アニメのOP曲を聴くのはアニメファンだ!キャラソンを聴くのは訓練されたアニメファンだ!

 
かんなぎ」第十幕「カラオケ戦士マイク貴子」の回が、貴子先輩のお尻的な意味で、本当に素晴らしくてですね。多分、ビデオで50回ぐらい見直していると思うんですが、
 
<貴子先輩の尻>

 
あのやたらにお尻が強調された「貴子ダンス」や、「ハロー大豆の歌」がツボ過ぎて、何度見ても全然飽きないです。…中毒かね?
 
「カラオケBOX」という舞台設定を巧みに利用し、「らき☆すた」のパロディー(というか、「らき☆すた」世界とのクロスオーバー)を散りばめたこと、またそもそも原作ではオマケ、番外編的な扱いに過ぎなかった「美術部のメンバー&ナギが、ただカラオケでウダウダ時間を過ごすだけ」というエピソードを、わざわざ30分のアニメに仕立て上げたことで、ネタ的な扱いをされることが多い第10話ですが、各キャラクターの歌や踊りが劇中で繰り広げられる「カラオケ戦士マイク貴子」は、原作の中でも、アニメ化を行う必然性や利点が、実はとても高いエピソードだったと言えるのではないでしょうか?
 
原作では、「各キャラクターの選曲センスや歌唱力」「歌詞のナンセンスさ」が笑いどころになっているわけですが、アニメ版だと、これにメロディーが付き、更には声優さんが実際に歌詞を歌うわけで、この破壊力は相当なものです。壮絶な…色気ぇ〜
 
こういう「漫画 → アニメ」という変換の過程で、「アニメでしかできないこと」を盛り込むのが「かんなぎ」っていう作品は凄く上手いと思うんですよね。第十幕は、そういった醍醐味がもっとも色濃く出た回ではないかと思います。貴子先輩の尻とか、貴子先輩のケツとか、貴子先輩のヒップとか。
 
そんなTakako's Hip Addictionな自分ですが、こうなってくると楽しみなのが、このエピソードで流れた歌を収録したキャラソンアルバムの発売です。出るよね? きっと出るよね? 出てくれ、頼むから!
 
…でも、キャラソンを買うのって、実は視聴者として結構ハードルが高い行為ですよね。普通にアニメを見ているだけでは、多分キャラソンって購入するところまで行かないと思うんですよ。
 
 

■キャラソンと、アニメのOP、ED

大抵の場合、キャラソンは、アニメのOPやEDと違って、アニメの本編で流れるものではありません。
 
涼宮ハルヒの憂鬱」の「恋のミクル伝説」や「God knows…」のように、「キャラクターが歌う歌」を劇中で巧みに織り込んだアニメも、最近ではよく見かけるようになりましたが、(あ、でも「ハルヒ」における、より純粋なキャラソンである「見つけてHappy Life」「パラレルDays」みたいな曲は劇中では使われてないのか)基本的に、「キャラソン」ってアニメ本編の「外」にあるものだと思うんですよ。
 
ガンダムOO」のOPを聴いて、ラルクの新譜を買うとか、「鋼の錬金術師」を見てASIAN KUNG-FU GENERATIONのファンになる、これは普通です。OPやEDは、アニメを見ていたら、自然に耳に入ってくるものですし、「いい曲だな」と思ったら、購入意欲が沸いて来るのは当然のことです。ラルクアジカンのような、J-POPのアーティストの場合は特に、楽曲をアニメの主題歌にするタイアップは、CMとしての側面も強いですからね。
 
が、「好きになったアニメのキャラソンを買う」という行為は、より積極性が求められます。多くのキャラソンは、普通にアニメを見ているだけでは、耳に入ってきづらいわけですし、発売情報もアニメや声優雑誌にしか載らないことが多いので、情報を知ろうと思ったら、オタク的なアンテナと、「知ろう」とする能動的な態度が必要になります。
 
僕なんて、未だにアニメを見ていても「キャラソン」が出てることに気付かない作品とかありますよ…。
 
 

■キャラソンは、キャラクターじゃなくて、声優さんの歌?

