「日常」第6話のドラゴン・スクリューが物凄く惜しかった! - 新日vs.Uインター、武藤敬司vs.高田延彦

 

 
「日常」の第6話「日常の第六話」を観ました。
今回も、博士やなの、ゆっこにみお…と出てくるキャラクターが皆さん可愛らしくて、本編を観てる間ず〜っとニヤニヤしっぱなしだったのですが…どーしても見逃せない残念な点が一つあったので、今回のエントリではそのことについてアレやコレや書いてみたいと思います。
 
…一言だけ、言わせてください…。(←「PRIDE」引退試合での高田延彦のマイクアピール調)
 
劇中でのプロレス描写が物凄く惜しいんですよ!!
 
以下、プロレスファン以外は全く気にならないであろう些細なポイントを、藤原喜明の関節技ばりにネチネチと責める嫌〜な感じのテキスト(最早、イチャモンレベル)が続きますので、そういうのが気にならない方だけ「続きを読む」をクリックして先をお読みください。
 
熱狂的なファンを多く抱える京都アニメーション制作のアニメ作品にケチ付けるとか大丈夫なのか!? という感じですが、「エントリ書く前に、コメント欄が炎上すること考える馬鹿いるかよ!!」というアントニオ猪木ばりの精神で書いてみます。
 

 
「時は来た!! …それだけだ」(by橋本真也。横で蝶野正洋が失笑)
 
 

■とにかくよく動く! 京都アニメーションによるプロレスシーン

やたらとプロレス描写の多かった今回の日常。先ずは、その描写の数々を検証してみるトコロから話を始めてみたいと思います。

いや、「日常」のプロレスシーン、本当に凄いんですよ! 何はともあれ、とにかくよく動くこと、よく動くこと! そのアニメーションの持久力と滑らかな動きには、若き頃の武藤敬司(宇宙飛行士の格好をして、ヨーロッパの「ファイナル・カウントダウン」をバックに入場していた"スペース・ローン・ウルフ"時代のちょっと後くらい)の如き無尽蔵のスタミナと天才的なセンスが感じられます。
 


 
中盤の鹿vs.校長の激闘シーンで飛び出したムーンサルトプレスジャーマン・スープレックス(校長は、爪先立ちでブリッジの体勢をキープしたまま鹿をキッチリ押え込んでいるいるので、正確には「ジャーマン・スープレックス・ホールド」)の動きの美しさには、熱狂的なプロレスファンである自分も思わず"野人"中西学の如く、腕を突き上げながら「ホ〜〜〜ッ!!」と雄叫びを上げてしまった程です。
 
そんなプロレスのダイナミズムと華麗さを併せ持ったアクションを、物の見事にアニメーションで表現してみせた「日常」
 
あぁ、それなのに! それなのに!!
 
 

■物凄く「惜しい!」ドラゴン・スクリューのシーン


 
 
何で、ドラゴン・スクリューの後に続く技が、
フライング・ボディ・アタックなんですか!?
 
 
惜しい! 物凄く惜しい!! なまじ、その前に完璧なジャーマンと美しいムーンサルトを見せられた分だけ、コッチの残念なフィーリングも大きいよ! 何ていうか、小原道由がPRIDEでゲーリー・グッドリッジにボコボコにされて負けた時ぐらいのガッカリ具合だよ! ガチンコなら、小原が新日で最強だと俺はずっと信じてた!!
 
このドラゴン・スクリュー→フライング・ボディ・アタックという技の流れが、どう「惜しい!」のか、その辺のデティールはプロレスファン以外にはちょっと伝わりにくいと思いますので、簡単に説明をさせていただきます。
そもそも、ドラゴン・スクリューという技は相手の脚を掴んで倒れ込みながら捻ることで相手の脚にダメージを与える技なんですね。
 
ちなみに、ドラゴン・スクリューの技名の由来は、この技の開発者である藤波辰爾の愛称が"ドラゴン"であったことに由来しています。
またまたちなみに、ドラゴンには幾つかのオリジナリティ溢れるムーブ(プロレスラーが見せるお決まりのアクションやポーズ、所作)や必殺技があり、その中でも特に個性的な輝きを放っているのが「コーナーポストに上ったのはいいけど、その後、何か技を繰り出すでもなく何もせずにそのまま降りる」という通称「ドラゴン・リングイン
 

 
校長がグレート小鹿…否、鹿との戦いで見せた動きとまんま一緒ですね。「日常」的なシュールな笑いを数十年前から、しかも新日本プロレスという過酷なバトルフィールドで表現していた男、藤波辰爾! やっぱ、ドラゴンは凄いや!!
 
