OPPアニメ(お腹がピーピーなアニメ)を考える - 腹痛がもたらすキャラクターとドラマ性

 

 
11月も半ばを過ぎ、いよいよ寒さが本格的になってきましたね。今年は厳冬になるとのことで、寒さが苦手な筆者としては辛いものがありますが、外気の張りつめた冷たさに身を震わせつつ、冬特有のシンと澄んだ空気の緊張感と静寂を楽しむ…なんてのも乙なものではないでしょうか? それに、寒ければ寒い程、これからの季節はお鍋や熱燗が嬉しくなってきますしね。冬の醍醐味と情緒を存分に楽しんでいこうと思います!
 
さて、そんなAMラジオちっくな、ちょっとお洒落で落ち着いた時候の挨拶が済んだところで、今回のエントリのテーマは「下痢」です(台無し)。しかも、アニメに出てくる腹痛の描写。「お腹がピーピーなアニメ」略して「OPPアニメ」についてアレやコレやと考えてみたいと思うわけです(正露丸糖衣A片手に)。
 
「何で、そんな汚いもんについて考えるのか?」と皆さん、当然の疑問をお持ちでしょうが、何でかって聞かれたら、そりゃ自分もちょっと尋常じゃないくらいに胃腸が弱い…OPPなブロガーだからですよ! 先ほど、冬の楽しみ方がどーこーとか、小賢しい前置きを書いてましたが、冬なんて冷えちゃって何にも身体に悪いことしてないのにお腹壊すよ! 鍋とか熱燗とかお腹に入れるキャパシティーなんて、OPPな人間には存在しないのです。トイレは冷えるし、冬はマジで地獄(ストッパを片手に、これ以上ないほどの憂鬱な顔で)。
 
そんなわけで、自分みたいに胃腸が弱い人間だと、アニメを観てる時も、どーしてもそういった描写…OPPシーン(お腹がピーピーになっているシークエンス)があるアニメに注視をして観てしまうんですね。で、そういった部分に注目してみてみると、意外なアニメに腹痛の描写が描かれていたり、腹痛を上手いことドラマ作りに組み込んでいたりと、結構おもしろいものが見えてくるんですよ!
 
 

■個人的に最も衝撃を受けたOPPアニメ「ひだまりスケッチ」と「フリクリ

OPP故に、生きるのが若干面倒(マジで一日に三度"食べなきゃいけない"食事が憂鬱なレベル)な人間が、今まで観てきたOPPアニメの中で特に強い衝撃を受けた作品がひだまりスケッチ一期の第4話「歌うショートケーキ」というエピソードです。
 

 
この話の中で、主人公の一人である宮子…通称、宮ちゃんが牛乳を一気飲みしたせいで授業中にOPPになってしまい、トイレを行くために一時帰宅する、というかなりインパクト大なシークエンスがあるんですね。このシーンは、まんま原作準拠の内容になっているんですが、アニメ放映当時、原作を未読だった私はかなりの衝撃を受け、ぶっ飛ばされました。
 
だって、こういう可愛らしい絵で描かれたアニメで、登場人物の美少女キャラクターがお腹を壊してトイレに行くなんて、そんなシーンが出てくるなんて思いもしませんでしたから。
 
ちょっと汚い話で申し訳ないんですが、ここは大事なポイントなんでシッカリと書かせていただきたいんですけど、コレがオシッコだったら、そこまでの衝撃って無かったと思うんですよ。というか、小さい方だったら、割と「ひだまりスケッチ」のような美少女アニメ萌えアニメにもその描写が出てきます。「けいおん!」とかも、出てくるキャラクターがオシッコに行くシーンがありましたよね。そこには、多分、"キャラクター"というものに排泄という生理的な行為を付加することによって、身体性というか、肉体的なリアリティーが与えられる、そういったニュアンスを与えようとする作り手の意思があるんじゃないかと思うんです。大袈裟に言ったら。また、フェチズム、ライトなエロティシズムという側面も多分にあるでしょう。
 
だけど、これが大きい方となると、そのハードルは一気に高くなります。だから、アニメを観ていても、なかなかトイレに大きい方をしに行く美少女キャラクターって出てくることがないし、例えばパンティ&ストッキングwithガーターベルトの第一話みたいに、"排泄"っていう行為をモロを描くアニメがポンッと出てきた時に強烈な印象を持ち得たんじゃないかと思うんです。
 
話は戻って、「ひだまりスケッチ」の宮ちゃんのOPPですが、ここではあくまでギャグ、笑いの描写として、腹痛が描かれています。だけど、それっていうのは先ほど書いたようなキャラクターと身体性の境界線、あるいはフィクションとリアリティーのバランスというものを考えた時に、そこには、やっぱりある種のラジカルさというか、そういうインパクトがある。美少女がお腹を下しちゃう、OPPになっちゃうっていうのは、これは"キャラクター"と"身体性"のせめぎ合いとして凄くおもしろいと思うんです。
 
