エロ漫画におけるユニークな描き文字表現 - けものの★先生の描き文字がスゴイ!

tunderealrovski2009-09-26

 
以前、エロ漫画の描き文字についてのエントリを書かせていただいたのですが、
 
■エロ漫画の描き文字に見る、漫画家さんの個性や劇中での効果について
 
今回はもう少し話題を絞り、とある漫画家さんの作品におけるユニークな描き文字の使い方について書いてみたいと思います。
 
そのユニークな描き文字を使用される漫画家さんとは、けものの★先生。
 

<けものの★ / 「Groove Tube」(茜新社) , 「YELLOW★POPS」(コアマガジン)>
 
けものの★先生は、茜新社のTENMA COMICSから「Groove Tube」コアマガジンのホットミルクコミックスから「YELLOW★POPS」という2冊の成年コミックを出されていて、現在ではwebコミックの「FlexComix ブラッド」にて一般向け作品であるネガティブ・ツインタワー!を連載されている漫画家さんです。
 
成年漫画作品である「Groove Tube」「YELLOW★POPS」は、表紙からして色鮮やかな色彩とポップなタイトルが目を引きますが、その中に収録されている漫画作品も表紙に負けず劣らず、いずれも明るく楽しげなイメージに満ち溢れています。
そして、そうしたチアフルなイメージに大きく貢献をしているのが、劇中で描かれる個性的でポップな描き文字表現の数々なのです。
 
 

けものの★先生が描く、個性的な描き文字の数々

先ず、けものの★先生の漫画を読んで気付くのが、その描き文字の種類の多さです。擬音表現として、あるいはフキダシの中の話し言葉として、様々な描き文字がかなり大胆に作品内に顔を出します。
その効果や演出も様々で、例えば下の画像を見ていただけると分かりやすいのですが、
 

<「Groove Tube」 P.56,26,87>
 
矢印と文字を組み合わせてキャラクターの動きを表現したり、効果線を組み合わせてオーヴァーでコミカルな感情表現を行ったり、体液のドロリとした質感を表現するのに文字の枠線も同じく「ドロリ」とたらして描いたり…と様々な試みやテクニックが使われています。
 
動き、感情、質感。
 
成年漫画において重要なこれらの要素を、描き文字を使って表現をする、けものの★先生の仕事ぶりを見ていると、描き文字に対して相当なこだわりと意識を持って漫画を描かれているのかなぁという印象を受けます。
 
この他にも、描き文字を使った様々な演出や表現が行われおり、それらを追いかけて作者の意図をアレコレと想像し読み解いていくのも、けものの★漫画の楽しみの一つだと思います。
 
 

■描き文字を引き立てる漫画技法の数々

また、描き文字だけではなく、それらを引き立てる漫画技法にも様々なテクニックが使われています。
 


 
ここで引用している画像は、無愛想で怖い女の娘だと周囲から誤解されているヒロインが、頑張って可愛い笑顔を作ろうとするも上手くいかずに不器用な笑顔になってしまうという場面なのですが、そのギコチない笑顔の違和感が背景に施されたカケアミとトーン処理された描き文字によって上手く表現をされています。
 
効果線や集中線、カケアミやトーン処理といった漫画技法は、漫画表現において基本的な技術なわけですが、けものの★先生が使用するそれらのテクニックは基本に忠実ながらも、非常に上手く丁寧に描かれている印象を受けます。
そして、それらの漫画技法の数々と描き文字を組み合わせて使う相乗効果によって、物語の情感やキャラクターの質感がより雄弁に読み手に伝わってくるのです。
 


 
けものの★先生は、一コマの台詞や効果音を全て描き文字で表現するという演出を行うことを多いのですが、そうした場面でもやはり背景に施されたトーン処理や効果線といった漫画表現が、コミカルなシーンをより華やかに盛り上げています。
 
 

