アニメの"聖地巡礼"の魅力を知るには…「範馬刃牙」のビスケット・オリバのエピソードを読めばいい!

 

<板垣恵介範馬刃牙」第5巻 (秋田書店) P.151>
 
アニメの舞台となった場所を訪れる"聖地巡礼"。最近だと、ガールズ&パンツァーのメインビジュアルとなった茨城県大洗町がアニメの人気も手伝って大フィーバー。その盛況っぷりが一般のニュース番組でもピックアップをされたりと、「アニメと舞台」というトピックは、様々なメディアで定期的に話題になっている印象を受けます。
 
さて、そんな聖地巡礼ではありますが、中にはその魅力や楽しみ方がイマイチ分からない、熱狂しづらいアニメファンの方々もいらっしゃるかと思います。アニメの背景、参考資料となったスポットを訪れることによって、何故そこまで意識を没入できるのか、と。そこで、そんな"聖地巡礼"にちょっと距離感を感じる方に対して、私の持論を書いてみたいと思います。そんなこんなで、今回のエントリでは聖地巡礼に対してアレやコレやと!
 
 

■"聖地巡礼"に距離を感じている人に読んで欲しい「範馬刃牙」!

"聖地巡礼"についての論説は、例えばWeb上なんかをちょっと覗いてみるだけでも沢山ありますが、個人的には何よりもその魅力を雄弁に…かつ的確に言い表しているのが、この文献だと思います。
 

<板垣恵介範馬刃牙」第5巻>
 
板垣恵介先生の漫画「範馬刃牙」。
 
その第5巻です。…アニメの聖地巡礼について語る論で板垣漫画…しかも、「刃牙」ッッ? …と突飛に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、いや、実はこの「範馬刃牙」の第5巻には"場所""思い入れ"というアニメファンが"聖地"を生み出す二大要素について、非常に分かりやすく書いてあるんですよ!
 
「超絶!!監獄バトル編」の序盤のエピソードが描かれたこの巻。本章の中心人物であるビスケット・オリバ純・ゲバルが対決に至るまでの流れがメインのエピソードとなっている(そして、主人公の刃牙は二人から無視され続ける)のですが、その中に登場をするオリバとゲバルのやり取り。
 
 

■ビスケット・オリバ…その愛ッッ!!

ゲバルに「君は……誰がため戦う……」に問われたオリバ。オリバは、そんなゲバルの問い掛けに対し「カワイイ彼女のためさ(はあと)」と即答をします。続けて、ポケットからハンカチを取り出し、その匂いを嗅ぐオリバ。その様子を観たゲバルは、再び問い掛けます。「フ……彼女からのプレゼントか」と。そこでの、オリバの答え。
 


 
「違うね…」「彼女が昔 住んでいた街で買ったものさ」
 
オリバが大事にしていたハンカチは、彼女から直接的に貰ったものではなく、彼女が住んでいた街で買ったもの。何という、間接的な接触。常人の思考をアッサリと凌駕するアンサーをゲバルに返すオリバ。彼は、こう力説をします。
 


 
「彼女が住んでた街(エリア)に このハンカチーフがあったというだけで…」
 


 
「ここに彼女を感じ取ることができる」
 
例え、愛しの女性が直接触れたものでなくとも、彼女と同じ場所に存在をしていた…たったそれだけで、ハンカチに彼女の存在を感じることができる、と。何が、そこまでこの男を突き動かすのか? それは、オリバの彼女に対する愛であり、一途で強い想いなのです。例え、「ワケがワカんねぇ…」と言われようと、一切の揺るぎなく突き進む、常識にすら決して囚われない"アンチェイン"ビスケット・オリバ、その愛。
 
 

■"聖地巡礼"によって感じ取るキャラクターの存在

このオリバのエピソードは、そのまま聖地に対するアニメファンの思い入れにも変換可能かと思います。アニメの背景に登場をした場所…その場に立つだけで、ファンは大好きなアニメに登場をしたキャラクターたちの存在を感じ取ることができるのです。だからこそ、作品を…キャラクターを愛するファンは物語の舞台に集います。そして、そこに彼、彼女たちの姿を見出す。
 
そう、それはあたかも…
 


 
リバプールで買物をする観光客がビートルズを感じ取るように」
 
 

■まとめ

とある"場所"に愛を持って足を踏み入れることによって、普通の人にとっては何気ない景色、取るに足らない景色が、その人にとっては特別な存在に映る。「範馬刃牙」の中で、ビスケット・オリバが愛しの女性が住んでいた街を特別視し、そこで買ったハンカチに強い思い入れを持つ、そして、そこから彼女の存在を感じ取る…。アニメファンが聖地巡礼を行う際に、感じる心の動きをこのシークエンスは何よりも明快に描いているように思います。
 
■何故、人は”聖地巡礼”に惹かれるのかを富士急ハイランドで考えてみた
 
自分自身、大好きなアニメ作品であるにゃんこい!」聖地巡礼を行った時に、この時のオリバに勝るとも劣らない猛烈な多幸感を感じましたからね。アニメに出てきた…"あの娘"がいた風景がそこにあるだけで、彼女がそこにいる気がして…彼女の存在を感じ取ることができたという。…住吉加奈子さんっていうんですけどね、その娘。カッッワイイんだこれがッッッ!
 
 
 
<関連エントリ>
■「にゃんこい!」の舞台は一体どこなのか? ラブコメの舞台装置としてのロケーション