「HEROMAN」シリーズを通して描かれたジョーイの成長とヒーローマンの存在について

 

 
この半年間というもの、自分にとって一週間の最大の楽しみであり、そして最終話のエピソードである「FAITH」の放映を終えた後も、自分の中でのベストのアニメ作品の一つとなっている「HEROMAN」
 
今回は、その最終回の感想についてアレやコレやと。…いや、最高の最終回だったと思います。
 
本放送を見ている時も、このエントリを書くために見返している時も、このエントリを書いてる時も…度々泣いてしまって色々と大変でした…。
ともあれ、半年間、本当に楽しい時間を過ごさせてくれた大好きな作品に対して、「ありがとう!」という気持ちを書いた感想文エントリ。拙い文章ではありますし多分にネタバレの要素を孕んでしまっていますが、最後まで読んでいただけたら幸いです。
 
 

■「HEROMAN」最終話「FAITH」。その中で描かれたジョーイの姿について

「HEROMAN」のストーリーの中止軸になっているのは、シンプルかつオールドスクールな善と悪の戦い、勧善懲悪の物語ですが、同時そこには様々な物語の奥行が存在していたように思います。
善が悪を打ち破る明快なストーリーラインに並行して、そこでは主人公ジョーイとヒーローマンの絆が描かれ、仲間との友情があり、ヒーローであることの宿命や葛藤があり、恋愛や家族といったジョーイを取り巻く様々なキャラクターとの人間ドラマがあり…といった具合に、そこには非常に複合的な物語の要素が存在をしており、魅力的なキャラクターやシナリオ、アクション、音楽といった物語の構成要素がそれを見事に支えていたように思うのです。
 
そして、そこから生まれる物語の多様性とジャンルとしての幅。思えば、「HEROMAN」は、ヒロイックなSFアクションであると同時に、スピーディーなバディ・ムーヴィーであり、甘酸っぱいラブストーリーであり、劇中でのクールなBGMと音楽のモチーフが観る者にハートをエキサイトさせるロック・ムーヴィーでもありました。
 
そうした複合的なストーリー性を持つ物語が、ラストでどのような結末を迎えたか?
それらの魅力的かつ多様な物語の要素は、「FAITH」というエピソードの中で、全て「ジョーイの成長物語」として結実したように思うのです。
 
最終話でのゴゴールとのラストバトル。そのクライマックスでは、この作品が理想とする「本当のヒーローがあるべき姿」が描かれます。
 

 
愛する仲間を、家族を、そして世界を守るために悲壮な覚悟で巨大な敵に特攻を仕掛けるジョーイ。決意と使命感と大切なパートナーであるヒーローマンを失った怒りと悲しみを胸に、最強・最大の敵へと向かう姿と能力はまさに「ヒーロー」としての最終形態とでも言うべきフォームへと変貌を遂げます。
 
だけど、それは本当の「強さ」ではないのです。本当の「成長」でもない。
 
真のヒーローの条件とは何か? そして、本当の強さとは何か? その問いに対して、「HEROMAN」というアニメはハッキリと一つの答えを…「本当のヒーローがあるべき姿」を提示し、「ヒーロー」へと成長したジョーイの姿を描くのです。
 
その「本当のヒーローがあるべき姿」については、是非、本編を観ていただいて、「HEROMAN」という作品を形作ったスタッフの皆さんやキャストの皆さんのメッセージを受け止めていただければと思います。
 

  
ただ、一つ言えるのはジョーイの周囲には、本当に素晴らしい仲間たちと、ヒーローマンという特別な存在がいて、彼をあるべき姿へと導いてくれたということです。そのフレンドシップは、とにかくひたすらに感動的で物語の(あくまで、一つの区切りとしての!)最後を締めくくるに相応しい、本当に幸福なラストだったと思います。
 
最終話で描かれたメッセージは、とにかく圧倒的に力強いものです。個人的に、今のアニメや時代の流れで「あの台詞」をジョーイが言ったことは、本当に凄いことだと思いますし、それっていうのはやっぱり「HEROMAN」というアニメでなければできなかったことなんじゃないかとすら思います。
 
やっぱり…本当に、最高で幸福なラストだったな、と…。
う〜ん、やっぱり、できればネクストがが観たくなっちゃいますね…。
 
 

■…で、結局ヒーローマンって何者なの?

物語が一つの区切りを迎えたところで、最終回の感動をテキストに残しておくのと同時に、これもやはり考えておきたいところ。
タイトルとしての「HEROMAN」ではなく、物語としての主役、キャラクターとしてのヒーローマンの存在について。あの白くて、寡黙な巨人は一体何者だったのか?
 
ジョーイの頼れるパートナーであり、圧倒的な力を持つヒーローであり、正義の使者であるヒーローマン。その存在感というのは、これまたシンプルな正義のキャラクターであるようで、実は複雑なキャラクターであったように思います。
 
先ず、名前からして特殊です。これは、以前の感想文でも書いたことですが「HERO」+「MAN」という特異な名前の響き。記号や象徴としての「HERO」と有機的な「MAN」という2つのキーワードが合わさって生まれるセンテンスには、独特のエモーションとニュアンスが含まれていたように思うのです。
 

 
ヒーローマンは、感情や意志や持たないロボットのようなルックスをしていますが、時に自律的に動き、時に怒りや悲しみのような感情を見せることすらあります。
このように、単純明快な正義のヒーローであるようで、実は謎に満ちた奥行きを持ったヒーローマンですが、相棒であるジョーイとのパートーシップについて色々と考えてみると、また興味深いものが見えてきます。
 

