虐める少女と虐められるお兄さんの描き方がスゴイ! - しらんたかし「興味アリ」

tunderealrovski2009-07-11

 
成年漫画家、しらんたかし先生の新作「少女性徴期」を読みました。
 
しらんたかし「少女性徴期」(ティーアイネット

 
私は、しらん先生のファンなので単行本は全て購入しているのですが、今回もまた素晴らしかったです!
本作には「家出少女」「ナイフリモドキ」「興味アリ」という3つの作品が収録されており、それぞれに異なった魅力があってなかなかに読み応えがあるのですが、今回はティーアイネットからの前単行本である「こいのり」から引き続き収録されている「興味アリ」シリーズにスポットをあてて、エントリを書いてみたいと思います。
 
しらんたかし「こいのり」(ティーアイネット

 
「興味アリ」はヒロインの「春日ちゃん」と、彼女の下着を盗むところを見つかってしまい弱みを握られてしまったことから、彼女の性的な下僕となる「お兄さん」の不思議な共性関係を描く一連のシリーズです。
この作品の素晴らしいところは、嗜虐嗜好を持つ少女春日ちゃんと、そんな彼女に蔑まれ、なじられる被虐者のお兄さんの姿が非常に上手く描かれていることだと思うんです。今回は、この辺りの描き方について自分なりに注目しながら感想文を書かせていただきます。
 
以下、直接的な性描写を描いた画像等はないのですが、顔の表情だけで十二分に18禁足りえると思うので、本文は18歳以上の方のみ続きをクリックでお願いします。
 
 

■嗜虐癖のある「春日ちゃん」の描き方がスゴイ!

「興味アリ」シリーズにおいて、ヒロインである春日ちゃんの表情は目まぐるしく変化します。そして、その表情というのが、この手のSっ気のある女の子が好きな人にとってはことごとくドストライクに入る非常にツボをついた描き方になっているのです。
例えば、お兄さんの変態性に対する春日ちゃんの軽蔑の眼差しです。
 

 
いやもう、何も説明しなくても感じる人はビンビンきてると思います。何が素晴らしいって、この蔑むような少女の目ですよ!
こんな目をした少女に、主人公であるお兄さんは徹底的に罵られ蔑まれ虐げられます。その被虐の描写たるや凄まじく、言葉によって人間性を全否定され、羞恥の余り涙を流しながら理性がトんでしまうまで、この地獄の責め苦を受けるのです。 本当に、ありがとうございます!
 
で、また、そんな嗜虐の快楽によって、次第にテンションが上がっていく春日ちゃんの表情! これがまた上手くて魅力的なのです。
 

 
開ききった瞳孔や紅潮した顔の表情で興奮や悦楽を表現するという、割かしエロ漫画では「ベタ」な描写法を用いているのですが、性的な興奮や相手を虐めることによって生まれる高揚の度に少女の顔の表情がコロコロと目まぐるしく変わるため、作品内に独特のスピード感とパワーをもたらすことに成功しています。
また、絵だけではなく台詞に注目して見てみると、言葉責めの台詞の中で多用される三点リードやハートマークが、この漫画の中の男女の倒錯した関係性の強調と独特のリズムを作るのに有効に機能をしているのです。
 
こうしたエクスタシーの描写の中でも、私が一番凄いと思ったのは以下のコマです。
 

 
「お兄さん」の変態性をなじっている内に、完全にスイッチが入ってしまった瞬間の少女の表情。
ハイになり過ぎて「イッちゃってる」目を表現した三白眼や、勢いの余り後半は最早フキダシからはみ出してしまっている言葉責めの台詞、ここでも多用されている語尾のハートマークによって、少女の嗜虐による異常な興奮と快楽が見事に表れています。
わざと字をかすれさせて声に質感を出している「はははっ」という笑い声や、「ゾクゾクゾク」という描き文字による効果音も、グッとクる人には強烈に感じるものがあるんじゃないでしょうか?
 
あぁ、もう! 何ていうか、ゴメンなさい! ゴメンなさい! ゴメンなさい!
 
 

被虐者である「お兄さん」の描き方がスゴイ!

