アニメソングとミクスチャーロックの関係をザックリと振り返ってみよう!
来ましたよ! いや〜来ちゃいましたね!!
Red Hot Chili Peppersと並ぶミクスチャーロックのパイオニア的なバンド、FISHBONEが昨年のFUJI ROCKに引き続き、今年も日本にやって来ます!!
■FISHBONE来日公演に在日ファンク、オイスカ出演(ナタリー)
いや、もうですね、自分大好きなバンドなんですよ! FISHBONE!! 高校生の頃、彼らのアルバム「Truth & Soul」を聴いて、「Freddie's Dead」(カーティス・メイフィールドのカヴァー)や「Ma And Pa」といった楽曲に本気でぶっ飛び、以来10年近く聴き続けています。自分の最愛のバンドの一つ。
このファンクもスカもパンクもメタルもロックもゴッチャにミックスされたサウンドこそがFISHBONEの真骨頂! 何度聴いても最高だと思います!!
FISHBONEの来日に加えて、同時期に開催されるSUMMER SONICでは、KORN、Red Hot Chili Peppers、ZEBRAHEAD…といった、所謂ミクスチャーロックやニューメタルと呼ばれるバンドがヘッドライナーとして大挙参加。もしかしたら、ミクスチャーロック再評価の波が、ここにきて一気にきているのかもですね。
かつて大ブームを巻き起こしたミクスチャーロック。当然、当時のアニメ音楽なんかにも、そういった音楽のエッセンスはミックスされていったわけで、FISHOBONE来日の報に胸を躍らせつつ、今回のエントリではミクスチャーとアニメ音楽について当時の熱狂をザックリ振り返ってみようかな、と。
そんなわけで、ミクスチャーとアニメ音楽、そのヒストリーをアレやコレやと!
■ミクスチャーロックとアニメソング - その原点とは?
そもそも、"ミクスチャーロック"という音楽のニュアンス自体が、かなり曖昧で何とも定義づけが難しいものだと思うのですが、ここでは「ロック、メタルを基本軸に、そこにファンクやヒップホップといった多様な音楽要素をクロスオーヴァーさせたサウンド」という、かなり狭義の意味での"ミクスチャー"、そして、そこにカテゴライズをされていたバンドや楽曲、スタイルを中心にして話を進めていきたいと思います。
で、まぁ、話の起点として、何だかなんだで"ミクスチャー"と"アニメ"というトピックを併せて考えた時に、このジャンルを日本の音楽シーンに定着させた功労者的なバンドのこの曲は外せないかな、と。
テレビアニメ「DTエイトロン」OPテーマ、Doragon Ashの「陽はまたのぼりくりかえす」!
Doragon Ashが「Grateful Days」「I LOVE HIP HOP」という二枚のシングルを同時発売し、その人気と音の方向性を決定づけた1999年。その一年前にリリースをされたのが、この「陽はまたのぼりくりかえす」。それまでのThe Smashing PumpkinsやNIRVANAといったグランジ、オルタナ系バンドからの影響を色濃く残したサウンドに、ヒップホップ的なリリックやラップ、サンプリングの要素を取り入れたこの曲は、日本における"ミクスチャーロック"の金字塔的な曲の一つだと思うんですよね。今、聴いてもこの曲が98年の時点で、しかもアニメソングの主題歌にタイアップとして使われていたという事実は非常に興味深く思います。
で、Dragon Ashがメジャーシーンに登場し、それまで活躍をしていたスチャダラパーやTokyo No.1 Soul Setといった日本のヒップホップグループとはまた異なった視点、文脈からヒップホップに注目が集まり始め、また当時のインディーズブームも手伝って、ヒップホップをラウドなバンドサウンドにミックスさせたミクスチャーもクローズアップされていった印象を受けます。
山嵐がタモさんのミュージック・ステーションに出演したり(確か、金網の中に入って歌ってませんでしたっけ?)、宇頭巻や麻波25、smorgasといったバンドが人気を集め、THE MAD CAPSULE MARKETSが完全にデジタルに移行し、傑作アルバム「OSC_DIS」をリリースしたのも、時代的にはまさにこの辺でしたよね。
■ミクスチャーが一大ブームとなった時代の中で…
ミクスチャーが大ブームになり、アニメ音楽のOPやED曲に使用されるタイアップナンバーにも、少しずつ変化が見え始めた2000年代初頭。個人的には、非常に印象深い2つのミクスチャーロックのナンバーが、この年のアニメの主題歌を彩ることになります。
その2曲とは、メディアミックス作品「R.O.D」のテレビアニメ版である「R.O.D -THE TV-」の為に、ミクスチャーバンドYKZ(旧名:ヤクザキック)が書き下ろしたインストナンバー「R.O.D」と…。
<マキシマムザホルモン / ROLLING1000tOON>
柴田ヨクサル先生の格闘漫画をアニメ化した「エアマスター」ED曲のマキシマムザホルモンの「ROLLING1000tOON」!