僕の周囲に、「涼宮ハルヒの憂鬱」に出てくる「鶴屋さん」っていうキャラクターを凄く好きな友達がいるんですが、その人は特にアニメ好きっていうわけではなくて、声優さんやアニメスタッフの知識をほとんど知らず、凄くフラットな状態で「涼宮ハルヒの憂鬱」というアニメを見ていたんです。
そんな人がどういうわけか、鶴屋さんが、可愛い!」って言い出して、アニメをめがっさ熱心に見たり、ガチャポンやぷちねんどろいどみたいなフィギュアを買ったりしていたんですが、ある日とうとう鶴屋さんのキャラクターソングまで買いに行ったんですよ。しかも、地元のanimateに! 普段は、絶対そんなトコ行かないのに、その人!
  
あんまり声優の知識がない人が、キャラソン聞いた時の感想ってどんなもんなんだろう? って思って、「どうだった?」って聞いてみたんですね。そしたら、その友達に言われたのが、
 
「声だけだと、流石にキツかった…」と。
 
その時は僕も、「あ〜、アレは鶴屋さんのCDじゃないもんね。松岡由貴さんのCDだもんね」って言ったんですけど、この友達の言ってることって、もっともだと思うんですよ。当たり前なんですが、テレビアニメっていうのは、動画と音声っていう二つの要素があって成立するものだと思うんですね。それは、そのアニメに登場するキャラクターにも言えることです。
 
例えば、鶴屋さんの場合は、まず原作の小説で、谷川流さんが作ったキャラクターの設定と、いとうのいぢさんが描いた元の絵があって、それを京都アニメーションが動画にし、そこに声優である松岡由貴さんが声をあてる。こうして、アニメ版の鶴屋さんは出来上がるわけです。
 
で、キャラクターソングの場合は、ジャケットのイラストはあるものの、マテリアルとしての比重の大半は音声が占めているので、元になったアニメを見ているだけでは、その歌にキャラクターを投影することは、なかなか難しいと思います。
 
むしろ、キャラソンの楽しみどころは、声優さんの声や歌唱力。あるいは、キャラソンという原作のストーリーのニュアンスを含めるには、あまりにも容量が少ない表現分野に、如何に元となっているキャラクターの要素、魅力を詰め込むか、という作詞者、作曲家のセンスや技術にあると思います。
 
そして、そうした要素におもしろさを見出すためには、相応の知識量が必要となりますし、一枚のイラストから「萌え」を感じられるような、おたく的な想像力が必要になってきます。また、音声に比重が置かれているので、キャラソンを購入する人は、そのキャラクターというよりは、その声を演じていらっしゃる声優さんそのものに魅力を感じている場合が多いのではないでしょうか?
 
これが、声優さんがキャラクターの声で物語に沿って掛け合いを行うドラマCDの場合、背景に原作に準拠したストーリー(原作のパラレルワールド的な、遊び心たっぷりのドラマCDも多いですが)があったりするので、まだ物語に入っていくことが容易なわけですが、音楽だけだとちょっと難しい。
 
友人の「声だけだと、流石にキツかった…」という言葉は、オタク的な知識や楽しむポイントを知らず、フラットにキャラソンに接した際に、CDに収録してある歌にキャラクターを投影することが出来なかったっていう凄く正直な感想だと思うんですね。
 
 

■キャラソンにおける、キャラクターの「キャラブレ」

また、キャラソンにおいて、歌詞や曲調でキャラクターを表現しようとした場合、キャラクター性の強調が過剰になる場合や、キャラクターがブレる場合が出てきます。
 
例えば、「あずまんが大王」に登場する水原暦(よみ)というキャラクターは、勉強も運動もできる娘ですが、歌は下手(でも、歌うのは好き)という風に、原作でもアニメでも描かれているんです。で、「あずまんが大王」も、アニメ化された際に、各キャラクターのキャラソンが作られていまして、よみもCDが出ているんですが…。
  
このCDに収録されている「それぞれのOne way」っていう曲が、親友である智をとても大事にしていて、気にかけているっていう内容で、ホントに歌詞は素晴らしいんですけど、声を演じていらっしゃるのが田中理恵さんなので、凄く歌が上手いんですよ!
 
