの料理をお手伝いする場面。
 

 
シータに惚れたルイが厨房にいる彼女の元を訪れるが、厨房内には既に抜け駆けをした同僚がいて、更にそこにライバルが現れ、あれよあれよという間に厨房内はてんやわんやに…というコミカルなシーンだが、ここでもジャガイモの皮剥きが描かれている。
 
恐らくは、自分たちだけでは掃除も洗濯も炊事もままならないむくつけき男達でも出来る作業として、シータが彼に与えたのがジャガイモの処理だったのだろう。ここでも、シータへの恋心を胸を喜び勇んで彼女の元を訪れたであろう彼の心と、作業の地味さのギャップが何とも言えないおかしみを生み出している。
 

 
ハピネスチャージプリキュア!」のジャガイモが余りにも印象的だった為に、「天空の城ラピュタ」まで遡りながら色々と考えてみたが、とにかく地味で大変な仕事だが、だからこそ様々なドラマを生み出せるジャガイモの皮剥き。こうして色々と考えてみると、なかなかに深い部分があるなと思わされるのだ。
 
 
 
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