YKZの「R.O.D」に関しては、当時、SUMMER SONICやFUJI ROCKに出演もした人気バンドで、海外のヒップホップユニットBEATNUTSとのコラボレーション楽曲をクリエイトしたこともあるYKZが、可愛い女の娘が主役のアニメの曲を作るというのが本当に衝撃的でした。
「R.O.D」の曲は、ラップのないインストナンバーですが、このグル―ヴィーなベースとホーンの使い方は、まさにYKZらしいミクスチャーサウンド。
余談ですが、自分は偶然にもYKZが出演をした2002年のFUJI ROCKでこのバンドのステージを観ているんですが、生のホーンセクションを使ったゴージャスなステージがとにかくカッコ良かった…! また、同日の同じステージには、メジャーデビュー直後のRhymesterが出演していたりして、「ロックとヒップホップの融合」みたいなことが強く意識をされていた時代であったことが思い出されます。
そして、今や押しも押されぬ大人気バンドとなったマキシマムザホルモン…! この超高速のスラップベースとデスヴォイス、そして何よりもハイテンションな歌詞…と、とにかく全てが衝撃的だったマキシマムザホルモン。
当時は、まだまだその超個性的過ぎるサウンドがネタとして受け止められ、「電波歌」なんて呼ばれていた時代もありましたが(この曲が流行った当時、友人にいくつかの「ROLLING1000tOON」のMAD映像を見せられた記憶があります)、この後も「アカギ」「DEATH NOTE」といったマッドハウス製作の日テレアニメの主題歌を手掛け、THE MAD CAPSULE MARKETSのメンバーであったKYONOが結成したWAGDUG FUTURISTIC UNITYの「SYSTEMATIC PEOPLE」にマキシマムザ亮君がフィーチャーされ、「黒塚」のOPに起用されたり…とミクスチャーロックとアニメ作品とを結びつける非常に重用なバンドとなりました。
他にも、FLOWやORANGE RANGEといったミクスチャーロックから多大な影響を受けた人気バンドも、数多くのアニメの主題歌に楽曲が起用され、2000年代のアニメソングを作り上げていった印象を受けます。2000年代のアニメソングにおいて、ミクスチャーって結構重要なキーワードだと思うんですよね。
■ミクスチャーロックの声優ソングへの影響 - 新谷良子と神前暁
そんなミクスチャーロックには、人気バンドのアニメ作品へのタイアップ…という形だけでなく、アニメ作曲者や声優ソングにも多大な影響を与えることになります。
中でも一際、その影響を受けたのが新谷良子さんの一連の楽曲の数々でしょうね。"バンビ・ポップ"という新しいジャンルを標榜し、その多幸感溢れるハッピーな楽曲で声優ソング、アニメソングの世界に新しい風を吹き込んだ新谷さんの一連の楽曲。
<新谷良子 / Candy Pop Sweetheart>
メロコアやエモコアの要素を取り入れたバンドサウンドに、ラップを多用した歌唱法をミックスさせたその特異なサウンド…"バンビポップ"は、新谷さんの楽曲を支える作曲家兼バンドメンバーであるR・O・Nさんの手によるところが大きいのですが、中でも両A面シングルとしてリリースされた「恋の構造/トリックスター」における「トリックスター」の存在感は圧巻。当時、"ロリポップ・ミクスチャー"と呼ばれたこの曲は、ラウドでヘヴィな低音に、切り刻むような重厚なギターリフ、そしてそこに絡む新谷さんのラップ…と、ミクスチャーの中でも、とりわけメタル色の強い…ニューメタルとかラップメタルと呼ばれたような…楽曲を声優ソングに昇華させた、アニメミュージックにおけるミクスチャーの一つの到達点だと思います。
そして、新谷さんのバンビポップと同じく、ミクスチャーロックの影響下にあるナンバーといえば、やっぱりこの曲ですね。
<泉こなた、柊かがみ、柊つかさ、高良みゆき / もってけ!セーラーふく>
「らき☆すた」OP曲、神前暁さんの作曲による「もってけ!セーラーふく」!
跳ねるようなベースのファンキーのリズムに超早口のヴォーカル…というサウンドスタイルは、まんまミクスチャーロックをアニメソングに落とし込んだグレートなナンバー。神前暁さんって、この他にも「WORKING!!」でスカパンク調のナンバーを作っていたりだとか、何気に90年代後半〜2000年代頭くらいのインディーズブームの影響を、その作る楽曲に抜群のセンスで反映させている作曲家さんだと思うんですよね。
マキシマムザホルモンのようなバンドが人気となる時代に、この方がアニメファンから熱狂的な支持を受けている理由も何となく合点がいきます。
こうやって見てみると、人気バンドのタイアップにしろ、アニメ界からのロックミュージックへのアプローチにしろ、ミクスチャーロックとアニメソングって抜群に相性が良い印象を受けますね。何といっても、自分はこの辺のバンド、サウンドは直撃世代なもので、そのエッセンスを感じさせてくれる音楽がアニメの中で今も流れ続けている、そのことを大変に嬉しく思います!
■まとめ
Dragon Ashの「DTエイトロン」から始まったミクスチャーとアニメソングの歴史を、バ〜ッと駆け足でまとめてみました。駆け足過ぎて、アレやコレやのマスターピースの諸々が色々と抜け落ちている気がしますが、アレ忘れてるよ! なんてご指摘がありましたら、コメント欄なんかでご注意いただけると嬉しいです!
いや〜でも、それにしたって、やっぱりミクスチャーロックはいいですね! FISHBONEの来日、ホントに楽しみです♪
<関連エントリ>
■スカパンクと「仮面ライダーオーズ/OOO」と「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」
<関連URL>
■新谷良子入門のために勧めるアルバムまたはシングル(karimikarimi)