観れば、秋葉原に行きたくなるアニメ! 『AKIBA'S TRIP』のカルチャーな魅力






ウレぴあ総研』様で連載をさせていただいているアニソンレビュー企画の第2回が更新されました。


■【連載】特撮ソング界のレジェンドとコラボした『AKIBA´S TRIP』OPテーマ「一件落着ゴ用心/イヤホンズ」絶大なインパクトの発生源に迫る


今回は、『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』オープニング主題歌の『一件落着ゴ用心』を取り上げています。イヤホンズ(と特別ゲストの串田アキラさん)が歌うこの曲。上記の記事でも言及をさせていただいた通り、作曲は横山克さん、作詞は只野菜摘さんという名コンビによる楽曲です。


イヤホンズ / 一件落着ゴ用心



実は、このお二方、「ももいろクローバー(Z)」の『Chai Maxx』や『Dの純情』といった楽曲を手掛けたコンビでもあります。それを踏まえて、この曲を聴いてみると、成る程、音のニュアンスとしては正統派声優アイドルソング(例えば、スフィアなど)よりも、J-POPアイドル……それも、「ももいろクローバーZ」や「でんぱ組.inc」のような良い意味でハチャメチャでミクスチャーロック的な感覚を有したナンバーを持ち味とするアイドルグループの楽曲に近しいニュアンスを感じました。


所謂「ライブアイドル」に関わっているクリエイターとも製作者が重なることも多いアニソン、声ソンの世界。その相互間の距離の近さを考える上でも、『一件落着ゴ用心』は、非常におもしろい楽曲だと思います。


そもそもイヤホンズというユニット自体が、他の声優アイドルユニットとは、また方向性の異なる活動やサウンドが魅力となっていて、今後も目が離せないなぁと思うのです。


……というのが、冒頭に挙げたレビューの追記。ここからは、そんな『一件落着ゴ用心』がオープニングを飾る『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』の魅力についてアレやコレやと書かせていただきます!




■個人的に、今期の注目作『AKIBA'S TRIP』!

『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』は、今期のアニメ作品の中でも、特に楽しんで観ている一本。


未見の方に内容を簡単に解説させていただくと、本作は、古来から街を守護する善と悪の勢力(劇中では「バグリモノ」と呼称されています)が存在している世界観の中で、主人公とヒロインが悪の組織と秋葉原で戦いを繰り広げる……という比較的オーソドックスかつオールドスクールな「善対悪」のバトルストーリーが基盤となっている作品です。


ただし、衣服を剥ぎ取って素っ裸にすることで相手を消滅させる(或いは、バグリモノに意識を乗っ取られていた人間を元に戻すことができる)という、一風……否、かなり奇抜な敵の倒し方が採用されています。


この「脱衣バトル」という要素が、時にギャグに、時にお色気描写となって作品の独自性を際立たせる……そんなユニークな描写がポイントとなっているアニメなのです。


戦闘シーンの抜けの良さに比例するように、キャラクターデザインもポップで、色彩もカラフル。作中の各シークエンスも全体的にハイテンションな作りで、変に難しいことを考えなくてもシンプルに楽しむことができる、そういう作品だと思います。




■雑多なカルチャーを内包する"アキバ"描写の上手さ

とにかく全体的にポップな『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』ですが、その高いテンションに加えて、作品の魅力に繋がっているのが秋葉原の描き方です。


劇中では、実在の秋葉原の街並みが再現され、実在の店舗が数多く登場します。それだけでも見応えがあるのですが、更に、おもしろいのが各エピソードで様々な「アキバカルチャー」が取り上げられ、物語のメインモチーフになっている点です。


主人公とヒロインの邂逅を描き、作品の導入部となる第1話では、特撮ヒーローのフィギュアやコスプレが、続く第2話では、エアガンなどのミリオタ文化圏のアイテムが重要なモチーフとして登場。


第3話ではオーディオと所謂「ライブアイドル(地下アイドル)」、更に、アダルトビデオというカルチャーをテーマに話が展開。第4話では、電波兵器を武器に秋葉原を支配しようとする敵を打破する為に、アマチュア無線が大活躍をします。


フィギュア、コスプレ、ミリタリー、オーディオ、アイドル、AV、アマチュア無線……実に様々なアキバカルチャーが各エピソード毎に描かれ、それを基にストーリーが進んでいく。まさに、秋葉原という街の奥深さ、おもしろさがドラマの中心になっているのです。




■"アキバカルチャー"の猥雑さこそ、本作の魅力!

「アキバ」がブームになった際に、マスメディアの取り上げ方がアニメ文化(と、メイド文化)に偏りがちだったことに加えて、2000年代以降に急激にアニメショップが増加した為、現在では、どうしても「二次元の街」といったイメージが強い秋葉原ではありますが、そもそもは、電気街であり、そこから雑多な趣味や文化が入り交じる街だったハズです。


アニメやゲーム、漫画は言わずもがな、AVやエロ本、アダルトグッズなどの生々しい三次元のエロがあり、ライブアイドルがいて、ミリタリーショップが立ち並び、高級オーディオの専門店があって、門外漢には用途不明の無線の機器が店頭で売られている。


そういった様々な文化を各話毎に切り取り、ポップなストーリーに絡めて描いてみせる、これが『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』のおもしろいポイントだと思うのです。


自分みたいな秋葉原に対して余りディープな知識を持たない(ちなみに、自分が一番アキバに出入りしていた頃は、アキバに対して「エロゲーの街」というイメージがありました)人間でもこれだけおもしろいのですから、ディープにアキバに入り浸っている方なら、もっともっと深い部分で楽しむ、或いは、共感できる作品なのではないかな、と。




■そんなこんなで、アイドルファンにオススメしたい本作!

そういう風に考えてみると、『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』は、非常に間口の広い作品という言い方ができるかもしれません。まさに、アキバに集うあらゆるファン、マニア層に観ていただきたい作品なのです。


中でも、自分がオススメをしたいのがアイドルファン! アイドルファンにこそ、本作は観ていただきたい! ……というのが、冒頭の『一件落着ゴ用心』のレビューにも繋がるのですが、本作でメインキャラクターを演じているイヤホンズによる楽曲が本当に素晴らしいのです。


イヤホンズ / サンキトウセン!>



こちらも、イヤホンズの新曲。本作では、各話毎にエンディングが変化するというギミックが仕掛けられているのですが、イヤホンズは自身の名義と、更に、彼女たちが演じる劇中アイドルグループ「まにあ〜ず」という二つの名義で、この曲を歌い分けています。


こちらも曲の進行毎にラップに演歌……とメロディがドラマティックかつダイナミックに変化する楽曲。やはり、今時のJ-POPアイドルの楽曲におけるミクスチャー的な音作りとの近似性を感じさせます。アイドルファンが聴いても楽しめる、アイドルファンにこそ聴いていただきたいアニソンです。


思えば、アイドルユニットのメンバーが揃って主演を務めているという点でも、「アイドル映画」「アイドルドラマ」の王道を突き進んでいますし、本作もまた昨今、人気を集めている「アイドルアニメ」としてカウントしてみるのもアリじゃないかと思うんですね。




■おまけ

本作の主人公、伝木凱(でんきがい)タモツくん。「直ぐに興味が移り変わる」「しかし、一度、興味を持ったものには徹底的に向かい合う情熱の持ち主」「あらゆるオタク知識に対して、一定以上のリテラシーを持つ博識っぷり」「散財の豪快さ」「異常な程の身体の頑丈さ」というキャラクター造形に、どこかで既視感が……と思ったのですが……。



































多分、この人のことを思い出したんだと思います。