テレビアニメで、お笑いのパロディや引用を行うことについてのアレコレ

 

 
一時期の熱狂的な勢いは落ち着いた(?)かもしれませんが、相変わらずテレビではお笑い番組が人気です。
次々に新しい芸人さんが登場しては新ネタやギャグがブームになるわけですが、アニメなんかでもその辺りの流行を取り入れてか、実在のお笑い芸人さんをパロディにしたり、実際のギャグを引用した作品を目にする機会が増えたように感じます。
そこで、今回はちょっとアニメとお笑いの関係について、自分なりにアレやコレやと考えてみたいと思うのです。
 
 

■お笑いをアニメで引用した際の「時差」

例えば、アニメ版のらき☆すたは作品内で小島よしおヒロシといった実在のお笑い芸人さんのギャグを積極的にパロディにしていましたし、最近では私の大好きなにゃんこい!」も劇中でオードリーフォーリンラブ大西ライオンなんかのお笑いタレントの持ちギャグを劇中で度々使用していました。
 
そういう遊び心やファンサービスは見ていておもしろいですし、お笑いもアニメも両方大好きな自分は思わず笑ってしまうのですが、ここで問題なのが今のお笑い界のスピードの速さ、ギャグの賞味期限の短さだと思うのです。
今のお笑い番組の流行を作り出す速度は凄まじく速く、お笑い芸人さんやそのネタやギャグが「旬」でいられる時間はかなり短くなっています。
テレビの中では次々と新しいタレントさんやギャグの移り変わり・変遷が行われているわけですが、日々流れていくバラエティ番組に比べるとアニメというのはDVDやBDなんかの「映像ソフト」として記録が残る表現分野です。
 
そうすると、後に映像として見返した際に、どうしてもそこに当時の流行との間に「時差」が生じてしまいます。
リアルタイムの放送時にはブームの真っ只中にあったタレントさんやギャグを用いた描写が、数ヵ月後、数年後に見返した時、酷い時には映像ソフトとして発売された時には、既に流行遅れとなっていたという事態もありえるわけです。
 
 

■「はなまる幼稚園」のちょっとユニークなお笑いの取り入れ方

そんな中で、私が見ていておもしろいと思うのが、はなまる幼稚園もお笑いに対する距離感と接し方です。
 

 
例えば、よん話の「はなまるなデート」に登場をした、ワイシャツにスラックス、サングラスにピコピコハンマーを持った柊のコスプレ姿ですが、お笑いやバラエティ番組が好きな方なら柊が着ている衣装や「夢のような恋愛をプロデュース!」という台詞でピンとくるように、これはかつて一世を風靡したテレ朝の名物バラエティ内村プロデュース」における内村光良さんのパロディになっています。
 

 
また、さん話の「はなまるな三角関係」では、小梅と柊の間で、
 

 


小梅「ひいちゃん、かっこいい〜!」
柊「セイセイ」

 
という台詞のやり取りがありましたが、これはお笑いコンビ、オリエンタルラジオの持ちネタである「武勇伝」での藤森慎吾のキメ台詞「あっちゃん、カッコいい〜!」と、レイザーラモンHGの持ちギャグ「セイセイセイ!」が元ネタでしょう。
 

 
テレビのバラエティ番組やお笑い芸人さんのギャグのパロディを、アニメで見かけることは間々あるわけですが、ここでちょっとチャーミングだと思うのが、「はなまる幼稚園」が元ネタにしているギャグやバラエティって決して新しかったり、旬と言えるものではないんですよね。
内村プロデュース」はファンに惜しまれつつ2005年に放送を終了していますし*1オリエンタルラジオは大ヒットした「武勇伝」ネタを封印し舞台では主に漫才やコントを中心にして活動。また、HGの「セイセイセイ!」に関してもなかなかテレビで目にする機会は少なくなっています。
 
こういうお笑いの引用をアニメでやる場合って、本来ならばその時に流行っている番組や旬なギャグを取り入れるのが定石だと思うのです。
でも、そこを敢えてちょっとズラしてやってみる。本放送そのものは終了しているけれどもDVD化等でファンの間で未だに人気が高くある程度の普遍性のあるバラエティ番組や、流行とは距離を置いたやや懐かしめのギャグを使ってみる。
こうしたちょっとした趣向は、そのまま作品内でのパロディの方向性を印象付けると共に、ブームとは少しばかり距離を置くことで、後々に生まれる当時の流行との時差やギャップを軽減する工夫としても機能しているように思います。
 
まぁ、もっと皮膚感覚で、単純にスタッフさんが好きだったギャグやバラエティー番組を作品内に取り入れているだけなのかもしれませんが、そのセレクトが自分のツボをグイグイ押してくることと、「はなまる幼稚園」というポップで楽しい作品のイメージも相まって自分の中で非常に興味を持って見ています。
 
 

■まとめ

作品内に当時の風俗や世相を盛り込むと、どうしてもこうした時差やギャップは生まれてしまうものですが、「お笑い」の場合は特にそのスピードが早く、また移り変わりが激しいものだと感じます。
らき☆すた」のつかさの台詞のように、最早完全に元のギャグを離れてMAD動画や同人音楽の素材になることで後々まで残るという特殊で幸福な例もありますが、多くの場合こうしたギャグやお笑いの要素は元ネタの流行り廃りに大きく影響を受け、その効力を失ってしまうものだと思うのです。
 
そこで生じるギャップや時差をどう埋めるか?
例えば、旬の時事ネタや芸能ネタを盛り込みつつも「ドリフターズ」のように完全に普遍性を得ているネタを多用してくる「銀魂」や、前述した「はなまる幼稚園」のようなアニメ作品の「お笑い」との距離感はユニークだと思います。
この辺りは、作品の受け手・視聴者の態度なんかも含めて考えると、また色々とおもしろいものが見えてくると思うんですよね。
 
 
 
<関連エントリ>
■アニメ作品にゲスト声優として出演するタレントさんに対して思うこと
 

*1:その後、幾度か特番として復活。