  
ジョーイにとって、ヒーローマンはその名の通り、憧れのヒーローです。それは、例えば、第1話のラストで事故車の中からリナとリナの父親を助けた際の印象的なモノローグ…
 

「君は、やっぱり僕の…ヒーローだ」

 
や、ゴゴールとの最初の決戦を描いた第9話「ALIVE」で、ジョーイを傷つけられた怒りから暴走をするヒーローマンに対して、ジョーイが言った
 

「そんな風に戦っちゃダメだ! 君は…君は、僕の…ヒーローなんだから!」

 
という台詞からも見てとれます。
だけど、決してそれだけじゃないんですよね。ヒーローマンとジョーイの関係性を考える際に、個人的に非常に興味深かったのが、第11話「MENACE」でのジョーイの台詞。
 

  
実家に戻ってきた姉のホリーにヘイボの状態に戻っているヒーローマンを取り上げられ、ジョーイはこう言います。
 

ヒーローマンは玩具でも売り物でもない! …僕の友達だ!!」

 
ヒーローマンはジョーイにとって、彼が憧れ続けていたヒーローであると同時に、頼りになる相棒であり、大切な友達であり、家族のような存在でもあり、かけがいのない仲間でもあります。
その家族のような…という一面をクローズアップしてみても、言葉を発せず、人間や社会の営みに知識のないヒーローマンは幼い弟のようでもあり、一方で頼りになる兄貴分のような存在でもあり、スクラッグ編後にストーリーのフォーカスが当てられ始めた「父親」の面影を持ったキャラクターでもあります。
 
この物言わぬ巨人は、その寡黙さや「正義」という明快な存在目的とは裏腹に、非常に複合的なイデオロギーを持った存在であったと思うのです。
シンプルだが奥深い、オールドスクールなようで新しい。「HEROMAN」のストーリーと同様のエモーショナルで多様性に満ちた魅力が、ヒーローマンというキャラクターには宿っていて、そういった面にも自分を含めたファンの多くは惹かれたのではないかと思います。
 
勿論、そういった小難しいことを考えなくても、「HEROMAN」というアニメは思いっきり楽しむことができる、優れたエンターテインメント作品であるということも付け加えておきたいところです。だから、謎に満ちたヒーローマンの存在ですが、それに関してはラストで教授が語った言葉が全てなんでしょうね、やっぱり。
アレコレと想像力を働かせるのも楽しいですが、もう何も考えずに心のそこから楽しめるのも、この作品の凄いところ。カッコよくて可愛いキャラクターたち、熱いアクションシーン、スピーディーなシナリオ、クールな音楽…他に何が必要だって言うんだ?
 
 

■「HEROMAN」は「HERO=MAN」

で、ヒーローマンについて考えたところで、翻って再び最終回の感想文です。
そういった複合的なアイデンティティーを持つヒーローマンの存在感も、やっぱりラストでは「ジョーイの成長」という物語に帰結をしたように思います。
 

 
ヒーローマンやサイや教授、リナにホリー…といった仲間たちがいたからこそ、ジョーイは本当のヒーローになることができた。
孤独な戦いをしてきたヒーローマンとジョーイの影の存在とでもいうべきウィルが、ラストバトルから退場をする(ただし、あくまで死んではいないそうです!)コントラストも意味深で、様々な要素やエモーションが一緒くたになりながら、「HEROMAN」のキャラクターと作り手とファンが共にジョーイの成長を見守る、その多幸感というのは凄まじいエネルギーに満ちていたなぁ、と改めて。
 
これは、先日、新宿で行われた「HEROMAN」のイベントで聞いたエピソードなんですが、元々原案の段階では「HEROMAN」の作品タイトルの表記は、一続きではなく「HERO=MAN」という表記だったそうです。
「ヒーロー・イコール・マン…それを考えてみると、「HEROMAN」を形作った人たちが、この作品に込めたメッセージがまた見えてくるよなぁ、と。
 
ジョーイは勇敢な少年ですが、だからといって決して一人だけではヒーローに成れなかったんだと思います。ヒーローマンとの出会いがあり、愛すべき仲間がいて、守るべきものがあって、だからこそ本当のヒーローのあるべき姿に気づくことができた。
つまりは、サイや教授やリナやホリーやヒューズやコリンズ先生…ジョーイとヒーローマンを支えた全ての人が、ヒーローだったんだと思います。
 
まだまだ、言いたいことは尽きませんが、一先ず今回はリナのこの言葉を「HEROMAN」の愛すべきキャラクターたちに捧げて感想文を締めくくりたいと思います。
 

「ヒーローは一人じゃない。ヒーローは一人きりじゃなれない」
「仲間がいてこそ、ヒーローになれるのよ。だから…彼方たちがヒーローなのよ!」

 
 

■まとめ

「HEROMAN」は、この半年間、本当に楽しませてもらったアニメ作品でした。笑えて泣けて熱くなれて胸を締め付けられるようなエモーションがあって、とにかくハートの一番深い部分に突き刺さった作品でした。
とにかく、今はこの作品に携わった人たち全てに「ありがとうございました!」という感謝の言葉を言いたいと思います。
 
アニメ本編は、一先ずの区切りを迎えましたが、この後も映像ソフトのリリースや、月末には待望のサウンドトラック! そして、ムックの発売なんかも控えているようなので、これからも自分は「HEROMAN」を応援していきたいと思いますし、未見の方には是非この機会にこの作品に触れていただければ嬉しいなぁ、と思います。BANDAI CHANNELでの映像配信なんかもおこなっておりますので、コチラも是非是非!
 

 
最後に改めて、「HEROMAN」へ。本当にエキサイティングで幸せな最高の時間をありがとう!
 
 
 
<関連エントリ>
■「HEROMAN」関連エントリ(さよならストレンジャー・ザン・パラダイス)
 
<関連URL>
■「HEROMAN」公式ホームページ
■BANDAI CHANNEL - 「HEROMAN」視聴ページ