閑話休題。そんな藤波が生み出したドラゴン・スクリューは、相手の脚を痛めつける技。ですから、技の流れとしてはドラゴン・スクリューの後には、相手の傷めた脚にダメージを与える技…具体的には足四の字固めのような足関節技を掛けるというのが一種のお約束、定番のパターンになっているのです。
 
プロレスファンは、よく「説得力」という言葉を使ってプロレスの試合やプロレスラーの技巧を評します。
 
プロレスは非常に"魅せる"要素の強い格闘技ですが、それ故に、観る者に強い説得力を持たせる技の掛け方や試合の流れが必要になってきます。ただ単に、無暗矢鱈と派手な技を連発すれば試合が盛り上がるというわけではなく、デタラメな攻め方で相手を攻撃してもダメ。そこには、キチンとした哲学やセオリー、流儀のようなものが存在しているのです。
 
ですから、ドラゴン・スクリューの後に、相手の胴にダメージを与えるフライング・ボディ・アタックを持ってくるというのは、ちょっとチグハグな描写ではあるんですね。プロレスファンの目線からすると、やっぱり「惜しい!」んです、凄く。
 
 

■ドラゴン・スクリューの深み - 新日vs.Uインター武藤敬司vs.高田延彦

何故、ここまで自分がドラゴン・スクリューからの足関節にこだわるかと言うと、多くのプロレスファンにとってドラゴン・スクリューというプロレス技が特別な輝きを持った技に他ならないからです。
 
この技が、プロレスにおけるスペシャルなニュアンスを持ち始めた、その決定的な試合が95年10月9日に東京ドームで行われた、新日本プロレスUWFインターナショナルという2つのプロレス団体の間で行われた対抗戦。そのメインイベントにおける"天才"武藤敬司と"平成の格闘王"高田延彦シングルマッチです。
 

 
プロレスファン以外には、この試合が如何に特別な試合かというのが、これまたちょっと伝わりにくいと思うのですが…かいつまんで説明をすると高田延彦率いるUWFインターナショナル…通称、Uインター…は、それまでのショーマンシップ溢れるプロレスを否定し、実戦的な格闘技色の強いスタイルを押し出した団体だったわけです。
現に、Uインター桜庭和志田村潔司山本喧一金原弘光といった、後にPRIDEのようなMMA総合格闘技の世界で活躍をするレスラーを数多く生み出しています。
 
そんなUインターが、日本のプロレス界の最大手、そして老舗団体である新日本プロレスとの対抗戦に打って出た。そのメインイベントにレイアウトをされたのが、当時ボクサーや空手家との異種格闘技戦で連戦連勝し"平成の格闘王"と呼ばれていたUインターのリーダー、高田延彦と、アメリカの大らかなショーマンシップ溢れるプロレスを愛し、格闘技を毛嫌いしていた新日本プロレスのエース、武藤敬司。余りにも、対照的な二人の試合は、そのラストも非常に意外性のあるドラマティックな結末を迎えます。
 
試合の終盤、武藤が高田にドラゴン・スクリューを放ち、倒れた高田にそのまま足四の字固めを仕掛けます。ドラゴン・スクリューで脚を傷めた高田は、更に足四の字で足関節を極められ無念のギブアップ
 
格闘技色の強いスタイルを推し進め、その象徴的存在であった高田が、派手で魅せる要素の強いドラゴン・スクリューと、プロレスの超古典的な技である足四の字固めの前に敗れた…実にプロレスらしいプロレスの前に屈したという衝撃的な結末は、当時のファンに凄まじいインパクトを与え、以降はドラゴン・スクリューの後は足四の字を掛けるという攻撃方法が定番化武藤敬司自身も、得意技の一つとして今でも使い続けています。
 
ちなみに、長州力のモノマネをする際の定番フレーズであるキレてないですよという名言(正確には、Uインター安生洋二戦の後に、インタビュースペースで「キレちゃいないよ」と発言)が生まれたのもこの10.9東京ドーム。
 

 
この武藤vs.高田が行われた新日本プロレスUインターの対抗戦は、プロレスのヒストリーにおいても空前絶後の大ヒットとなり、東京ドームの最大観客動員数を記録するなど、数多くの伝説を残した大会だったんですが、故にこの一戦を境にプロレス技の中でもドラゴン・スクリューは特別な輝きを持つ技になったわけです。
 
だから…だからこそ! みおには、ドラゴン・スクリューの後はキッチリと足四の字固めを掛けて欲しかったんですよ! プロレスファンである自分からすると!!
 
決して、「日常」という作品に対して文句を言いたいとか、罵りたいとかそういうわけじゃないんです、我々は殺し合いをやってるんじゃないんだ! 分かってください!!(by藤波辰爾
 
 

■まとめ

「日常」の感想文を書くつもりが、"小原道由"とか"ドラゴン・リングイン"とか"UWFインターナショナル"といったアニメ全然関係ないキーワードが頻出するエントリになった。
 
おっしゃ、プロレス! こんじゃもん…こんなもんじゃない!!(by佐々木健介
 
…正直、スマンかった…。(by佐々木健介
 

 
 
 
<関連エントリ> 
■「けいおん!」とプロレスに見るキャラクター性 - 放課後ティータイム=四天王プロレス説!