「ひだまりスケッチ」は上手いこと暴力表現を忌避してると思うんだ。
ふぇいばりっとでいずさん経由で知った丁寧に作られた(?)『ひだまりスケッチ×365』OPの画面サイズによる違いというエントリーがおもしろすぎます。
我が家は未だにアナログ放送でテレビを見ているので、「へ〜こういうところにも作り手は気を使ってるんだ〜」と素直に感心。
id:noir_kさんのひだまり関連のエントリー、『ひだまりスケッチ×365』オープニング映像元ネタ大集合+おまけもあるよも、深くておもしろいです。
自分みたいに、ただただ流れてくる映像やら情報やらを、「ほへ〜」みたいな感じで受信しているだけの人間からすると、こういうディープな考察ができる才能を持ったブログの書き手さんには、本当に頭が下がります。
で、今回は「ひだまりスケッチ」の話なんですけど、
最近録画していた「ひだまりスケッチ×365」を見返してみて、フと気付いたんですけど、「ホンワカ」した劇中の空気に反して、何気に宮子って殴られることが多いんですよね。
「ひだまりスケッチ」は基本的にギャグ漫画で、宮子は劇中ではトリックスター的な役どころ、つまりボケ役なので、ツッコミ役の沙英さんやヒロさんに「殴られる」っていうのは、漫画として全然アリなんですけど、
(宮子がヒロさんの体重をいじったり、沙英さんに対して失礼な態度をとって、つっこまれる(=殴られる)というのが「ひだまりスケッチ」の笑いのパターン)
「ひだまりスケッチ」っていう作品の構造上、「殴る」シーンって絶対描けないんですよね。
どんなかたちであれヴァイオレンスは、ひだまりの世界観と絶対相容れないものなんで。
漫画だとその辺を上手く回避していて、四コマのオチの部分や、前のネタの流れを受けて次のネタの頭で、宮子にタンコブが出来てたりする。
読んでる側は、「あ〜(直接、殴られる描写はないけど)沙英さん(ヒロさん)に殴られたんだな〜」っていうのがわかるように出来てる。
でも、アニメだと漫画と違って、明確な時間の流れがあるので、こういうショートサーキットはなかなか難しい。
で、どうしてるのかというと、やっぱりアニメ版でも上手に「殴る描写」っていうのは忌避しているんですよね。
例として、ひだまりスケッチ×365、第10話「6月8日 まーるニンジン」の回で宮子の「ボケ」に対して、沙英さんが「ツッコむ」一連の流れなんですけど、
沙英さんに対して、いたずらを思いついた宮子。キュート過ぎる(>_<)!
宮子のいたずらに怒る沙英さん。
カットが変わってぬいぐるみの静止画に。「ゴキンッ!」という、かなり痛そうなSEが入る。
カットが変わると、宮子の頭にはタンコブが…。
イメージカットや早いカットつなぎを多用することで、「殴る描写」は劇中で描かれないんですね。
しかも、シャフトによる劇中の独特な演出のせいで、こういう突拍子のないシーンの流れも観る側に不自然さを感じさせないようになっている。
宮子は殴られるけど、決してヴァイオレンスは感じさせないようになっているんです。
新房監督&シャフトの仕事で、これとは対象的なのが「ぱにぽにだっしゅ」で、
あのアニメだと「めそうさ」ってキャラクターが、原作以上に、もうムチャクチャに虐められる。
「ひだまり」でも、そういう描写ってのをやっちゃえば原作を切り離した「笑い」ってのは作れると思うんですよ。
でも、それは決してやらない。原作で描かれなかったヴァイオレンスは、徹底的に排除する。
「ひだまりスケッチ」でも、キャラクターの肢体を必要以上に強調したりだとか、シャフト独特の「やり過ぎ」感はあるんだけど、原作の雰囲気を決して壊していないのは、この辺でキッチリと線引きをしているからかなぁ〜と思います。