■描き文字に多用される星のマーク

また、けものの★先生が作品内に用いる描き文字の大きな特徴として「☆」マークとの併用が挙げられます。
 

<「YELLOW★POP」 P.26,102>
 
描き文字の語尾やアクセントに、あるいは文字の一部として、けものの★先生の描き文字には星型のマークがよく登場をします。
 
エロ漫画家さんには、ヒロインの可愛らしさや物語の官能性を高める手法として、描き文字にハートマークを多用される漫画家さんがいらっしゃるのですが、けものの★先生の場合はそれに加えてこの星のマークを頻繁に使用しています。
そして、この星のマークが作品内の明るく楽しくハッピーな雰囲気の演出に非常に大きく貢献をしているように思うのです。
ペンネームや作品タイトルにまで星が入っているくらいですから、もしかしたら星のマークに対して、何か特別なイメージというか思い入れを持たれている漫画家さんなのかもしれません。
 
いずれにせよ、こういう一工夫を加えてカラフルで楽しい雰囲気を作り上げることができるセンスが、個人的に非常におもしろいと思うのです。
 
 

■描き文字によって、キャラクターを立てるセンスがスゴイ!

エロ漫画において、描き文字はヒロインの身体の強調や、エロの輪郭をハッキリとさせ官能性や淫猥さを高めるための手法として用いられる場合が多いのですが、けものの★先生の描き文字は作品内の登場人物のキャラクターを立てるための演出として、その効果を最も強く発揮しているように思います。
 

<「Groove Tube」 P.96,97,99>
 
例えば、単行本「Groove Tube」に収録されている「ぐる〜みんぐっ!!」シリーズは、兄と妹のラブラブかつエロエロな日々を描いた作品なのですが、この漫画ではフキダシの中の描き文字の台詞や擬音表現と併せて猫の足跡をワンポイントとして効果的に配置しています。
この足跡マーク。ハートや星に比べると記号的なニュアンスやイメージは余り普遍化、一般化していないように思うのですが、それでも作品の明るく楽しいイメージが読み手にキチンと伝え、可愛らしくも奔放で気紛れな魅力によって兄を翻弄するヒロインのキャラクター性を高めることに成功しています。
 

<「YELLOW★POP」 P.21,35,67>
 
また、「YELLOW★POP」では、狐の獣人であるヒロインさんに合わせて、描き文字の一部がキツネの顔になっていたり、語尾にキツネのイラストを加えたり、更にはそのイラストを使ってキャラクターの感情表現を行ったりと、色々とおもしろい工夫が施されています。
ともすればエロ漫画においてテンプレート的な使用になりがちな「くぱあ」という擬音にも、一工夫を加えて楽しく見せる辺りに、この漫画家さんのセンスが強く現れているように思うのです。
 
勿論、「ムチムチ」や「ぷるん」といった肉体を強調する擬音や、「クチュクチュ」や「パンパン」といった性交時における擬音、描き文字による絶頂時の嬌声といった、如何にもエロ漫画らしい描き文字も多用されていますが、そうした「エロ」の強調というよりはヒロインの可愛らしさやキャラクター性を立てる上記のような描き文字表現が一際目を引きます。そして個人的には、そうした表現にこそ、けものの★先生の個性とセンスを強く感じるのです。
 
 

■まとめ

「描き文字」のおもしろさの判断基準というのは、漫画のジャンルや読み手の感性、好みによって異なりますから、どれが素晴らしいといった感想は一概に言えない訳ですが、けものの★先生が描くポップな字体によるチアフルなロゴやイラストを加えた可愛らしくユニークな描き文字の数々は、自分の感性をガンガン刺激してくれます。
 
けものの★先生の漫画に出てくる描き文字には、ここで紹介した以外にも様々な工夫や試みが施されているものがあります。
私の貧弱な文章力と感性では、書き切れない&意匠を汲み取れていないモノも多数ありますので、興味を持たれた方で18歳以上の方には、ファンの一人として是非ご一読をお勧めいたします。
デザインとかを専門的に勉強されている若い人なんかが見ても、色々と発見があっておもしろいんじゃないかと思うんですよね〜。
 
 
 
<関連URL>
■けものの☆『Groove Tube』(ヘドバンしながらエロ漫画!様)
■けものの☆『YELLOW☆POP』(ヘドバンしながらエロ漫画!様)