元・田舎者のハートにグサグサ突き刺さります「のんのんびより」

 

 
10月から放送をスタートしたアニメ作品の中で、私が一番ハマっているのがのんのんびよりです。
 
いや〜「のんのんびより」はヤバイです。何がどうヤバイって、これ、超個人的な体験との照らし合わせによる主観での感想になってしまうんですが、私、かつて「のんのんびより」に出てくるような田舎に住んでいまして、その時の体験が強烈に思い出されるというか、あの田舎の風景に身につまされる思いがするのですな。
 
そんなわけで、今回のエントリでは元・田舎者の視点から観た「のんのんびより」に関するアレやコレやを。多分、あの娘達の家のトイレは水洗だけどくみ取り式。にゃんぱすー。
 
 

■元・田舎者にとっての「のんのんびより」のリアルな風景

今は、上京して東京都(といっても、都下の都下)に住んでいる私ですが、小学校の6年生までは九州の田舎町、佐賀県に住んでいました。えぇ、その昔、某お笑い芸人さんもその田舎っぷりをコミックソングにして売り出し、ヒットをさせた程のド田舎、佐賀県に住んでいたんですよ。
 
そんな田舎出身の人間からすると「のんのんびより」の田舎の風景というのは、メチャクチャ心に迫ってくる…非常に生々しいオーラを有しているのです。
 

 
例えば、田んぼと畑だらけの通学路、無駄に敷地面積と延べ床面積がデカい住居、運行時間が開きまくっている通学バス、トタン屋根で簡素な作りのバス停、家に鍵を掛ける習慣がない子どもたち、買い物はコープ、放課後の最高のプレイスポットが駄菓子屋…などなど。その全てが、かつて周囲に田んぼしかない田舎暮らしをしていた人間からすると「あ〜こんなん観たことあるわ…」という強烈なデジャブでもって此方の記憶と感性に飛び込んでくる。
 

 
トンネルを抜けていく光景とかね。あ〜…トンネル、ウチの近くにもあったあった。あと、番組中に流れるコミックのCMで出てくる「カブトエビ」って台詞とか。カブトエビ…おったおった。「カブトエビ」ってキーワード、幾らなんでもクリティカル過ぎですよ。元・田舎者にとっては。
 
のんのんびより」は、岡山県の田舎町をベースにしながら、そこに様々な牧歌的な風景を合成させることで、誰もが一度は観たことがあるような普遍的なイメージによる"田舎町"を作り出していると聞きますが、確かに、この田舎の風景のリアルさが持つパワーは凄い。
 
で、そんな「のんのんびより」で描かれる田舎の風景が自分にどんなエモーションを起こさせるかというと、コレが観ていると物凄く不安になってくるのです。懐かしさとか郷愁とかよりも、ずっとずっと不安の方が大きくなってくる。こう…ハートにグサグサ突き刺さってくるのです。
 
 

■「のんのんびより」を観ていて思う、「あのまま田舎に住んでいたら…」

というのが、「のんのんびより」を観ていると「俺、あのまま田舎に住み続けていたらどうなっていたんだろう…?」という自分自身のヒストリーの"if"みたいなものを思わず考えてしまうのです。
 
今は、インターネットも衛星放送もありますから、また状況もちょっと違うのかもしれませんが、私が子どもの頃なんて住んでいた田舎町には全くといっていいほど娯楽や文化がありませんでした。住んでいる市内に映画館もなければ、レコードショップもないのです。本屋はあったと思いますが、車で移動しなければいけない距離にあった記憶があります。当然、雑誌は全て発売日から2〜3日遅れで入荷します。
 
私は、その後、佐賀を離れ、九州で一番の都会である福岡県に移り住むことになるのですが、福岡では文化や娯楽が溢れかえっていて本当に驚きました。そこで映画や音楽や漫画やアニメなど、様々な作品に触れ、今の自分の嗜好ができるのですが、それが、もしもあのまま佐賀県の田舎町に住み続けていたら…当然、今、自分が享受をしている作品に出合うことが難しかったでしょうし、趣味嗜好も、引いてはそこから育まれた人間性とか人生観みたいなものも大きく変わっていたと思います。つまり、今の自分とは全然違う人生を歩んでいたのではないかな、と。
 

 
大袈裟に聞こえるかもしれませんが、その位、田舎と都会の環境の違いは大きいものだと思うのです。ですので、私は「のんのんびより」で主人公たちが暮らす田舎の風景を観て大きな多幸感に包まれながらも、同時に「そんな、あったかもしれない人生」に思いを馳せてしまい、物凄い不安感に苛まされるのです。「うわ〜!」って叫びたくなるのです。これは、田舎住まいを経験したことがある元・田舎者にしか分からない感覚ではないでしょうか?
 
そんな個人的な主観を顧みるに「のんのんびより」の一番幸せな視聴者というのは、「都会育ちなんだけど、祖父母が田舎に住んでいて人生のウチで何度かああいった田園風景を目にしたことがある」というレベルで田舎と接していた人…なのではないかなと思います。田舎の良い部分、綺麗な部分しか目にしたことがない人というか…そういう人達が"子供の頃のノスタルジアみたいなもの"を見出すのが一番幸せなんじゃないかなと。
 
前述の通り、田舎町に住んだ経験のある人間としてはあの「のんのんびより」の田舎の風景というのはリアル過ぎてですね…一種の"トラウマ"みたいなものを連想してしまうのです。ムカデとか家にメチャクチャ出たなぁ…。台風の時とか、本当に本当に酷かったなぁ…。農薬と肥料の匂い、本当に苦手だったなぁ…とかとか。そして、そんな町に住み続いていたら「あったかもしれない人生」…。そんな様々な情感が、このアニメを観ていると私のハートにグサグサ突き刺さるのです。
 
 

■まとめ

そんなこんなで、元・田舎者から観た「のんのんびより」にまつわるアレやコレや。あの牧歌的過ぎる光景に「ウワ〜!」と叫びたくなる時もありますが、キャラクターは可愛らしいし、あのノンビリした雰囲気とは裏腹に笑いの破壊力は高く、物語の密度も濃い。凄く素敵で素晴らしい作品だと思います「のんのんびより」は。
 
…しかし、ホントにあのまま田舎に住み続けていたらどうなっていたんでしょうね、私…。少なくとも、今、私が愛して止まない後楽園ホールでのプロレス観戦もロックフェスも深夜アニメもミニシアター系の映画も、あの町で体感することは出来なかった訳で…。やっぱり、今の自分とは全く違う趣味嗜好、考えや感性の持ち主になっていたんだろうなぁ…。
 

 
案外、早々と地元で結婚をして家庭を作って、今頃はれんちょんみたいな可愛い小学校低学年の娘とかがいたかもしれないですね。ん? そう考えると、あのまま佐賀の田舎に居た方が自分はもしかして幸せだったんじゃ…? ちょ…ちょっと、今から佐賀県に嫁(「にゃんこい!」の住吉加奈子さんみたいな可愛くて巨乳の女の娘)を探しにいってくる! にゃんぱすー!!