ホラーな画作りじゃないのに怖い! 「みなみけ ただいま」第8話「休日はゆかいな仲間とお野菜を」

 

 
みなみけ ただいま第8話「休日はゆかいな仲間とお野菜を」を観てのアレやコレやでエントリを更新!
 
Aパートのいつもの「みなみけ」に対して、ほとんどホラー化していたBパートの野菜による洗脳シーンが異彩を放っていた第8話。「みなみけ」という日常コメディアニメの中に不意に飛び込んできた非日常。"ホラー"についてアレやコレやと考えさせられたエピソードでしたね。
 
 

■メチャクチャ怖かった野菜洗脳回!

この第8話のBパート。テレビで放送をされている「野菜嫌いの子どもたち」の為に作られた子ども番組のアシッドな映像とサブリミナルな音楽によって、登場人物たちが洗脳され異常に野菜に執着を見せ始める…という内容だったのですが、これがもーメチャクチャに怖い!
 

 
Aパートのバーベキューシーンで、いつもの「みなみけ」、登場人物たちの幸せな"日常"を描いておきながら、後半ではこの落差。何はなくとも、「前半では、野菜をアレだけ嫌っていた千秋が、後半では嬉々として野菜を食べ始める」「前半、保坂のせいで野菜ジュースを買うハメになりゲンナリしていたマキが、後半、イっちゃった目で野菜ジュースを一気飲み」「Aパートでは、保坂を翻弄していた速水先輩が、Bパートでは野菜を持った保坂に追い掛け回される」といった"反転"を上手くストーリーに盛り込んだ構成の巧さが目を引きます。
 

 
平穏な日常が戻ってきたと思いきや、実は恐怖はTo Be Continued…という顛末も、ベタではありますが如何にもホラーな趣で、これまた恐怖。個人的には、「人間が植物に蝕まれていく」展開に、東宝の名作ホラー映画マタンゴを連想したり。あっちはキノコでしたが、こっちは野菜。普段は人間が食べるものが、逆に人間を蝕むという展開は、やっぱりインパクトと恐怖感がありますね。
 
 

■"ホラー"の画作りじゃないのに、メチャクチャに"ホラー"!

このエピソードの中で、特におもしろかったのが、その画面作り。比べるものでもないのかもしれませんが、同時期に放送をされているたまこまーけっとの第6話「俺の背筋も凍ったぜ」におけるいくつかのシークエンスと見比べてみれば、「みなみけ」の画面の異常さが伝わるか?
 

 
たまこまーけっと」第6話、冒頭のシークエンスでは不穏でダークな色使い、ザラザラした質感の画面、ノイジーなSE、そして、低い視点からのカメラ、手ブレを効果的に使用したカメラワーク…などを効果的に用いることによって、平和なうさぎ山商店街にホラーな空気感を演出することに成功をしていました。そして、これらの映像テクニックというのは、ホラー映画における演出術のスタンダードな技法であり、王道。映画的なテクニックをアニメーションに用いることの多い京都アニメーションらしい映像表現、"恐怖"の作り方ですよね。
 

 
それに対して、「みなみけ」の野菜洗脳回。エピソードの内容は、オカルト的ではありますが、画面は全くホラーのそれじゃないんですよね。絵の方は、完全にいつもの「みなみけ」。明るい色彩、ポップなBGM、そして可愛いキャラクター…本当に「みなみけ」のままなんです。如何にも、ホラーっぽい絵というのは、前述の千秋ちゃんのラストシーンくらいか。学校の外に青空が描かれているのなんて、そんな「ホラーっぽくないのにホラー」という異常な世界観を象徴する場面。ホラーの定石だったら曇天だとか、雨雲を描くところですが、外はカラッとした青空。
 
そんな画面の中で、異常な行動をする登場人物たち。もう、そのギャップが何より怖いというか、明るい世界観の中で奇行を繰り広げるキャラクターの姿っていうのが凄まじく不安感を煽ってくる。
 
まぁ、このエピソードの何が怖いって、やっぱり"狂気"ですよね。狂気の部分。グルグル目玉で、野菜を頬張る登場人物たちの姿もインパクト抜群。更には、あの保坂と千秋による歌と踊りで、狂気はここに極まれり。「みなみけ」の日常を非日常が徐々に侵食していき、それこそ登場人物たちに貪り食われる野菜の如く、食い尽くされる…。
 
 

■まとめ

みなみけ ただいま」の中でも異色のエピソードとなるであろう「休日はゆかいな仲間とお野菜を」。画面の画作りの特異性、異常さ…ホラー映画のファンとして。様々な面で楽しませていただきました。
 
…にしても、こういうエピソードをコメディアニメの中に唐突に挿入してくるスタッフさんのセンスに対して、改めて凄いな、と思わされる「みなみけ ただいま」の野菜回。千秋と同じ時間に同じ番組を観ていたハズの夏奈だけが何故、洗脳を受けなかったんだろう…とか考え出すと、より恐怖と不安感が増してきますね…。