そういう意味では、この「ひだまりスケッチ」以前、学生の時分にレンタルビデオで観たフリクリで描かれたOPPシーンも、自分にとって同等の衝撃がありました。
 

 
可愛い女の娘が賞味期限の切れた古いジュースを飲んでOPPになっちゃう。シナリオといい、The Pillowsによる挿入歌、主題歌といい、"アニメ声優"ではなく劇団員を主要キャラクターのcv.に起用したセンスといい、当時、他のアニメとはどこか"違った"雰囲気のあった「フリクリですが、その特異なオーラっていうのはこうしたシークエンス一つにも強く表れていると思うんですね。他のアニメがやらないことを、敢えてやる意気込み、センスに溢れているというか。可愛い女の娘に腹痛を起こさせるって、それだけでも作り手の常識に囚われない、アナーキーな意識みたいなものが見えてくる。
 
アニメのキャラクターが…しかも可愛い女の娘が劇中にOPPになっちゃうって、それだけでもやっぱりなかなかのインパクトがありますよね。それが精神的なものが原因であれ、何かに中ったとか、体調を崩したとかが原因であれ、OPPは辛くて最悪なものですが、その最悪な痛みがアニメで描かれるという意味。それを見ていくと、キャラクターや作り手さんの意識に対して、また色々なものが見えてくると思うんです。
 
 

■OPPを巧みに使ったドラマ作り

さて、「キャラクターとOPP」について語ったところで、次は腹痛を巧くシナリオに取り入れたアニメ作品、ドラマ作りにおけるOPPを考えてみたいと思います。
先ずは、OPPがその作劇に存分に活かした作品の好例として、まよチキ!を挙げたいと思います。
 

 
このアニメの第一話では、主人公である坂町近次郎が学校でOPPになってしまい、トイレに行く…というシーンがあるのですが、その個室で主人公はヒロインの近衛スバルと遭遇をすることになります。で、ここからが重要なんですが、スバルは普段は男装をして、男として生活をしているキャラクターなんですね。ところが、個室で用を足しているところに、金次郎が間違って入ってきてしまったものだから、女性用の下着を履いているところを見られてしまい秘密がバレてしまう。そこから、秘密を共有する金次郎とスバル、二人のドラマが始まる…と、物語の導入部として、こういう作りになっているんです。
 
つまり、金次郎がスバルの秘密を知るというストーリーのスタートラインを描くのに、トイレの個室に入り、そこにいたヒロインと遭遇をするというシチュエーションが必要だったわけで、その為には主人公がOPPになる必要があったと。ヒロインが男装をしているという特殊な設定だった為に、まよチキ!」ではOPPがドラマ作りの大前提になっているわけです。
 
先ほど、ご紹介した「ひだまりスケッチ」や「フリクリ」では、可愛い女の娘が突然お腹を下してしまうという思い切りの良さを描いてはいますが、あくまでOPPはシモネタの一種としてギャグ、笑いを描く為に用いられています。それに比べると、この「まよチキ!」ではOPPにもっと重要な意味とドラマ性が託されていて、腹痛をきっかけとして物語がスタートをする…という空前絶後のOPPアニメになっています。
 
考えてみれば、OPPになるとトイレも個室を使用するわけで、ある程度限られた空間に移動せざるをえなくなります。ですから、出会いの場として、OPPを用いるというのは実は結構有効なのかもしれません。「まよチキ!」も、OPPが始点となって、金次郎とスバルの真の意味での臭い仲(←最悪)が始まるわけですし…。
 
というわけで、もう一本OPPにドラマ性を託したアニメを紹介したいと思います。
 

 
今日の5の2の第八話「ハカリ」というエピソードでは、主人公のリョータが給食の食べ過ぎでOPPになってしまい、保険室に行くというシークエンスがあります。まぁ、「給食を食べ過ぎて、腹痛を起こす」というシチュエーションの時点で、もう小学生時代のノスタルジー満載なんですが、大事なのはここから。体調を崩して保健室で寝ていたリョータの横で、女の娘達が服を脱いで身体測定を始めてしまい出るに出られなくなる…というのが、このエピソードの大まかな筋書きになっているんですね。
 
主人公がOPPによって保険室に行き、そこでお色気チックなハプニングに巻き込まれるわけですが、ここでもOPPが、主人公のリョータを学校の中でもどこな特別な雰囲気のする空間である保健室にセパレートするきっかけとして非常に有効に機能をしている。やっぱり、生理現象の中でもOPPによる腹痛ってかなり特殊で、だからこそ「まよチキ!」でも「今日の5の2」でも、OPPが特別なシチュエーションの導入部に成りえている
 
痛いし、辛いし、焦るしで、最悪なOPPではありますが、こういうドラマなりシチュエーションなりを作る際に、実はおもしろい効果を挙げていたりもするんですよね。
 
 

■まとめ

そんなこんなで、アニメにおけるOPPと、そこから考えられるアレやコレやを簡潔にではありますが、自分なりにまとめてみました。まぁ、何度も書いているように、辛いOPPではありますが、時にキャラクターやドラマ作りに対して、こんな効果を与えたりもするんだよ、なんて色々と考えてみるとおもしろいかもしれません。
ちなみに、ここで挙げたアニメ作品のOPPは、そのほとんどが原作準拠のOPPなんですが、もし次回がありましたら、東京マグニチュード8.0」における災害時のOPPとか、「機動戦士Vガンダム」の最新兵器を使ったOPPとか、アニメオリジナルのOPPシーンを取り上げてみようかと思います。…苦情とかがこなければ…ですが…(ビオフェルミン止瀉薬片手に)。