「興味アリ」で、嗜虐趣味の少女の描き方が見事ならば、その反対の立場にいるキャラクター。被虐の立場であり、少女の言葉と恥辱プレイの数々によって、トコトンまで辱められる「お兄さん」の描き方も、また見事です。
羞恥と屈辱、恐怖や混乱…少女に手玉に取られることによって生まれるネガティヴな感情と、そこから派生する強烈な快楽。
 

 
男性性はこの物語の中で、非常に弱い立場として描かれています。そして、そんな作品の雰囲気を象徴するかのような、これらの情けなくて、だらしなくて、恥ずかしくて、カッコ悪いお兄さんの表情。
 
そんな嗜虐心をくすぐるお兄さんの描写に更に説得力を持たせるように、漫画内の構図なんかもかなり工夫をされている印象を受けます。
例えば、漫画内における男女の描き方なのですが、ほとんどの場面で女性が上に、男性が下になるように配置されているのです。
 

 
見下す女性と見下ろされる男性のイメージを繰り返し反復することによって、女性の威圧感と男性の卑小さが際立つ構図。
こういう見せ方ができる上手さやこだわり。この辺りは作者である、しらんたかし先生のセンスですよね。
 
ちなみに、お兄さんは毎回恥辱の果てに「逆ギレ」をして春日ちゃんとの立場を逆転させるのですが、この時にはこの構図も引っくり返ります。しかしながら、それも全ては彼女の手の中で踊らされているだけで、最終的には性的な下僕の立場に戻ってしまい、被虐癖のあるお兄さん自身も性の快楽から、この倒錯した関係にピリオドを打つことができません。
 
限りなく天国に近い、幸福な地獄の日々は終わらないのです。
 
 

しらんたかし先生の世界と、まだまだ続く「興味アリ」

しらんたかし先生の描く成年漫画には、作品世界が共通しておりキャラクターや物語が次々にリンクをしていくという大きな特徴があり、そのことについて以下のようなエントリも書かせていただいたのですが、
 
■成年漫画は時に大きな物語を紡いでいく ‐ しらんたかし先生が描いた「世界」
 
「少女性徴期」に収録された作品も、やはり他作品と登場人物や世界観を共通しています。
 
そのような作劇面での特徴から、割と大きな物語や長いスパンで漫画を描くことに興味をもたれている作家さんという印象を持っていたのですが、「こいのり」「少女性徴期」と二冊の単行本に分けて収録された「興味アリ」シリーズ、実はまだまだストーリーは続いているのです。
ティーアイネットから発行されている成年漫画雑誌「MUJIN」。現在、店頭に並んでいる8月号にシリーズ初の前後編モノとして「興味アリ5<前編>」が掲載されています(後編は来月号に掲載予定)。
 
どうやら作品自体も非常に人気があるようなのですが、「こいのり」の単行本カヴァー裏にて、しらん先生ご自身がヒロインのキャラクターを評して「こういう女の子が好きだったりします」とコメントを残しているように、「興味アリ」という作品は先生の性的な嗜好がストレートに表れた、漫画家生活においてのライフワーク的なものになっているのかもしれません。
現に、作品内における嗜虐と被虐の描写や、その中での春日ちゃんとお兄さんの関係性の変化の描き方にも、非常に高いテンションとこだわりが感じられます。
 
今回使用した画像は、「こいのり」収録作品のものがほとんどなのですが、「少女性徴期」収録分の「興味アリ3」「興味アリ4」では、春日ちゃんのコスプレ姿や、教育実習生の新キャラクター(勿論、嗜虐癖アリ)の登場、学校という外の世界が描かれたことによって成人雑誌を学校内に持ってこさせる」「女子トイレに使用済みの生理用品を捨てに行かせる」といった具合にお兄さんへの辱めの方法が大幅に広がるなど、よりパワーアップしている印象を受けます。
 

…って、有野課長も感心してました。……嘘ですけど(笑)。
 
その辺りは、是非単行本を手にとってご確認ください。
「家出少女」と「ナイフリモドキ」の他の作品もホントにおもしろいので! 「少女性徴期」お薦めです!