今年のM-1予選敗退時における笑い飯の西田さんではありませんが、よみファンとしては、
 
「おもてたんとちがーう!!」
 
って言いたくなるくらいの上手さ!
 
よみのキャラソンは、かなり極端な例ですが、曲調や歌唱法、歌詞などが、聴く人によっては、キャラクターに対する思い入れとの間に齟齬が生じる場合も出てくる場合もあるでしょう。
で、そこに違和感を感じるかどうかっていうのは、もしかしたら同人誌とかのパロディーを受け入れられるか否かっていうのに近いと思うんですよ。あと、やはり声優さんとキャラクターを切り離して考えられるかっていう話になってくると思うんですが…。
 
 

■最近のアニメのOP、EDのアレはキャラソン? 声優ソング?

つまり、キャラソンを聴くということは、「作品に対する情報のアンテナと積極性を持つこと」「声優や製作スタッフの知識」「キャラクターがぶれても、許容できる寛容さ」っていう三つのオタク的な感性や知識、態度が予め必要だということです。
 
アニメ本編を見ているだけでは、ここまでオタク的な思考法を求められることって少ないと思うんですよ。これは、一般のアニメ視聴者には、やっぱりハードルが高い要求です。(もちろん、どっちが優れているとか、劣っているっていうわけではないですよ!)
 
こうしたハードルを下げるためでしょうか? いわゆる萌えアニメの誕生以降は、キャラクターがOPやEDを歌っているという形態の曲が増えています。
 
セールス的に大成功した作品で例を挙げていくと、「ハレ晴れユカイ」(涼宮ハルヒ長門有希朝比奈みくる)、「もってけ!セーラーふく」(泉こなた柊かがみ柊つかさ高良みゆき)、「ハッピーマテリアル」(麻帆良学園中等部2-A)といった曲ですね。
 
確かに歌っているのは、声優さんなわけですが、こうした曲はあくまでアニメ本編に登場するキャラクターが歌っている、という設定なんです。例えば、前期の「とらドラ!」でEDを歌っているのは、声優の堀江由衣さんですが、OPを歌っているのは、あくまでも「みのりん」こと櫛枝実乃梨さんです。…この辺の微妙なニュアンスも、アニメを好きな人なら分かってくれますよね?
 
こうした楽曲では、歌詞や曲調で表現される歌の世界は、キャラクターよりは作品世界全体の雰囲気を表している場合が多く、キャラブレの心配もありませんし、何よりOPやEDの場合、プロモーションビデオの如く、アニメーションでキャラクターが歌ったり、踊ったりする映像が付属してくるため、見る側もキャラソンに比べると、キャラクターを投影することが容易です。
 
<ハレ晴れユカイ / 涼宮ハルヒ長門有希朝比奈みくる>

 
そうした要素もあるからでしょうか? 「ハレ晴れ愉快」のように、セールス的にも、成功するケースが高い気がします。
 
近年では、「ケロロ軍曹」のように、キッズアニメであることを逆手にとり、キャラクターソングを多用しながら、その実、マニアックなネタを仕込む作品(子どもにとっては、セサミストリートのキャラクターが歌う歌のように、違和感なく入り込めて、なおかつネタが分かる人はニヤリとしてしまう巧みなものです)や、「マクロス」や「アイドルマスター」のように、キャラクターがミュージシャン、アイドルという設定で、メディアミックスを行う場合に、キャラクターと声優さんの境界がさらに複雑になる作品もあるので、一概には言えませんが、やはり純粋なキャラクターソング、キャラソンっていうのは、「訓練されたアニメファン」ではないと、親和性が低いものだと思います。
 
もちろん、純粋に楽曲として良くできた曲もいっぱいありますし、キャラクターの魅力を余すことなく伝える優れた楽曲もあるので、食わず嫌いは勿体ないっていう話なんですけどね。
 
ちなみに、僕は大好きですよ、キャラソン
 
なかなかアニメ本編で流れる楽曲と違い、脚光が当たりにくいジャンルですので(「ハルヒ」や「らき☆すた」みたいに、出るキャラソンが軒並み好セールスを記録した作品もありますが)、隠れた名曲などありましたら、コメント欄などでコッソリ教えていただけると嬉しいです!